金型メーカーの競争力強化に向けた積極姿勢は衰えることがない。今、新コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、インターモールドをはじめ様々な展示会・イベントが中止されているが、一方で、自動車の電動化や5G、IoT、働き方改革…
がんばれ!日本の金型産業特集
原田金型 原田 育寛 社長
勝ち抜くため型種を変化
鏡面仕上げに独自のノウハウ
ガラス、ダイカスト、樹脂金型へと型種の幅を広げてきた原田金型。「変わった会社なんですよ」と原田育寛社長が話すように、自らを思いのままに変化させ、時代の流れに対応してきた。
1980年代、当時主力だった自動車用ヘッドライトガラスレンズ金型が、ヘッドライトの樹脂化により激減。生き残るためには、別の型種を製造するしかなかった。そこで、ダイカスト、樹脂金型へと移行できたのは、「新しいものが好きで、とりあえず何でもやってみる」という原田社長の姿勢と創業から培った高い技術力があったからだ。
元々、ガラス金型の彫刻職人だった原田隆晴会長が創業した原田金型。切削工具は材料や形状に合わせて自在に加工して使うのが当たり前。焼入れ鋼から軟鋼、逆テーパ形状など様々な形状、材料の加工に対応するのは、そう難しいことではなかった。
また、レンズ金型で培った光に関する技術は群を抜くものがあった。「レンズの凹凸模様の平面デザインを、実際の曲面形状に加工できるのは、当社を含めて2社だけだった」というほど。光学関連の金型に不可欠な鏡面仕上げにも、加工パスの出し方、磨き方など独自のノウハウを持つ。
現在は、こうした技術を活かして、1/1000台の寸法精度が求められる超微細な光学機器の金型や、紙折り機用の金型なども手掛ける。原田社長は、「固定観念に囚われず柔軟に考えることで、できる仕事も広がっていく」と話す。
企業連携で組立や成形も
製造業の多くが抱える後継者問題。原田社長は、「そうした問題を持つ人や企業が1カ所に集まって、仕事や設備、人を共有すれば、事業継続はもちろん、人材育成にも繋がっていくと考えている」と話す。2015年からは、廃業するという他社から動力プレス点検事業を従業員ごと引き継ぎ、法令点検の事業を開始した。「今まで付き合いのなかった企業にも認知してもらえ、金型の仕事にも広がっている」と営業の効果もあるという。
将来について原田社長は、「中小零細企業が単独で生き残っていくには難しい時代になる」と予測する。現在、国内の組立や成形、表面処理メーカーなどの協力会社とグループを組んでネットワークを構築している。「違う業種が集まれば、新しい仕事が生まれるはず」とそれぞれの企業が窓口となり、金型から成形、組立まで一貫生産できる体制を整えている。
また原田金型では、韓国に金型の協力工場を持つ。日本で受注して型設計までを手掛け、韓国工場で金型を加工し、量産まで取りまとめて最終製品として納入するなど「コーディネーター」のような役割も担う。ほかにも、ダイカストと樹脂両方ができる特長を活かし、新型の製造だけでなく、修理や改造、メンテナンスなど金型全般のサポートも請け負っている。
「会社内に1つの工業団地を作るのも面白いかもしれない」と様々な形の連携を通して自社だけでなく、業界全体での成長を目指す。
会社メモ
代表者=原田 隆晴 会長
創業=1969年
所在地=神奈川県横浜市旭区川井本町6-18
資本金=1,000万円
TEL=045-935-8935
FAX=045-954-1532
URL=www.harada-kanagata.co.jp
従業員数=10人
事業内容=ガラス金型・ダイカスト金型・樹脂金型の設計製造、各種量産成形、鋳造、組立業務、各種検査治具等製作、海外サポート
主な設備=立型マシニングセンタ(OKK)3台、
立型NCフライス(OKK)1台、汎用倣い施盤(OKK)6尺1台、汎用施盤6尺1台、形彫り放電加工機(ソディック)1台、ワイヤ放電加工機(ソディック)1台、彫刻機2台、工具研磨盤2台、投影機(ミツトヨ)1台、形状測定機(ミツトヨ)1台、3次元CAD/CAM(NTTデータエンジニアリングシステムズ)5台など。
金型新聞 平成29年(2017年)1月10日号
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