金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

18

新聞購読のお申込み

金型の知的財産権 日本金型工業会西部支部でセミナー

金型の知的財産権、いわゆる特許、著作権問題は10年以上前より日本金型工業会でも対応を検討してきた。背景には金型図面あるいは加工データの流出にある。金型発注企業からメンテナンスなどを理由に金型図面や加工データの提出を要求された結果、海外企業による二番型などの製作や類似の金型製造委託などの問題が起こり、国内の金型受注が減少したほか、日本の金型企業が持つ技術やノウハウが流出したからだ。金型業界では対応に乗り出すものの、著作権、特許権の効力には疑問の声もある。
 そもそも著作権は、国の文部科学省管轄にあり、経済というより文化的要素が強く、建築や絵画、音楽などを想定しており、金型に適用された例がなく、対象も金型図面や加工データのみとなる。特許権は金型および技術で取得できるが、特許を侵害された場合、立証が難しく、特許侵害により裁判所へ提訴を行っても、金型ユーザー企業は企業秘密を理由に工場への立ち入りを許可せず、立証できない例が多々ある。また、特許出願時に金型図面などが公開され、そこからノウハウをコピーされる恐れもあり、敬遠傾向だ。それゆえ、特許や著作権の効力は妥当と言いにくい。 
日本金型工業会西部支部(眞鍋道孝支部長・扶桑精工会長)は11月29日、大阪科学技術センター(大阪市西区)で「金型業界における知的財産権の法的、契約上の課題と対応案」をテーマに、日立ハイテクノロジーズの石塚利博弁理士を招きセミナーを行った。
石塚氏の提案は現実的対応と将来的対応の2つを提示。前者は金型図面を顧客に提出する際、ノウハウや材料など発注先を記載せず、重要部分は自社で管理すること。後者は、オンリーワンの技術、ノウハウを持つ、あるいは発注先と製品を共同開発し、共同ライセンスにすることである。後者の対応はすでに金型メーカーの中でも増えている。
 日本金型工業会では「図面を安易に出さないように」と呼びかけるが、現時点で最良の対応策は個々の事情もあり、難しいとする。金型はあくまで道具であり、技術的な面がどれだけ部品の製造に関わっているかは判別できない。よって、対応策は図面などを正確に記載しない(交差などをぼやかす)などの対応が現実とするが、今後も金型の知的財産権に対する認知度を上げる活動に加え、公証制度を利用し、図面の認証を受けるなど先手を怠らないようにすることも重要だとしている。

関連記事

共和工業が三井化学のグループに

共和工業が三井化学のグループに

素材、成形技術の向上へ  三井化学が11月下旬、大型プラスチック金型を得意とする共和工業をグループ化したと発表した。自動車事業を強化したい三井化学と、素材知見を高め、ユーザーへの提案を深めたい共和工業の戦略が一致した。連…

【新社長に聞く】シー・アイ・エム総合研究所  富田 英史社長「現場と経営つなぐ司令塔に 」

とみた・ひでし1999年慶応義塾大卒。システム会社での開発経験を始め、日本ヒューレットパッカードや日本オラクルでコンサルティング部門の部門長を歴任。直近では政府系ファンド出資のランドデータバンクの立ち上げに専務執行役員と…

金型メーカー座談会 若手経営者が語る
ー業界の魅力高めるためには 第一部ー

変貌する経営環境 順応の精神がカギ 座談会出席者(50音順) エムアイモルデ 宮城島 俊之社長  ヘッドライトなど自動車関連が主力のプラスチック金型メーカー。従業員は5人。本社は静岡県富士市だが工場は中国蘇州にあり、日本…

J‐MAX 山﨑英次社長に聞く 電動化サプライヤーへの道【特集:プレス加工の未来】

自動車の電動化(EV化)に伴い、ものづくりも大きな変革期を迎えている。従来のエンジン車には搭載されなかった電動化部品の需要が高まり、新規需要の取り込みが部品メーカー各社の大きな課題となっている。その中、ハイテン材加工の車…

樋口製作所 プレス品の実現可能性を判断

プレス加工や金型などを手掛ける樋口製作所(岐阜県各務原市、058・383・1141)は熟練技能者の思考・考え方をAIに学習させ、3Dモデルをアップロードするとシステムが自動でプレス加工(塑性加工)可否を特徴形状別で判断す…

トピックス

関連サイト