「金型メーカーが情報管理をするのは、自社の知的財産を守るためと顧客情報を守るための2つの意味で重要だ」と話すのは、飲料や化粧品などのプラスチック金型を手掛ける打田製作所の打田尚道社長。同社は15年ほど前に社内で情報シス…
不二精工 淡路島で新工場を稼働し、大型化対応や研究開発を強化【金型の底力】

同社は1920年の創業で、接点などの電子機器向けのプレス部品を強みに業容を拡大してきた。近年は、車載部品での採用も進んでおり、その精密な金型とプレス技術は世界中で認められている。
例えばスマートウォッチに搭載された気圧センサの精密部品(写真)。2・75㎜角、高さ1・3㎜の同部品は精密な絞り加工によって、切削からの置き換えに成功した。先端を円筒形状し、下部は角形状で、その面は0・015㎜という平坦度だ。「詳細は言えないが、複雑な順送プレス金型とプレス技術で実現した」(濱野雅夫社長)。

こうした高度な金型やプレス技術を持ちながら、近年は樹脂と金属のインサート成形部品に注力してきた。「多くの電子機器で液晶モニターが採用され、スイッチや接点などのプレス部品は減っていく」という危機感があったからだ。そのシフトチェンジは成功し、現状では売上の60%程度がインサート部品だという。
こうした流れを強化し、より付加価値を高めるために、今年4月に淡路島の洲本市に敷地面積7400㎡、延床面積42000㎡の新工場を竣工する。

新工場の狙いは大きく3つある。1つ目は需要が増加するインサート部品のライン増強。2つ目が大型化部品の対応だ。これまでは100tの射出成形機、60tのプレス機が最大で、板厚は1㎜程度が限界だった。それぞれ220t、150t、板厚を2㎜程度にまで引き上げる。「バスバーなど電動車で増える部品に対応していく」(濱野社長)ためだ。
そして3つ目が研究開発体制の強化すること。その象徴的な一つが金属と樹脂の高密着による「エアリークをゼロ」にしたインサート成形技術だ。樹脂と金属では物性が異なるため、少なからずエア漏れが発生するが、同技術によって抑えることができるという。

元々、フープ材(材料)をプレスと樹脂成形を連続して2回行う「2連続フープ成形」を得意としてきたが、この技術を応用。1次成形では金属にシール材としてエラストマを成形し、2次成形で樹脂を成形する。さらに、途中工程で熱を加えることで、シール材と金属、樹脂の密着性を高めた。これまで密着性を高めるために必要だった金属への表面処理なども不要になり「工程を減らすこともできる」(濱野社長)。
評価装置も内製し、水槽内の1Mpaの水圧をかけて試験でもエアリークはなかったという。すでに、エア漏れを嫌う、いくつかの部品で採用されているほか、現在も複数の顧客との共同で研究を進めている。
濱野社長は今後について「金属と樹脂だけでなく、他の異材成形にも挑戦したい。また、自動化への対応を進めることで、顧客への提供価値を最大化させていきたい」。
会社の自己評価シート

淡路島に工場を新設するなど積極的な展開を図っていることから「未来に投資する力」を高いと回答。また、記事内にもあるように精密プレスや開発力など「技術力」も強みとみている。一方で、それらの技術や投資力をPRしていくことが課題といえそうだ。
会社概要
- 本社: 大阪市西淀川区姫里3‐5‐4
- 電話: 06・6472・9409
- 代表者: 濱野雅夫社長
- 創業: 1920年
- 従業員: 53人
- 事業内容: 超精密プレス部品の金型制作からプレス加工まで、樹脂と金属による複合成形加工など。
金型新聞 2023年2月10日
関連記事
カメラによる機上測定機を開発した 放電加工した金型部品をチャッキングしたままカメラで捕らえ、タブレットに映し出す。原点や輪郭をズームアップ。十字線を合わせ、その位置を加工機の座標で捉える。加工部を複数ヶ所測ることで、ピッ…
この人に聞く 金型の社会的価値訴え 「日本の金型業界にとって今は変化の時期だが、チャンスでもある」と話すのは、日本金型工業会の東部支部長に就いた鈴木の鈴木教義社長。好機なのは、金型の高度化が進み日本のメーカーしかできな…
精密金型部品 キャビティやコア、スライドコアなどの金型部品を専門に手掛ける会社がある。富山県南砺市のリバン・イシカワ。金型づくりで培った経験を生かし、独自の工夫や細やかな心配りで自動車関連メーカーの金型部門や金型メーカー…
生産性高める技術提案 シナジー生むプロ集団に 昨年10月、兄の憲一会長から経営のバトンを受け継いだ。歯車などの精密冷間鍛造金型を手掛けるアカマツフォーシスが取り引きするのは、自動車部品などのメーカー。「金型を通じて顧客…


