金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

08

新聞購読のお申込み

社名変更し、再出発 黒田克典氏(プロテリアル 特殊鋼事業部 工具鋼部長)【この人に聞く】

プロテリアル(東京都江東区)は今年、日立金属から社名を変更し、新たな歴史に向けて再出発した。4月には金属材料と機能部材の2事業本部から特殊鋼、電線、自動車部品など9事業部に移行し、組織体制を強化。意思決定の迅速化など組織にスピード感を持たせ、加速度的に変化する市場環境に対応する。金型材を扱う工具鋼部ではどんな取り組みを進めるのか。黒田克典部長に聞いた。

金型の大型化に対応

プロテリアル 特殊鋼事業部 工具鋼部長 黒田 克典(くろだ・かつふみ) 氏
1976年生まれ、宮崎県出身。2001年京都大学大学院工学研究科修了後、日立金属(現プロテリアル)入社。23年4月特殊鋼事業部工具鋼部長に就任し、現在に至る。

組織体制を変更した狙いは。

組織にスピード感を持たせるためだ。自動車の電動化などによって、当社を取り巻く市場環境は急速に変化している。そうした中で、より迅速かつ柔軟に対応できる体制が必要だと考えた。

工具鋼部を取り巻く市場ではどんな変化が。

工具鋼は自動車関連が多くの需要を占める。自動車産業では今、電動化や自動運転などによって、ものづくりが大きく変わろうとしている。その一つが、軽量化を図るために自動車の構造部品を鉄からアルミに置き換える動きだ。こうした動きに伴い、今後、金型も大型化が進む可能性がある。

どう対応するか。

ニーズに合った製品を開発している。その一つがダイカスト金型用鋼「DAC‐i」。焼入れ性が良く、熱処理した後の靭性が高い汎用材で、大型化にも対応する。また、より性能の高い「DAC‐X」はモータケースやヒートシンクなどの複雑な形状が要求される電動化部品の金型に適している。

アルミダイカストで車体を一体成形する「メガキャスト」の需要が高まっている。

需要を取り込むために、熱処理も含めたインフラ強化に取り組んでいる。海外拠点では熱処理設備の更新や増強などを行っている。国内は今後の動向を見極めながら対応していく。

ダイカスト用鋼以外で注力しているのは。

冷間ダイス鋼「SLD‐f」だ。金型としての耐久性を維持しながら、被削性を格段に向上させた材料で、生産性向上に大きく貢献する。自動車の開発領域が多岐に渡っている中、リードタイムの短縮、製造コストの削減は大きなメリットにつながると考えている。

金属AM(付加製造)技術はどうか。

粉末開発や用途開発に注力している。今年5月には高硬度マルエージング鋼粉末を開発した。一般的なマルエージング鋼が54HRC程度に対し、60HRC程度の硬度を得ることができる。また、用途開発では金型補修などの技術開発も進めている。

工具鋼部が目指す今後の方向性は。

品質、納期でより良いものをお客さまに提供していくことに変わりはない。“ヤスキハガネ”ブランドをこれまで以上に多くの人たちに使ってもらい、さらなる成長を目指す。

金型新聞 2023年9月10日

関連記事

金属3Dの金型で革命を ムトー精工が挑むコスト削減と新価値の創造[金型の底力]

樹脂部品の金型から成形、組み立てまでを手掛けるムトー精工は金属3Dプリンタによる金型づくりを進めている。成形サイクルを上げ、コストダウンや成形機の設備削減などを狙う。さらに、他の技術と組み合わせ、付加価値の向上にもつなげ…

「計測、CAD/CAM、CAE技術生かし、DX化を推進」Hexagon先端技術開発室・立石源治室長【この人に聞く】

Hexagon(東京都千代田、03-6275-0870)は、計測やCAE、CAD/CAM技術を生かして製造プロセスのDX化を推進する「Smart Manufacturing(スマートマニュファクチャリング)ソリューション…

この人に聞く2015 <br>製造業コンサルティング <br>O2(オーツー)松本 晋一社長

この人に聞く2015
製造業コンサルティング
O2(オーツー)松本 晋一社長

潜在する魅力引き出す 製造×サービスで価値を創造  プラスチック金型メーカーの安田製作所は今春、社名を「IBUKI」に変更した。昨年9月、同社を傘下に収めた、製造業向けのコンサルティング会社O2(東京都港区)の松本晋一社…

迫る金型の技術革新
岐阜大学 三田村一広特任教授に聞く

 「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、「百年に一度の変革期」と言われる自動車業界。金型にとってもその影響は大きく、舵取り次第では将来の成長を左右しかねない。特に、金型へのインパ…

【金型の底力】美濃工業 金型の内製化に着手

コストダウン、納期短縮図る 自動車用アルミダイカスト部品メーカーの美濃工業(岐阜県中津川市、0573-66-1025)は2021年3月、埼玉県熊谷市に「熊谷金型センター」を設立し、金型製造を開始した。20年10月には静岡…

トピックス

AD

ジーエルサイエンス 0.1μmの超薄膜コーティング「InertMask」の適用効果〈AD〉

ジーエルサイエンスでは、離型性が高い超薄膜コーティング「InertMask」の用途開発を行っている。元々、分析技術の精度向上などを目的に開発したコーティングだったが、開発品の評価... 続きを読む

関連サイト