金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

27

新聞購読のお申込み

【インタビュー】新栄工業代表取締役社長・中村新一氏 「M&Aは事業領域の拡大や技術の強化につなげることができる」

 プレス加工メーカーの新栄工業(千葉市花見川区、043-258-2310)は2019年末に、プレス金型メーカーのアポロ工業(埼玉県吉川市)を資本提携によってグループ化した。「M&Aは事業領域の拡大や技術の強化につなげることができ、今後も積極的に実施していきたい」と話す中村新一社長に実際の取り組みやM&Aのメリットなどを聞いた。

なかむら・しんいち
1975年生まれ、千葉県出身。高校在学中からバンド活動などを行い、2005年新栄工業に入社。14年社長、20年アポロ工業社長に就任し、現在に至る

アポロ工業をグループ化した理由は。

 金型技術を強化したかったからだ。当社は元々プレス専業メーカーだったが、私が入社した07年に金型部門を立ち上げた。修理や一部内製を行っていたのだが、技術レベルには課題を感じており、3~4年ほど前から金型メーカーのM&Aを検討し始めていた。

どのように見つけたか。

 地元の事業引継ぎ支援センターや銀行で探したが、条件に合う企業を見つけることができなかった。そこでM&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」に登録したところ、ちょうど後継者不在でM&Aを検討していたアポロ工業と出会うことができた。

M&Aを実施し、取り組んだことは。

 組織図の見直しや就業規則の明確化などに取り組んだ。企業理念や行動指針を再定義し、それに合わせて会社ロゴや作業服も一新した。また、アポロ工業の全従業員と面談し、積極的にコミュニケーションを図った。

なぜ、そうした取り組みを進めたのか。

 勤務体制、安全や品質に対する考え方、勤務習慣など、両社には当然の違いがある。互いの良さを引き出し、シナジー効果を最大化するためには、こうした違いを徐々に合わせていく必要があると考えたからだ。

M&Aのメリットは。

 一つは事業領域の拡大だ。例えば、アポロ工業はEV向けの金型なども手掛けており、新栄工業にとってはこれまでに無い分野の受注獲得につながる。また、商圏の拡大も期待できる。自前で拠点を出すのは大変だが、地場企業をグループ化することで、営業エリアの拡大も可能だ。

その他には。

 技術者の育成と技能継承にもつながる。仕事があふれていた昔と違い、今は一人ひとりの働く時間も限られており、技術者を育てる余裕がなくなっている。M&Aによって、ある程度の企業規模まで拡大し、育成体制を整えることで、優れた技術を次代に残せるようになるはずだ。

今後の展開は。

 あと数社ほどをグループ化し、ホールディングス企業を目指したい。試作から板金、塑性加工、最終製品まで一貫生産できる体制を整え、当グループに図面を投げれば見積もりが出てくるというのが理想だ。そして、若い人が憧れるような企業を目指したい。

金型新聞 2021年4月10日

関連記事

【金型応援隊】太陽テクニカ ダメ元でも相談を

一桁ミクロンの加工精度 「マシニングで出せない精度の穴加工は、是非任せてほしい」と語るのは、長年ジグボーラー加工やジグ研削加工に携わってきた、太陽テクニカの大畠正陽社長。同社は、航空・宇宙産業の部品から工作機械の主要精密…

切削油をオーダーメイド
サンコーオイル

 「お客様が求める油を作りたい」と語るのは、サンコーオイルの菅大祐専務。同社ではユーザーが求める価格帯や性能、さらには環境への影響まで考慮し、オーダーメイドで切削油の製造を行い、好評を得ている。  切削油のオーダーメイド…

この人に聞く
碌々産業 海藤 満社長

加工技術者に新たな呼称  ミクロン台の誤差に収まる精度、鏡のように美しい仕上げ面—。こうした加工は、卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った技術者が高精度な機械を駆使して初めて実現する。この職人と呼ばれる人たちを「マシ…

「なりたい自分になれるかも」金型メーカーに就職した女性広報

狭山金型製作所 総務部 東香奈恵さん 総務部で営業のサポートや動画によるマニュアル作成などを担当する。そうした「本業」に加え、インスタグラムやフェイスブックなどSNSで狭山金型の日常や取り組みを発信する金型メーカーでは珍…

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –メキシコ–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

関連サイト