DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 金型の長寿命化、自動化へ 冷間鍛造金型を手掛けるニ…
【鍛造金型特集】
日本鍛造協会 八木議廣会長に聞く
熱間鍛造の動向
鍛造は大きく熱間と冷間に分かれるが、重量ベースでは圧倒的に熱間が多い。成形品が比較的大きいことも理由の一つだ。一方で、金型はコストや納期の問題から圧倒的に内製率が高いという。自らも熱間鍛造部品を手掛ける、日本鍛造協会の八木議廣会長(八木工業社長)に熱間部品や熱間鍛造型の動向などを聞いた。
ー熱間部品では金型の調達はどうなっているのか。「当社は4割が内製で6割が外注だが、業界全体では9割が内製ではないか。基本内製という考えが主流だ」。
ーその理由は。
「熱間鍛造は素材をつぶす、成形、バリを取るなど複数の工程に分かれるが、成形工程の金型は、1回でダメになることもあり、納期面で外注では間に合わない。また、成形条件の設定が複雑で、金型にノウハウが詰め込まれており、競争力の面からも外には出せない。消耗品として金型を費用計上できるなど、コストメリットもある」。
ー日本の鍛造部品メーカーの競争力はどうか。
「納期やコスト、精度いずれでも競争力はあると思う。海外では自動車メーカーが鍛造を内製していないので、鍛造部品メーカーの力も強い。このため、価格は高い傾向にあり、特にコスト競争力は高い。そうした海外の需要を取り込むことが課題だ」。
ーそのほか課題は。
「熱や潤滑などのパラメータが多く、1200℃に熱した材料でも、成形条件は打つたびに代わる。そうした状況を安定させ、再現性を高めることも課題だろう。材料や電気代が高くなっているなか、安くつくることも重要になっている。二つの部品を一つにするなど一体成形したいという声は増えているほか、最近では一貫加工の要望も増えている」。
ー一貫加工とは。
「成形だけでなく、穴あけ、熱処理なども後工程も行うことだ。ユーザーも発注しやすく、管理しやすいからだ」。
ー市場の見通しは。
「熱間鍛造では約75%が自動車関連で、なかでも、足回り、クランクシャフトやコンロッドなどエンジン関連、トランスミッションなどの部品が多い。足元では、海外の自動車メーカーが日本国内の部品メーカーへの発注量が増えていて、忙しい。17年は05年以来の240万tを超えた。この水準は18年も続く」。
ーエンジンやミッションとなるとEV化への対応も必要ですね。
「長期的には部品点数の減少により、厳しくなり統廃合は必要になるかもしれない。とはいえ、そこは個々の企業で対応していくしかない」。
【関連記事:【鍛造金型特集】鍛造型、好調を持続 その背景や今後は】
金型新聞 平成30年(2018年)3月10日号
関連記事
熱間材の新技術 熱間材に関連する新たな技術開発が進んでいる。ホットスタンプやダイカストのように、過酷な条件での成形が増えているためだ。材料では、高温な金型を効率よく冷やすために、高い熱伝導性や靭性を持った新素材が登場。ま…
培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…
今なおリーマン・ショック前の7割の生産額―。プラスチック金型は、リーマン前の水準に戻った鍛造型や8割のプレス金型などと比べると回復していない。技術力、そして生産力でも圧倒的に世界をリードした「日本のお家芸」の復活のカギ…
時には経営者、時には教え諭す教育者—。工場長には多様な役割が必要だ。こうしたマルチタスクをこなすために、どのようなことを意識しながら、責務を果たしているのか。現役工場長に、工場長としての哲学を聞いた。 役割は成果を出すこ…