金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

SEPTEMBER

04

新聞購読のお申込み

2018ものづくり白書
現場力向上、新たな価値創出

IoT技術の活用不可欠

 政府は5月29日、2018年版の「ものづくり白書」を閣議決定した。デジタルに長けた質的な人材不足や、変化しなければこれまでの強みが足かせになる可能性など4つのおそれを示し、危機感を訴えた。一方で、これらの課題を乗り越えるために、あらゆるものがネットにつながるIoT技術を活用し、「強い現場力の維持・向上」、「付加価値の創出・最大化」が必要だとした。こうした課題に対し、金型業界では、金型マスター認定制度による現場人材の育成や、IoT技術を活用した金型づくりなど、先行して取り組みを始めている。

 ものづくり白書は経済産業省など3省が分担して執筆しているが、今年は初めて共同で「総論」を掲載。好調に推移する景気に惑わされることなく、今の製造業にある課題を指摘した。

 まず強調したのが4つのおそれだ。人材の量的不足だけでなく、IoTや人工知能(AI)など新技術が登場しているなかで、質的にも対応できていない可能性があると指摘。2つ目は、変化しなければ、すり合わせなど従来の強みが足かせになるおそれもあるとした。さらに、「変革期のインパクトを経営者が認識できていない」、「非連続な変革が必要であることに経営者が認識できていないおそれがある」と分析し、経営者に強い危機感を訴えた。

 こうした課題への対応策として、IoT技術をはじめデジタルツールをうまく活用することで、「現場力の維持・向上、デジタル人材の育成」、環境変化に対応した付加価値の創出・最大化」が必要だとした。

金型マスター制度など先行取り組みも

 金型業界では、今回の白書にある課題に対し、先行して取り組みを始めている。現場力の向上については、工場長クラスの人材育成を目的に、日本金型工業会が「金型マスター認定制度」を開始した。マスターだけにとどまらず、技術版のMBA(経営学修士)であるMOTの取得を促す金型メーカーもある。また、改めて汎用機を導入し、若手に対し、体系的に金型づくりを教育する動きも出始めている。

 ITの活用でも積極的だ。ユーザーや大学などと共同で、金型にセンサを取り付けて稼働状況を「見える化」する金型メーカーも複数出てきている。すでに一部では、可視化の段階を超え、AIを活用しようとする動きもある。成形条件の見える化を進める企業の社長は「金型メーカーも精度や納期だけを売りにする時代ではない。従来の延長線上ではない、価値を生み出したかった」と話す。

 こうした価値の創出は4年前に策定した新金型産業ビジョンでも「品質と価格ではない新たな軸が必要」と言及している。とはいえ、今回の白書にあるように、時代への変化が激しい今、こうした改革への取り組みをさらに加速させる必要がある。

金型新聞 平成30年(2018年)6月8日号

関連記事

【特集】金型企業年金新制度へ 3氏に聞く、新制度の背景とメリット〜「経営」と「社員の人生」支える仕組み〜

【特集】金型企業年金新制度へ 3氏に聞く、新制度の背景とメリット〜「経営」と「社員の人生」支える仕組み〜

掛け金率選択制に 税控除など利点大きく 社員の第2の人生豊かに 日本金型工業厚生年金基金は昨年11月2日、いったん解散し「日本金型工業企業年金基金」として生まれ変わった。高い予定利率などの旧制度の課題を解決するとともに、…

金型経営者アンケート 次の10年を勝ち残るために取り組むこととは?【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

自動車の電動化などによる金型需要の変化、少子高齢化による人手不足、アディティブ・マニファクチャリング(AM=付加製造)を始めとした新たな製造技術や技術革新―。金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型…

型技術協会 型技術者会議2021、6月17・18日に

型技術協会 型技術者会議2021、6月17・18日に

金型の最新技術を講演 型技術協会(白瀬敬一会長、神戸大学)は6月17、18日の2日間、大田産業プラザPIO(東京都大田区)で「型技術者会議2021」を開催する。金型に関連する技術講演や自動車メーカーなどによる特別講演が開…

愛知溶業 金型に優しい溶接修理【金型応援隊】

金型溶接補修を手掛ける愛知溶業は『金型に優しい溶接修理施工』をテーマに、溶接~機械加工の一気通貫体制で、品質向上と短納期化を図る。 創業は2005年と若い会社だ。市川修社長は「TIG溶接機2台を購入し、タウンページ片手に…

【金型の底力】明石プラスチック工業 外販&メンテ市場へ、金型の技術力強化に

外販&メンテ市場へ金型の技術力強化に  「以前から外販を求める声はあったが、初めて熱硬化性樹脂金型の外販を始めた」と話すのは、明石プラスチック工業の生水口高志社長。特長である熱可塑性と熱硬化性両方の金型製作ができ…

トピックス

関連サイト