金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

11

新聞購読のお申込み

NEDO 今西大介氏に聞く
自動車部品の行方

 ハイテン、アルミ、CFRP 

マルチマテリアル化が加速

 燃費規制が自動車の軽量化を加速させている。それに伴い、アルミやハイテン材(高張力鋼板)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など素材の開発も進む。金型づくりにどんな影響があるのか。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で、「車体軽量化に係る構造技術、構造材料に関する課題と開発指針」を検討した材料・ナノテクノロジー部主任研究員の今西大介氏に軽量化の動向を聞いた。

―軽量化が求められる背景について教えて下さい。
 「CO2排出量規制が大きな理由ですね。欧州では2020年に15年比で二酸化炭素(CO2)の排出量を3割近く減らさなければなりません。さらにこれまでの流れを見ていると、30年には15年の半分強の排出量まで減らす必要が出てくると思います。当然、CO2を減らすには自動車を軽くしなければなりません」。

―燃費規制に対しては電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発も進んでいます。
 「その進歩は凄まじく、将来が見通しづらいため、我々の調査では従来のエンジン車の軽量化に絞りました。そこで分かったのは、エンジン車では、『軽量化』と『パワートレイン系の進化』の燃費への影響度は1対3程度だということです。つまり、エンジン車の燃費改善の25%は軽量化が担わなければならないのです」。

 「軽量化が重視されるのは多くの利点があるからです。例えばEVでは軽量化できれば航続距離を伸ばすために電池を多く積むこともできます。つまりEVでもFCVでも、軽量化は自動車メーカーにとって常に必要な課題なのです」。

―素材はどう変わっていきますか。
 「部位ごとに異なりますし、素材開発は日進月歩ですから見極めは難しいのです。我々のプロジェクトでは、現時点での構造部(フレーム系と外板系)で複数のシナリオを考えています。まず一つ目はハイテン材を限界まで使うケース。剛性が必要な部分では限界が来るため、フレームでつぶさなければならない部位や、外板部はアルミ化すると考えられます」。

―ほかのケースは。
 「二つ目がハイテンに拘らず、適材適所の材料を採用するケースです。フレームのつぶさない部位ではCFRP、外板部などにアルミの採用が考えられます。三つ目は最も軽量化できるCFRPの実用化を前提とした場合。熱可塑性や熱硬化性のものの採用が想定されます。いずれの場合も、価格や技術の進化の速度もありますが、25年頃までに見極めがなされるように思います」。

―金型には何が求められるでしょう。
 「まずアルミやCFRPなどの新素材向けの金型技術が必要になるでしょう。複数の材料を適材適所に採用する『マルチマテリアル化』も進むので、複数の材料を接合する技術が重要になります。素材ができて、それを自動車に採用するにしても、素材と自動車を結ぶ加工に係るプレーヤーは絶対に必要なので、金型技術はより重要になってきます。我々のプロジェクトも今後は加工の部分に入っていきますので、金型メーカーも参画して欲しいですね」。


NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
材料ナノテクノロジー部主任研究員
今西 大介氏

今西大介氏 名古屋工業大学大学院卒業後、ソニー入社。同社中央研究所で半導体レーザーの開発を行う。2005年の愛知万博での2005インチプロジェクションディスプレイのレーザー光源の開発や、「プレイステーション2」に搭載された世界初の2波長半導体レーザーの開発などに従事。2013年NEDOに出向、主任研究員として、革新的新構造材料等研究開発に携わる。


金型新聞 平成29年(2017年)5月12日号

関連記事

小径サイズを大幅に拡充 高硬度向けやCBN
ユニオンツール

 ユニオンツールは高硬度材向けやCBNエンドミルの小径サイズを大幅に拡充する。焼入れ鋼などを高効率に加工できる「HMGCOAT」のシリーズや、CBNのエンドミルの小径サイズを増やす。  高硬度材に加工に適した、新開発のコ…

CGTech 「ベリカット」新版、解析速度や精度向上

CGTech(東京都豊島区、03-5911-4688)はこのほど、NCマシンシミュレーション「べリカット」の新版V9.2を発表した。解析速度や精度の向上のほか、新たな工具への対応、機械データの取り込みに対応するなど、大幅…

【金型テクノラボ】倉敷機械 AI活用による金型・加工見積の自動化

金型・部品加工の見積作成における最大の課題は、相応の専門知識がないと見積作成が困難であるという点だ。そのため、熟練者の経験への依存度が高く、さらに加工業者間での金額差異の問題も発生している。これらの課題に対して、半自動化…

【ウェブ限定】平面研削盤「SGS‐75」を開発<br>ナガセインテグレックス

【ウェブ限定】平面研削盤「SGS‐75」を開発
ナガセインテグレックス

小型・高精度を実現 リーズナブルな価格で提案  ナガセインテグレックス(岐阜県関市、0575・46・2323)は、金型プレートや精密部品の加工に最適なコラムタイプの高精度平面研削盤「SGS‐75BLD2‐Neo3」が好評…

ミスミ 売上高過去最高 22年3月期

自動車関連需要が回復 ミスミグループ本社(東京都千代田区、03-5805-7050)の2022年3月期売上高は、17.8%増の3661億6000万円と過去最高を更新した。営業利益も92%増の522億1000万円と過去最高…

トピックス

関連サイト