金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

03

新聞購読のお申込み

がんばれ!日本の金型産業特集
東郷 東 成生 社長

ナノ金型に挑む
地下工場で徹底した温度管理
★桜島_R

ICリードフレーム(L/F)やモータコアなどの精密プレス金型を手掛ける東郷の本社工場は鹿児島市の市街地から少し離れた小高い山の山頂部にある。この工場そのものが、精密にこだわる同社の金型づくりの象徴だ。山頂部を切り取るようにしてある4つの工場の大半は地下にある。桜島からの火山灰の影響をシャットアウトできる2重ドア構造で、徹底的に管理された室温環境の中で金型が生み出されている。

作る金型はもちろん高精度での超精密な金型ばかり。写真にある桜島を模したワークは厚さ80μmのリン青銅で、溝幅50μm、ピッチは0.1㎜の超微細ワークだ。L/F金型では最狭インナーリード先端ピッチ0.14㎜加工技術を確立。研削加工でも面粗さ0.2S以下を実現している。

高精度ばかりではない。短納期も強みだ。ICL/F用金型であれば約3週間。コネクタ金型であれば仕様確定後であれば2週間で納品できる体制を整えている。

ここまでしてもニーズに応える金型づくりに終わりはない。全面地下にあるメーン工場の温度は23度±0.8度以内に管理。それでも東成社長は「まだ甘い。機械で発生する熱を全て外に出すようにして、±0.3度に抑える」と更なる上を目指す。その先に見据えるのは「ナノ金型」だ。「現在実用的なナノレベルの金型はない。測定もできてお客に評価してもらえる、そのレベルの金型を作りたい」と次世代の金型づくりに挑む。

挑戦の歴史が人を育てる
★東郷P1_R

環境が人を育てると言われる。東郷では「挑戦」し続ける環境が育成につながっている。不思議にも同社は約10年ごとに挑戦してきた歴史がある。1985年、ものづくり基盤の少ない鹿児島で、社長自らフライス盤一つで会社を興したことも挑戦だ。当時「金型重量=価格」(東社長)だった時代に、半導体向けの微細金型に挑み、高付加価値路線に舵を切った。

10年後の96年。「顧客の精度要求に応える」ために、地下工場を建設。ICL/Fの金型に参入したのもの同時期だ。それも挑戦する同社らしい。既存顧客の半導体ユーザーの海外進出が決まり、「仕事がなくなる崖っぷちの状況」のなか、「お金はいらないから検証して欲しい」と独自の手法で作った金型を持ち込み、受注につなげた。05年には「自動車向けの仕事がしたい」と願いを叶えるべく、モータコアの金型に着手。そして2015年。ナノレベル金型に挑戦し、量産も本格化させる予定で、「他にも挑戦を考えている」(東社長)と言う。

たゆまぬ挑戦を重ねることで人も育ってきている。13年にタイに拠点設立したこともあって、最近は若い社員から「次はアメリカ進出だ」と言う意見も聞こえてくるそう。そんな声を聞いて東社長は「9割以上思った時点で夢は叶う」と嬉しそうに話す。人材やものづくりの基盤が揃った今「これからが楽しみ」と話す東社長。今後は会社のモットーとして掲げる「一流の世界企業を目指す」ことに挑み続ける。


会社メモ
★東社長_R

代表者=東 成生社長
資本金=9000万円
売上高=約12億円
創業=1985年
従業員数=70人
本社工場=鹿児島県鹿児島市川田町2194
電話=099・298・8050
FAX=099・298・7942
主な業務内容=精密プレス金型の設計製造。
設備機械=マシニングセンタ「AZ150」(ソディック)など3台、ジグボーラー「YBM850V」(安田工業)1台、型彫り放電加工機「AP1L」(ソディック)など3台、ワイヤ放電加工機「AP650L」など14台、平面研削盤「SGC94」(ナガセインテグレックス)など7台、成型研削盤「SHSD-80」(ナガセインテグレックス)など9台、トライプレス「MXM-80」(山田ドビー)など7台、CAD「NeoSolid」(C&Gシステムズ)など10台など。
会社方針=「挑戦・誠意・創意工夫」


金型新聞 平成28年(2016年)1月10日号

関連記事

狭山金型らがミニ四駆大会を開催

金型メーカーら32チーム 400人が参加 狭山金型製作所(埼玉県入間市、04・2934・7683)は2月9日、商品開発などを手掛けるMACHICOCO(大阪府東大阪市、06・6720・8735)らが運営するモノづくり集団…

アルファミラージュ 低価格内視鏡を金型分野に拡販【金型応援隊】

比重計の製作やスチームクリーナーなど各種機器・器材の販売を手掛けるアルファーミラージュ(大阪市都島区、06-6924-2631)はこのたび低価格工業用内視鏡「MRA‐28W」と「MRT‐40TH」の販売を開始した。 「M…

コヅカテクノ 太陽光パネル導入、消費電力50%削減

自動車向けプラスチック金型を手掛けるコヅカテクノ(名古屋市港区、052-381-2268)は3月、本社工場に太陽光パネルを設置し、稼働した。カーボンニュートラル達成に向けて、消費電力の削減を図り、2030年までに13年比…

平岡工業 精密部品加工・調達代行【特集:金型メーカーのコト売り戦略】

調達の効率化サポート 自動車のウェザーストリップのゴム金型や切断折曲機などを手掛ける平岡工業のもう一つの事業が、精密部品加工・調達代行サービスだ。金型や切断折曲機で培った技術や協力企業とのネットワークを活かし様々なニーズ…

2月の金型生産実績

2月の金型生産実績

前年同月比11.9%増の278億7、200万円 プレス型は14・5%増、プラ型は20・0%増 日本金型工業会(会長牧野俊清氏)は、経済産業省機械統計(従業員20人以上)による平成26年2月の金型生産実績をまとめた。それに…

トピックス

AD

FARO スキャンしたらすぐに結果まで:工数低減を実現

金型のメンテナンス、修復、複製に3次元測定アームを活用 製品を製造するために欠かせない金型ですが、そのメンテナンスには多くの課題が存在します。金型は使用するうちに摩耗し、時... 続きを読む

関連サイト