双葉電子工業(千葉県茂原市、0475-24-1111)は昨年、2023年度(24年3月期)までの中期経営計画「Futaba Innovation Plan(フタバ・イノーベーション・プラン)2023」を策定した。金型用…
特別インタビュー 進恵技研 佐藤 倫幸社長
特集 僕らの展示会
先を予測し恐れず投資
1967年生まれ、栃木県出身。87年にプレス加工メーカーを経営する父親が設立した金型補修を手掛ける会社に入社し、進恵技研を創業した。2005年に社長に就任し、現在に至る。

自動車のボディやフレーム向けプレス金型を手掛ける進恵技研(栃木県足利市、0284-73-2135)は、ハイテン材(高張力鋼板)用の金型を得意とし、年間約600型を生産する。創業1987年という後発の金型メーカーでありながら、ここまで成長できたのは、積極的な設備投資があったからだ。「金型メーカーの経営は、株式や為替といった投資事業に似ている」と話す佐藤倫幸社長に、設備投資の重要性や今後の方向性、設備メーカーに望むことなどを聞いた。
自動化、高精度化に注力
金型メーカーにおける設備投資の重要性とは。
金型メーカーの経営は、株式や為替といった投資事業に近いかもしれない。先を予測して、必要な設備や技術にいかに投資できるか。当社の場合は、それがハイテン材だった。99年に自動車メーカーからの要望で、ハイテン材に対応するために、1億2000万円かけて量産用のメカニカルプレス(1000t)を導入した。当時の売上高は4~5億円だったが、怖がらずに投資したことで、いち早くハイテン材に取り組むことができ、当社の強みとなった。
なぜそこまで大きな投資に踏み切れたのか。
ハイテン材用の金型は莫大な投資が必要なため、当時の金型メーカーの多くがやりたがらなかった。そこにチャンスがあると思った。他社のやらないことができれば、強みになる。そう考えて投資に踏み切った。
2015年にも大規模な設備投資を行った。
取り組み始めた当初のハイテン材は、400~600MPaほどだったが、ハイテン化が進み、800~1200MPaといった超ハイテン材にも対応しなければいけなくなった。そこで、新工場を建設し、より加圧力の高いメカプレス機(1500t・2000t)、加工能力の高い門型マシニングセンタなどを約15億円かけて導入した。
今年、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に採択された。どんな投資を予定しているのか。
大きなテーマは自動化や無人化。オートワークチェンジャー(AWC)といった自動化システムの導入を検討している。また、自動化を進めるためには、機械加工の精度を高め、人が仕上げる工程を減らさなければならない。温度管理に取り組み、加工精度を追求する。熱変位対策が取られた加工機の導入や恒温工場の建設を考えている。
なぜ自動化か。
人手不足に加えて、「働き方改革」による労働時間の短縮で、これまでのような人に頼った金型づくりが難しくなる。今、自動化に取り組まなければ、今後国内で金型をつくることができなくなるかもしれない。
リゾートホテルのような入り口、綺麗な建屋や事務所の内装などにもこだわりを感じる。
金型産業は「きつい」「汚い」「危険」という「3K」のイメージがあり、若い人が集まりにくい。良い人材を確保するためには、こうしたイメージを覆し、働きやすい環境を作ることが大切。よく「そんなところにお金をかけても、稼がないから無駄だ」と言われるが、そうではない。企業にとって最も大事なのは人であり、良い人材を集めるための投資や取り組みは最終的な利益へとつながると考えている。
今年8月には「未来投資会議」(※)のヒアリング会合に出席した。
金型メーカーの現状や課題などを政府に訴えた。設備や人材の育成には膨大な資金や時間がかかり、個社の力だけでは限界がある。特に今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外とのやり取りが困難となり、サプライチェーン崩壊の危機を感じた。今後国内にものづくりを残すことの必要性が明らかになった。政府には補助金などの施策を通じて国内の製造業への支援を続けてほしいと要請した。
※政府が2016年に設置した国や地方の成長戦略を議論する会議。首相を議長とし、議員は関係閣僚や企業の代表者らが務める。今年10月に廃止され、「成長戦略会議」として引き継がれた。
生産設備メーカーに望むことは。
もっとユーザー目線に立った構造の機械を作ってほしい。例えば、掃除がしやすい、切粉が集めやすい、加工室への接近性が良いとか。掃除しやすくなれば、それだけで段取り時間が短縮でき、生産性向上につながる。
金型新聞 2020年11月20日
関連記事
伊藤製作所(愛知県弥富市)は熱間鍛造金型やダイセットを主力とし、クランクシャフトなどの自動車向けや建機・重機、免振装置、航空機といった幅広い市場で活躍する。特に大型の金型やダイセットが得意で、ダイセットは500~6300…
今年4月、ダイスなど超硬合金製の耐摩耗工具や金型を手掛ける冨士ダイス(東京都大田区、03-3759-7181)の社長に就任した。自動車産業の大変革など同社を取り巻く事業環境が加速度的に変化する中、「変化に対して順応力を持…
当社は創業から50年間、冷間圧造金型一本で事業を続けてきました。しかし、10年後も同じように事業を続けていられるかというと、そうは考えていません。今ある仕事は相当減っていると思います。感覚的な予測になりますが、だいたい3…
マツキ 社長 鈴木 崇嗣さん(41) 昨年、初の自社商品としてルアーのプラスチックモデル「ルアープラモ」を発売した。クラウドファンディングサイトで目標金額の500%超を達成し、現在は全国のホビーショップや釣具店などで販売…