金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JUNE

30

新聞購読のお申込み

この人に聞く
沖電線 電極線事業部 吉本雅一事業部長

 1992年室蘭工業大学卒業後、沖電線入社。2006年電極線事業部技術課課長、18年電極線事業部長、現在に至る。

 沖電線(川崎市中原区、044-766-3171)は今年5月、ワイヤ放電加工機用電極線製品を全面リニューアルした。電極線全製品の真円度を現行品の4分の1に抑え、高品質化。パッケージも一新した。電極線製品をリニューアルするのは1976年に発売開始して以来、初めて。「全製品を高品質化することで、放電加工の品質向上に貢献したい」と話す電極線事業部の吉本雅一事業部長に高品質化の理由や今後の展開などを聞いた。

電極線をリニューアル

 76年の販売開始以来、初めて電極線製品をリニューアルした。

 電極線全製品の真円度を現行品の4分の1の0・25μmまで抑え、高品質化を実現した。生産ラインを改良し、ロットごとのばらつきを抑える製造技術を確立したことで可能になった。また、ボビンの透明化や、ボビン巻き始めのワイヤ端末の固定をテープレス化するなど、使いやすさを追求し改良した。

 全製品を高品質化したことによって、製品価格も上がるのでは。

 価格は据え置きだ。確かに高品質化に伴い、設備投資や、より高度な品質管理が必要になり、コストアップしている部分もある。ただ、製造現場の努力によってコストダウンを図り、据え置き価格での提供を可能にした。全製品を高品質化することで、全てのユーザーの放電加工品質の向上に貢献したいと考えている。

ばらつき抑え、高品質化

 電極線のばらつきが低くなると、どんなメリットがあるか。

 放電加工面に生じる“スジ”が低減し加工面品質が向上する。今までは放電加工機の電源制御を調節し加工面品質を改善していたが、高品質な電極線に置き換えることによっても加工面品質の向上が期待できる。

 また、加工面品質が向上することで、放電加工後に行う磨き工程の短縮にもつながる。ある事例では、3μmだった研磨代が1~2μmまで削減できた。工程全体のコスト削減や加工時間短縮のほか、磨き工程が少なくなることで品質の安定化も図ることができる。

 どのように拡販していくか。

 当社の強みは、ユーザーの要求に対して柔軟に対応できる“サービス重視”の営業体制と考えている。放電加工に精通したセールスエンジニアと営業担当者を同行させて、ユーザーに合わせた商品説明や提案を行っていく。

 今後、放電加工はどう進化していくか。

 “速度”か“精度”を追い求めていくだろう。特に日本の金型メーカーでは、“精度”への要求が高まっている。当社としてもさらに精度アップを続け、常に進化した製品を提供していくつもりだ。今後は、面品質に加え、面粗さや寸法精度を向上させていく取り組みを進めていく。また、“速度”でいえば、当社には高速加工用ワイヤ「OS‐UZワイヤ」がある。こうした製品でも放電加工の進化に貢献したい。

 電極線事業部の今後の方向性は。

 このリニューアルにより、「OKI=高品質」というイメージを浸透させていく。精度面で業界ナンバー1を目指しシェアアップにつなげたい。2020年度には電極線事業部の売上高を30億円まで引き上げていく。

金型新聞 2020年5月14日

関連記事

金型磨きロボット開発<br>近畿大学・理工学部 原田 孝教授

金型磨きロボット開発
近畿大学・理工学部 原田 孝教授

パラレルで力制御、高速・高精度  金型を自動で磨くロボットはかねてから望まれ、機械メーカーや研究機関が開発に挑んできた。近畿大学理工学部の原田孝教授もそのひとり。昨年、パラレルリンクやDDモータにより微妙な力加減を緻密に…

【この人に聞く】ヨロズ会長・志藤昭彦氏「金型や生産設備の外販を事業の一つに」

 サスペンションやリヤビームなど自動車用プレス部品を手掛けるヨロズは2023年をめどに、プレス金型の生産能力を年1600型から2400型の1.5倍に引き上げる。生産増強に合わせて、金型を中心に生産設備の外販を始める一方、…

「ガスの知見を武器に金属AMをトータルでサポート」大陽日酸・中田竜課長[この人に聞く]

産業用ガスメーカーの大陽日酸はガスの高い知見を武器に金属AMによる金型づくりを提案している。海外製の金属AM装置販売のほか、粉末の管理、シールドガスによる水分や酸素濃度の管理、造形ノウハウまでトータルでサポートするのが特…

日本鍛圧機械工業会 長利啓正会長(コマツ産機社長)インタビュー【特集:プレス加工の未来】

電動車による部品の変化や脱炭素対応などさまざまな変化に迫られている金型業界。見てきたように、こうした変化に対応すべく、プレス金型の製造現場ではいろんな取り組みを進めている。一方で、環境変化によってプレス機のニーズは変わる…

新中期経営計画「SAIMS247」スタート【ササヤマ challenge!Next50】

自動車部品などのプレス金型を手掛けるササヤマは設立50周年を迎えた昨年度、新たな中期経営計画をスタートした。その3カ年のプロジェクトは金型製作期間を半減するなど競争力の再強化を目指す。EV化が加速するなど取り巻く経営環境…

トピックス

関連サイト