金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉…
がんばれ!日本の金型産業特集
ハルツ 近藤 大輔 社長
金型メーカーが成形や部品加工に手を広げるケースが多いなか、ハルツは創業から40年以上にわたり、プレスの売り型専門で金型設計製作に取り組んできた。3代目の近藤大輔社長は「先代たちの口癖は“金型が営業する”だった」というように、高品位な金型が武器だ。実際に口コミで評判が広まり、仕事を増やしてきた。さらに現在では高い技術力に加え、展示会に出展するなど露出を増やすことで、「間口を広げてどことでも付き合うのがモットー」とし、「3.2㎜以下の薄物で、400㌧クラスの大物かつ精密な仕事であれば何でも引き受ける」と近藤社長は話す。
高い技術力が強みだが、金型づくりにおけるこだわりは、「技術に溺れず、初心者でも作れる金型づくり」。得意とするのは住宅設備関連の金型だが、意匠性が高く、面品位など金型に対する要求は厳しい。そのため高い技術が必要となるが、近藤社長はあえてそこにこだわりはないと言う。それは前社長からの「会社を継続させるため、技術にこだわりすぎるな」というアドバイスがあるからだ。「技術にこだわり過ぎれば、周りが見えなくなり、自己満足の世界に入ってしまう。そうなるとユーザーの本当のニーズも見えなくなる」。だからこそ分かりやすい金型づくりにこだわる。そのなかでも特長的なのは、独特な金型図面。設計者がペンで色づけしたり、注意書きやコメントを書き込むなど、オリジナリティあふれる分かりやすい図面で、誰でもできる金型づくりを実現している。
「初心者でもつくれる金型づくり」を求めるからこそ、プロフェッショナルな人材が必要で育成には注力している。生産体制を完全分業化し、マシニング担当や放電担当など、それぞれの部署ごとでスペシャリストを育成するという方針を取っている。一つの部門に特化させることで、覚えることが少なくて済み、早い時期から戦力として活躍できる。また教える側も一つの分野を専門的に教えるため、技術の教育や伝承が比較的容易に行える。
また、前職で金型とは関係のない人材も採用し、多様性を重視している。たとえば、機械メーカー出身の人間と工作機械を自社開発したり、大工出身者であれば、天井の修理や事務所の増築も自社で行えるなど、従業員ひとりひとりの個性を活かした企業づくりができるからだ。
近藤社長は17年前、学校を卒業後入社し、一から金型づくりを学び、4年前に32歳の若さで社長に就任した。金型づくりにおいて、「新しい金型を作り上げる際、図面との戦いと、時間と妥協したくないという自分とも戦わなくてはならない」と若い技術者としての苦悩もある。ただそうした状況のなかで「良き先輩や、同僚に揉まれ励まされ見守られてここまでやってきた」と周りへの感謝も忘れない。こうした経験をしてきたからこそ、従業員ひとりひとりの幸せを考え、10年、20年、さらに先の将来を見据えた企業づくり、人づくり、そして金型づくりを目指している。
代表者=代表取締役・近藤大輔氏
創立=1973年
所在地=神奈川県横浜市金沢区福浦2丁目7番25号
TEL=045・783・8601
FAX=045・783・8302
URL=http://www.harz.jp
E-mail=info@harz.jp
資本金=1,000万円
従業員数=30人
事業内容=プレス金型の設計製作、試作品の設計製作、販売。
主な設備=マシニングセンタ4台(牧野フライス製作所、オークマ、三井精機など)、ジグボーラ1台(安田工業)、ワイヤ放電加工機9台(三菱電機、牧野フライス製作所)、平面研削盤6台(岡本工作機械)、トライプレス機3台(アイダ)、3次元測定機2台(ミツトヨ)、NC細穴放電加工機など自社開発設備、その他多数。
金型新聞 平成26年(2014年)8月10日号
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