金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

24

新聞購読のお申込み

オギハラ 長谷川 和夫 社長
〜新素材の金型に挑む〜

いかにトライ数を減らすか

長谷川和夫社長

 1954年生まれ、静岡県出身。77年日本大学卒業後、オギハラ入社、86年オギハラ・アメリカ・コーポレーション(現タイサミット・アメリカ・コーポレーション)、2013年同副社長、16年1月オギハラ社長に就任。

―アルミ材用金型に取り組んだきっかけは。
 「1988年にホンダのNSXに関わったのがきっかけ。オールアルミボディを採用した自動車で、当社では一部の金型を手掛け、量産はほぼ全てのアルミ部品の生産に携わった。当時は材料の開発が進んでおらず、プレスや溶接など加工に苦労した記憶がある」

―当時に比べて、何が変わりましたか。
 「材料と接合技術の進化が大きいのではないか。アルミ材の開発が進み、絞るときに割れ難くなるなど、当時に比べて格段にプレスしやすくなった。また、接合技術も進歩した。抵抗溶接だけでなく、トグルロック、リベット留め、接着剤など様々な工法が開発され、アルミ材で自動車を組めるようになっている」

―一般のプレス用金型との違いは。
 「最大の難点はスプリングバックだろう。高張力鋼坂(ハイテン材)と同じくらい大きいので、設計どおりの形状を出すのが難しい。当社では、10年ほど前から導入した3Dスキャナを使って工程ごとに全てスキャンし、データを蓄積して成形シミュレーションの精度を上げている。ただ、トライアウトの回数は減っているが、まだまだ課題は多い」

 「また、せん断ピアス加工などの加工くずの処理も課題だ。アルミは加工くずが出やすく、これが加工面につくと面品位の悪化に繋がるなどトラブルの原因になる。金型にディンプル(くぼみ)を付けて加工くずを逃がす処理や、ブローを取り付けて吸い込むほか、鏡面にしてバリを抑制するなど様々な工夫を加えている」

技能に頼らない作り方

―今後のアルミ材活用の動きをどう見ますか。
 「30年以上前からフォード社(米)のリンカーンでは、フードパネルにアルミ材を使っていた。アメリカでは当時から『フタ物はアルミ材』という考えが主流だった。今後は日本の自動車メーカーでも採用が進むだろう。また、アルミと高張力鋼坂(ハイテン材)、アルミと炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など複合化の流れも拡大していくと見ている」

アルミ材活用という点ではダイカストという選択肢もあります。
 「プレスの強みは量産性。生産数やコストによって使い分けていくことが重要だろう」

―今後の展開は。
 「シミュレーションの精度を上げ、戻り作業のない生産体制を構築する。さらに、アメリカや、中国工場の量産で得た情報をフィードバックして金型に織り込み、規格化することで、人の技量に頼らない金型づくりに取り組んでいく」

―金型メーカーができることは。
 「今後もアルミに限らず様々な技術開発が進むだろう。コストやデザインなどあらゆる側面から最適な車づくりを追求するのが完成車メーカー。我々金型メーカーは、常にそうした動きに対応できるように準備しておくことが重要だ」

金型新聞 平成29年(2017年)5月12日号

関連記事

短時間でプレス解析 南工【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

トライ後の改修減らし生産性アップ 自動車の骨格部品などのプレス金型を手掛ける南工は昨年、解析速度の速いプレスシミュレーションソフトを導入した。短期間で高精度の塑性変形予測を割り出し、設計品質を高め、トライ後の改修時間も短…

立形5軸MCによる自動化を提案 高橋章氏(安田工業 営業本部国内営業部 部長)【この人に聞く】

EV金型を高精度加工、自動化提案や技術向上に力 安田工業はこのほど、立形5軸マシニングセンタ(MC)の新機種「YBM Vi50」を発表した。立形5軸MCの中型機で、EV(電気自動車)部品の金型を高精度、高能率に加工できる…

黒田彰一氏(黒田精工元社長) 死去

日本金型工業会の会長など歴任  日本金型工業会や国際金型協会(ISTMA)、アジア金型工業会協議会(FADMA)の会長などを務め、日本のみならず世界の金型産業の発展に貢献し続けた黒田彰一氏(黒田精工最高顧問)が9月30日…

堀江亜衣奈さん 醍醐味は職人技の瞬間【ひと】 

「六角パンチやピンの研削加工では多少寸法のズレが発生するため、補正するのが常ですが、狙い通りに寸法がハマッた瞬間はヨシッとガッツポーズします」と笑顔を見せるのは堀江亜衣奈さん(22)。精密鍛造金型や部品を手掛ける阪村エン…

この人に聞く2017<br>安田工業 安田 拓人社長

この人に聞く2017
安田工業 安田 拓人社長

微細加工の大型化に対応  工作機械の「マザーマシン」として世界で高い評価を得ている安田工業。近年、金型業界でもニーズが高まる微細加工向けとしてJIMTOF2016で「YMC650」を発表し微細加工分野の開拓に努めている。…

トピックス

関連サイト