金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

25

新聞購読のお申込み

日本金型工業会 会長 小出 悟氏 (小出製作所社長)
〜鳥瞰蟻瞰〜

金型は量産の道具

理解するマスターが必要
人材発掘が経営者の仕事

 「金型は量産のための道具である」と長年言い続けています。金型というものの本質がそこにあると思うからです。お客様は金型が欲しいわけじゃない。金型を使って効率的に作った部品を求めているわけですから。

 こうした考えに至ったのは、僕が根っからの技術者じゃないからだと思います。大学卒業後、愛知県のプラスチック型メーカーで組付けなどを担当しました。わずか3年。「金型はこんな理屈でできているんだ」と分かった程度です。その後、小出製作所に入ってからは、基本ずっと営業畑。だから、技術に固執することなく、金型を客観視できると感じています。

 冒頭の考えは今後より重要になると思っています。金型に求められていることが高度化しているからです。というのも、昔はお客様に言われた通りの金型を作るだけでよかった。だから、早く削るとか、精度を出すことに執着してきたし、仕事をもらう上で、それらは重要なスキルでした。今はそれだけではダメです。「新素材を成形するのにどんな型が必要か」、「この型でどれだけ生産性が上がるのか」などと問われることが増えています。

 つまり「金型は量産の道具」という理解を深め、金型技術だけでなく、量産までマネジメントできる人材が求められているわけです。当工業会が4年前に始めた「金型マスター認定制度」はまさにそうした人づくりと目指しています。

 マスターに望む人物像ですか。言うならば、一人で海外に渡って、営業し、トラブルを解決できて、会社に利益をもたらすような人でしょうか。それをするには、金型技術だけでなく、営業スキルや生産管理まであらゆることを身に着けなくてはいけない。

 世の中の変化が激しいので、マスターが習得すべきことは増えています。その一つがIoTやAIでしょう。ロボットや自動化技術が進化する中で、これらのスキルは避けて通れません。だから、今後はマスターの教育プランに、IoTやAIのプログラムを入れていこうと考えています。

 ただ、IoTやAIは金型と同じく、あくまで道具です。だから、技術だけでなく、本質を理解する必要がある。IoTやAIを使って何をするのか。金型でどう生かし、どういう成果を出すのか。マスターには自分なりの考えを持って新しいことに挑戦して欲しいですね。

 マスターのような人材の育成には時間はかかります。だからマスター制度は継続が大事だと思っています。そして、10年後に会社や業界を支えていける人材になって欲しい。人材不足を嘆く声は多い。けれど、各社にマスターになれる人材は必ずいるはずです。経営者はこうした人材を発掘し、育成することも重要な仕事だと思います。

金型新聞 2020年5月14日

関連記事

「金型台帳」を データベース化
打田製作所

 「金型メーカーが情報管理をするのは、自社の知的財産を守るためと顧客情報を守るための2つの意味で重要だ」と話すのは、飲料や化粧品などのプラスチック金型を手掛ける打田製作所の打田尚道社長。同社は15年ほど前に社内で情報シス…

【新春特別インタビュー⑦】大貫工業所社長・大貫 啓人氏「売れるものをつくり、境地まで突き詰めることが大事」

売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜  1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金…

【インタビュー】名古屋精密金型 ・坂元 正孝社長「工場間の連携強化へ 」

プラスチック金型を手掛ける名古屋精密金型(愛知県知多郡東浦町、0562-84-7600)は7月、坂元正孝氏が社長に就任した。同社の工場は本社、熊本、宮崎とベトナム、インドネシアの5工場で金型を製作している。金型業界を取り…

進化する金型のスマート化

 ITやセンシング技術を駆使した「金型のスマート化」が進んでいる。温度や圧力など様々なセンサを金型に取り付け、インターネットに接続することで、金型の状態がいつでもどこでも把握できるようになるほか、取得したこれらのデータを…

新日本工機・中西 章社長「ものづくり力向上を支援」

「30年間お客様とものづくりを改善し続けられる存在でありたい」—。そう話すのは一昨年に新日本工機の社長に就任した中西章氏。ライフサイクルの長い大型機械が強みなだけに、「長期間にわたって、顧客のものづくりをサポートするのは…

関連サイト