金型は成長産業 「金型は世界的には成長産業」―。そう話すのはCAD/CAMメーカー、C&Gシステムズの塩田聖一社長。コンピューターエンジニアリング(CE)とグラフィックプロダクツ(GP)の合併から4年半、年平均の成長率1…
がんばれ!日本の金型産業特集
米山金型製作所 村松 善太郎 社長
ナノの世界に挑む
マイクロニードルなど超精密の金型
先端径0.01㎜のピンが1.2㎜ピッチで無数に立ち並ぶマイクロニードルと呼ばれる医療や化粧品向けの金型。求められる寸法公差は、±2.0μm台と超精密。米山金型製作所が取り組むのは、こうした超精密加工にこだわった金型づくりだ。
もともと(設立1989年)、デジタルカメラや弱電部品を中心に手掛けていたが、リーマン・ショックを機に受注が減少。その後、車載用コネクタなどの自動車部品をメーンとし、成形機100t以下の幅広い金型を手掛けるようになった。
超精密にこだわるようになったのは2006年頃。「今までの仕事では、検収に時間がかかり、利益が出にくい。何か付加価値のあるものを作らなければ、生き残れない」(村松善太郎社長)という危機感から補助金などを活用して、微細加工用高速マシニングセンタや、高精度測定機など最新鋭の設備を導入したのが始まり。マイクロニードル型以外にも、幅0.2㎜高さ0.1㎜の凸形状のマイクロ流路や、Ra(面粗度)10nmのライトガイド用金型など様々な微細精密金型を製作する。
こうした加工技術を会得するには、「色んな案件で事例を増やしてノウハウを積み重ねることが重要。とりあえず試しで加工するとか、無料で加工するなんてこともある」(村松社長)。毎年、10回以上の展示会に出展し、そうした案件に触れられる機会を作っている。
昨年には、工場を増設し、設備も強化した。「ナノマシンクラスの加工にどれだけ近づけるか。これに挑戦したい」とヘール加工など、今まで以上に精密な加工に取り組む考えだ。
知識・経験に伴う指導を
「人材育成が一番の課題」と話す村松社長。昨年まで各現場の責任者に育成を任せていたが、なかなか若手が育たず、頭を悩ませていた。
同社の従業員の年齢構成は20代から60代までと幅広く、比較的バランスも良い。ただ、「20、30代と40代以上の間に分厚い壁がある」という。それは、40代以上が、所謂「見て覚えろ」の世界で教えられてきた世代に対し、30代以下にはそれが通用しないという世代間の違いから生まれる。
村松社長は、「若手の世代は、学校でも丁寧に説明を受けながら教えられて育ってきた。それをいきなり見て覚えろと言われても難しい。逆に年配の世代は、『見て覚えろ』で教えられてきたから、その指導方法しか知らない。これこそ人材育成がうまくいかない要因」と分析する。
そこで今年から同社では、そうした差を埋めるために、まずは若手従業員が、金型に対してどれだけの知識や興味を持っているか把握することにした。「そもそもが分かってないのに、先の段階の話をしても身に付くわけがない」と金型の基礎が学べるDVDを見せて、感想文を書かせることで理解度を測った。そこで得られた結果をもとに、それぞれの理解度に応じて、今後の指導方針を決め、育成に取り組んでいく。
また、社内を複数に分けて、それぞれで独立採算制を取る方法も検討中だ。「仕事の分業化によって、自分で判断することが少なくなっている」と若手が自発的に考え、取り組まざるを得ない状況を作り、技術力の底上げを狙う。
会社メモ
代表者=村松 善太郎氏
創業=1989年
所在地=長野県下伊那郡松川町大島402-12
資本金=700万円
TEL=0265・36・5476
FAX=0265・36・6309
従業員数=26人
事業内容=プラスチック射出成形金型設計・製作、プラスチック射出成形金型修理・メンテナンス、金型部品製作、治工具部品製作など
主な設備=高速マシニングセンタ(碌々産業)5台、CNCジグボーラー(安田工業)1台、立型マシニングセンタ(牧野フライス製作所など)3台、横型マシニングセンタ(牧野フライス製作所)1台、ワイヤーカット放電加工機(三菱電機など)4台、形彫り放電加工機(ソディックなど)3台、平面研削盤(ナガセインテグレックスなど)3台、非接触表面形状測定機(Zygo)1台、ツールモニタリングシステム(Jeyecore)1台、3DCAD/CAMシステム(C&Gシステムズなど)12台などその他多数。
金型新聞 平成29年(2017年)5月12日号
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