金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

18

新聞購読のお申込み

【金型の底力】日本精機 金属3Dプリンタの技術や知見を蓄積

ダイカスト金型メーカーの日本精機は金属3Dプリンタを活用した金型づくりに本格的に乗り出す。7月に金属3Dプリンタ2台を導入した。きっかけはSKD61相当材で造形が可能になり、金型への適用領域の可能性が広がってきたこと。まずはインサート部品から始め、知見や技術を高める。将来は自らが金属3Dプリンタ技術の情報発信源となり、金型づくりを変える考えだ。

松原  雅人常務

製造子会社で貿易や金型のコンサルティングなどを手掛ける、ツーリングイノベーション(愛知県守山区)に、GEアディティブ傘下のコンセプト・レーザー社の金属3Dプリンタ「M2 cusing SL Series4」を2台導入した。金属粉末にレーザーを照射し造形していくレーザービーム方式のプリンタで、ほかにも後加工用に5軸マシニングセンタ(MC)や3軸MC、熱処理炉などと合わせて3億円以上投資した。

金属3Dプリンタで造形したワーク
3Dプリンタを導入した子会社のショールーム

これまでも一部の顧客から金属3Dプリンタを使ったインサート部品の製作を依頼されることがあったという。しかし、社内に設備を持たないため、協力先に依頼してきた。「金属3Dプリンタを使ったインサート部品のニーズは増えつつあり、いずれ必要とは感じていた」(松原雅人常務取締役)。

本格参入の契機となったのは、SKD61相当材で造形が可能になったこと。松原常務は「これまでマルエージング鋼が一般的だったが、SKD61相当だとインサート部品だけでなく、金型づくりでの適用領域は広がると感じた」という。

2月中旬にSKD61相当材の話を聞いて、4月には設備の導入を決断。「いずれ金型づくりに金属3Dプリンタが必要になるのは間違いない。その時に、後発になるのは面白くない。他社に先んじてノウハウを蓄積する必要がある」と即決の理由を話す。

2台導入した金属3Dプリンタ

今回導入した金属3Dプリンタは、SKD61相当材の造形に特化させる考えで、まずはインサート部品の造形から始める。その理由は「(複数の素材を扱うと)パウダーの入れ替えに手間がかかりすぎるのと、マルエージング鋼からSKD61相当材への置き換えを提案していくため」という。

導入の狙いは部品を作ることそのものではなく、設計領域への提案強化と、業界の構造変化につなげることにある。松原常務は「今の金型づくりで最も重要なのは設計の領域。金属3Dプリンタで作った部品の採用が広がれば、金型全体の設計から見直す必要がある。造形に関する知見と、当社が持つ金型技術と融合できれば、設計領域に提案できる」と話す。さらに「設計だけでなく、加工、熱処理、解析までトータルで手掛ける必要がある」とし、熱処理や5軸MCなども合わせて導入した。

「これまでの金型づくりでは顧客ニーズありきで、金型メーカー発信の技術開発は難しかった。金属3Dプリンタの技術や知見を蓄積し、自らが発信源となることで、金型のつくり方や業界の慣行など色んなものを変えていきたい」とし、金属3Dプリンタの技術をベースに、業界のゲームチェンジャーを目指す。

会社概要

  • 本社  :  愛知県名古屋市守山区中志段味2799
  • 電話  :  052・736・0611
  • 代表者 : 辻村 正稔社長
  • 創業  :  1920年
  • 従業員 :  60人
  • 事業内容:  ダイカスト金型の設計製作及びメンテナンス、金型部品製作、金型コンサルティング、航空機部品製作。

会社の自己評価シート

自社のどんな「力」に強みを感じ、どんな「力」をウィークポイントと感じているのか。10種類の「力」をそれぞれ10点満点で自己評価してもらいました。

金型新聞 2021年8月10日

関連記事

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –アジア–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

デジタル技術駆使し、金型製作期間半減目指す【ササヤマ challenge!Next50】

ササヤマが今期スタートした新中期経営計画「SAIMS247」。その中核事業となるのが金型製作期間の半減だ。デジタル技術や経験を駆使し金型づくりの大改革が進む。 全ての部品をQRで管理 材料に書かれたシリアルナンバー。入力…

【金型応援隊】KGM経営戦略製作所 勤怠管理・生産管理ツールの導入支援

金型企業にBPOサービス提供 KGM経営戦略製作所は、金型企業向けにBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供する。 代表の古賀寿彦氏は機械商社から中小企業診断士に転身し、独立した。製造現場に精通する強みを…

久野功雄氏

【プレス型特集】
久野金属工業 久野 功雄専務に聞く
飽き性を夢中にさせたプレス金型の魅力

自動車を中心に高精度かつ複雑形状な部品の開発、金型製造、量産まで手掛ける久野金属工業。EVなど次世代自動車の部品を生産する一方、ITを活用した改善活動など社内改革も積極的に行っている。その改革を推進してきたのが入社19年…

サンワ金型 量試一貫のサポート体制構築【金型の底力】

シェアリングで新たなモノづくりを プレス金型やプラスチック金型などを手掛けるサンワ金型は同じく安城市内に新工場を建設し、11月に稼働する予定だ。同社はプレスやプラスチック金型で培った高硬度材加工や3次元形状加工を強みに、…

トピックス

関連サイト