金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

22

新聞購読のお申込み

この人に聞く2016
かしこい 金型研究会 高橋 百利会長

もの言う金型づくり

必要な情報を金型が収集

 クライムエヌシーデー(相模原市南区)や慶応義塾大学などは共同で、IT技術を生かし、プレス金型に新たな価値を加える研究を行う「かしこい金型研究会」を立ち上げた。あらゆるものがネットにつながるIoT時代を迎え「もの言うかしこい金型を作るべきだ」という。発起人でもあるクライムエヌシーデーの高橋百利会長に目的や狙い、IoTなどについて聞いた。

かしこい金型研究会 高橋会長―同会を立ち上げた目的は何でしょうか。
 「これまで金型づくりのテーマは低価格、短納期、高品質という軸しかなかったが、それでは限界がある。金型に新たな価値を加え、高度化した競争を展開しなければならない。成形品を輩出する単なる道具からIT技術を生かした、かしこい金型に変える必要がある。それを研究し、形にしていくのが目的だ」

―かしこい金型とは。
 「例えば、絞り型では、材料の2枚打ちを検出できず型を壊したり、ピアスポンチが欠落したまま生産を継続したりする事故が起きている。こうした問題に対し、自ら処理でき、警告を発し、なおかつ過去の情報などを蓄積しそのデータを発信できる、もの言う金型をイメージしている」

―具体的な取り組みやテーマを教えて下さい。
 「パンチの折損やスクラップの滞留など検査して自動で対応できたり、様々な記録を記憶できたりして、メンテナンスの効率化につなげることなどを想定しているが、大半が特許性を帯びているので詳細は言えない。現時点では8つのテーマを研究しているが、近く第一弾を発表する予定だ」

―IoTは金型メーカーにとって意味があるのでしょうか?
 「金型メーカーに直接的な恩恵は少なく、むしろ金型を管理したいユーザーに効果は大きい。けれど、ユーザーがIoTを進める上で、必要となる情報を金型側で収集できれば、その金型の価値は高まる」

―必要な情報とは。
 「例えば金型の戸籍、購入部品情報、管理すべきポイント、メンテナンス情報などがあるだろう。重要なのはそうした情報はユーザーの要望に応じ、マーケットインの考え方で収集すべきだ」

―今後の展開は。
 「勉強会ではなくあくまで研究会。自ら汗を流し、行動し、結果を求めていく。まずは今あるテーマを具現化する。将来的にはプレスだけでなく、樹脂やダイカストなどへの展開も検討していく。そして、金型メーカーが将来も夢を見られるように力を合わせてやっていきたい」

かしこい金型研究会メンバー

 ▽会長=高橋百利会長、副会長=青山英樹教授(慶應義塾大学)会員=久野拓律社長(アデック)、今村康社長、松林毅上席スペシャリスト(日本ユニシス・エクセリューションズ)、近藤大輔社長(ハルツ)など ▽事務局=高橋啓太社長(クライムエヌシーデー)▽特別アドバイザー=中川威雄会長(ファインテック)

金型新聞 平成28年(2016年)6月3日号

関連記事

牧野フライス製作所 立形5軸と形彫の新型

大物金型向けを強化  牧野フライス製作所は中・大物金型向けの製品の品ぞろえを拡充する。2月24日、大型の5軸制御立形マシニングセンタ(MC)と、大型NC放電加工機を同時に発売した。インパネやバックパネルなど自動車の意匠性…

【金型生産実績】前年同月比 6.5%増の294億3,100万円

プレス型は4.6%減、プラ型は13.5%増 2021年7月の金型生産は、6.5%増の294億3,100万円となった。前月比でも3.7%増と前月に続き回復した。数量は前年同月比0.8%減と微減。前月比でも3.4%減の3万9…

佐藤特殊製油 汚れを落とし錆び防ぐ

新ブランド「Metal Rabbit」 工業用の加工油やグリースのメーカー、佐藤特殊製油(大阪市城東区、06-6932-2451)は新ブランド「Metal Rabbit(メタルラビット」を立ち上げる。第1弾として金型や工…

江口博保さん 研さん重ねる金型設計の熟練者【ひと】

自動車のフィックスドウインドウやクォーターウィンドウ。その成形コストや歩留まりを改善し、環境に配慮した金型も設計した。顧客製品設計の最終確認会にも出席しアドバイスする。それらが評価され、令和2年度「現代の名工」に選ばれた…

日本金型工業会 ISTMA総会を報告
世界の金型生産、約8兆5000億

 日本金型工業会は昨年12月、各支部(東京・名古屋・大阪)で6月にブラジル・ジョインビル市で開催されたISTMA総会(国際金型協会)の報告会を開いた。それによると世界の金型及び金型部品などの生産金額は約8兆5000億円(…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト