100年に一度の変革期 どうする金型づくり エンジン、トランスミッション、カムシャフト、最近では電池やモータなど、自動車を動かすほぼ全ての内蔵部品の金型を手掛けるトヨタ自動車のパワートレーン工機部。豊田章男社長が「自動…
インターモールド2017 総集編
金型技術に新潮流
微細、5軸、IoT、自動化
東京ビッグサイトを舞台に開かれた金型加工技術展「インターモールド2017」(4月12~15日)。5軸加工や自動化、IoTなど金型の生産効率や品質を高める新たな技術が続々と登場した。金型づくりの次代を開くはどの技術だろうか。注目の技術の進化に迫る。
マイクロ流路、ライトガイド
微細加工
マシニングセンタ(MC)を出展していた企業11社のうち、8社がシングルナノレベルの面粗度を実現する微細精密加工機を出展するほど、微細精密加工は大きな流れだ。
MCはサイズや精度での違いは当然あるものの、3万回転から高いものでは9万回転という高速で加工し、鏡面性の高いシングルナノレベルの面粗度を実現する加工機が並んだ。工具はCBN(多結晶立方晶窒化ホウ素)工具や、PCD(多結晶焼結ダイヤモンド工具)で数十時間かけて仕上げるのが、主流となりつつある。
加工機以上に出展メーカーのワークサンプルを見ていくと市場性が見えてくる。多かったのが、ヘッドライトのLED化で視認性を高めるためのライトガイド用金型。医療や検査用で注目を集めるマイクロ流路。ヒアルロン酸のアンチエイジングや医療用での増加が見込まれるマイクロニードル用の型。そして、燃料電池用のセパレータ型だ。
日進工具ブース内で米山金型製作所は、マイクロニードルのマスター型を出展。CBN工具で65時間かけて先端部10㎛の突起を持つマスター型を展示した。
マイクロニードル型を手掛ける、ある関東のプラ型メーカーは「美容だけでなく、医療での活用も見込まれる」と将来の市場性を認める。
金型展で、医療検査用のマイクロ流路金型を展示したのは狭山金型製作所。ワークは溝幅・深さとも100㎛でピッチ幅が400㎛のワークに、8000番台クラスの手磨きを施したことがノウハウだという。
同社の大場総一郎氏は「マイクロ流路の市場は拡大する」とみる。従来のガラス製に比べて圧倒的に安くできること、そして使い捨てが必要なため量産が期待できるからだ。「今回受注したのは海外の仕事だったが、今後日本でも間違いなく増える」と話している。
複雑形状を高精度加工
5軸加工
ここ数年、次世代の金型加工技術として注目を集めている5軸加工。「金型メーカーに販売するマシニングセンタ(MC)のうち、10台に2~3台が5軸制御仕様」(機械商社のゴーショー)というほど、導入する企業も増えている。今回のインターモールドでは、機械の進化やCAD/CAMの充実、5軸加工向け切削工具など、5軸加工の間口を広げる展示が見られた。
牧野フライス製作所は、新型の制御装置を搭載した5軸MC「D200Z」を展示。5軸でも滑らかな動きができ、加工段差の少ない加工が可能。段差を修正するプログラム作成の必要が無くなり、工程短縮や、オペレータの違いによる加工のバラつきを抑える。また、GFマシニングソリューションズの「MIKRON」は機械の運動性能を向上させ、僅かな速度変化にも対応する高い追従性で高精度、高面品位の加工を可能にした。
さらに牧野フライス製作所では、金型加工に加え、3軸加工では難しい薄くて深いリブの電極加工も提案した。営業業務部の長友林太郎氏は、「今後、3軸加工だけでは限界がくる。ある部分は5軸で加工するなど、上手く使い分けることが必要になってくる」。
CAD/CAMでは、ヴェロソフトウェアや、オープン・マインド・テクノロジーズ・ジャパンなどが5軸加工向けの提案を披露。3軸CAMから自動で5軸CAMに変換できたり、CAM内で干渉チェックができるなど、より有効に5軸加工を使うことができる様々な機能を搭載した製品を展示した。
機械やソフトだけでなく、切削工具でも5軸加工向けの製品が登場した。三菱日立ツールが展示した異形工具シリーズ「GALLEA」は、工具側面に大きなR(アール)がついた工具や、底面が凸レンズのような工具で、5軸MCで使うと加工ピッチが大きく取れ、加工能率や面品位の向上が図れる。加飾や装飾面などの模様の加工に5軸MCを活用しているというプラスチック金型メーカーは、「複雑形状の加工や納期短縮など、5軸でしかできないことは多い。今後も活用していきたい」。
金型の付加価値向上
IoT
IoT(モノのインターネット)を活用する動きが金型業界にも広まりつつあり、金型展でも複数のメーカーが取り組みを紹介した。工場を効率的に運用するというより、温度や圧力などをセンシングし、成形条件を「見える化」することで、「ラインを止めない」、「トラブルの防止」につなげるなど、金型の価値を高める提案が多かった。
プレス金型の日進精機は、プレス機に音センサを取り付け、異常音が発生した際に即座に担当者に知らせる「金型見守りサービス」を展示。金型の価値を上げるために、サービスとして事業化する狙いだ。
鍛造型のヤマナカゴーキンは、ボルト内にピエゾセンサを取り付け、過重負荷や振動などを計測できるドイツ製品を紹介。販売も出がけるが、自社の海外の鍛造工場で活用しており、異常を検知したり、不良ストップにつなげたり、効果を上げているという。
プラスチック金型の三幸はMCにカメラを取り付け監視し、トラブル時に即座に対応できるようにした。機械のベッドなど8カ所にセンサを取り付け、温度変化の推移も記録。「今後は加工状況の記録や温度変化のデータを金型の加工に活かしたい」という。
こうしたデータ計測ができるようになったのは機器の進化も大きい。双葉電子工業は温度、圧力、樹脂温度、金型表面温度、流速など複数の条件を「見える化」できる、射出成形監視システムを展示。日本金型産業は、金型内圧力を測定できるシステムを紹介した。
センシング技術の進化について、関東の大手樹脂型メーカーは「熟練者が少なくなっており、立ち上げのサポート、教育不足などを補うために、データ管理する金型は増えるのでは」という。
日本金型工業会の牧野俊清会長は「機械同士をつなげるIoTの考え方自体は古くて新しいもの。以前は実現しなかったが、ITの進化によって可能になりつつある。金型づくりでもどう広がるのか、非常に楽しみだ」と金型でのIoT活用に期待を寄せている。
機械の稼働時間向上
自動化
金型の更なる短納期化に向けた稼働時間の向上や、熟練技能者減少への対応手段の一つとして自動化・無人化がある。今回のインターモールド2017でも、各社から様々な「自動化・無人化」が提案された。
工作機械では、牧野フライス製作所が5軸制御MC「D200Z」にワーク交換装置を繋ぎ、無人での連続加工による稼働時間を向上。三菱電機も、電極・ワーク自動交換装置を用いて外段取りによる放電加工の長時間自動運転を紹介した。加工した放電電極を3次元測定機で計測し、図面との誤差(芯ずれ等)を放電加工機に送信し、そのデータに基いて自動的に補正することも紹介した。
研削盤では、岡本工作機械製作所の全自動平面研削システム「MUJIN」は、仕上げ寸法又は取り代を入力するだけで送り速度や切り込みまで自動調整してくれる。ナガセインテグレックスも「適削」を紹介。切り込み量と標準的な加工条件を入力するだけで、研削抵抗をセンシングして最適条件に調整してくれる。
オーエスジーが紹介した切削条件算出ソフト「KC‐TOOL」は、超深彫り加工(L/D=50まで)において、CAM設定で必要な各種切削条件を算出してくれる。加工内容に合わせて条件を最適調整できる。
測定においては、ブルーム‐ノボテストの「フォームコントロール」が機上計測を自動化してくれる。取り込んだモデルデータに測定ポイントを指定すると計測パスを自動で作成。CADデータとの比較により即座に修正加工できる。また、ミツトヨは、PMI付きの3D CADモデルから全自動で測定プログラムを生成する「MiCAT Planner」を提案。最短時間で3次元測定するプログラムを短時間で生成する。
ロボットで自動化
バリ取り
バリ取りの公開討論会が開かれ、NC機でバリ取りの自動化を図るジーベックテクノロジーの赤尾友和氏やロボットで自動化を提案するアラキエンジニアリング代表の荒木弥氏などをパネラーに迎え、金型あるいは製品に対するバリ除去の自動化について討論した。
ジーベックテクノロジーは自動車ボディ用プレス金型やブロー金型などの平面や縦壁など同社の表面用ブラシを使い、手作業からNC機で用いる提案をしたほか、難しいとされる裏バリも専用カッターで除去する取り組みも紹介。荒木氏は力覚センサの発達で金型の磨きを自動化できると提案。CAD/CAMデータをロボット言語に置き換え、シミュレーションで動作確認し、ロボットで仕上げる方法だ。
ユニークなバリ取り工具や提案も見られた。双和化成はファナック製ロボットと組み合わせ、異なるバリの種類に対し、ツール交換で対応するデモを披露した。インターナショナルダイヤモンドはシャープペンのような超極細のマイクロフィニッシュを展示。
磨きにおける自動化を提案したのはトリオエンジニアリング。小型加工ロボットにラバーボンド砥石を装着し、CAMデータを用いて加工プログラムを作れば、自動で表面仕上げができる。
岐阜大と大分短大が金賞
学生金型グランプリ
金型づくりの技術を学ぶ学生が設計・製作した金型を発表する「学生金型グランプリ」(主催:日本金型工業会)が開かれ、プレス型部門で岐阜大学、プラスチック型部門で大分県立工科短期大学校がそれぞれ金賞に輝いた。
金賞の2校のほか岩手大学、近畿大学、大連工業大学(中国)の計5校が参加。主催者から課題として出された角型のトレー(プレス型)やお菓子の袋を締めるポテチクリップ(プラスチック型)の金型を披露した。
岐阜大学の学生は「解析ソフトを使ってトライアンドエラーを減らすことに注力した」、大分県立工科短期大学校の学生は「環境にやさしい金型を目指してオールアルミ金型を提案したが、市販のモールドベースがなくて一から製作したことが大変だった」と振り返った。
金型新聞 平成29年(2017年)5月12日号
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