金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

02

新聞購読のお申込み

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -取引適正化-

PART4 日本金型工業会 専務理事・中里栄氏に聞く「取引適正化」

取引ガイドラインを改定
 イコールパートナーに
  ユーザーの意識にも変化

現在、春先に公表予定の「金型取引ガイドライン」の改定版の策定に取り組んでいます。十数年ぶりになりますが、このタイミングで改定するのは、当時と比べ、今は大きく環境が変わろうとしている時だからです。

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)に象徴されるように、フェアトレードを推進する動きが加速しています。今やSDGsを意識しない企業はなく、「自社さえ良ければいい」という考え方が減り、取引環境の改善を訴える好機ともいえます。

今回のガイドラインは、こうした社会的背景を反映させたものにする予定です。前回は下請取引支払遅延等防止法(下請法)をベースに「同法に抵触の恐れがあります」という法律を意識した文言が多くありました。今回は金型業界も製造業の重要なサプライチェーンの一員であり、それを強固にするため、一緒に取り組む「イコールパートナーになりましょう」とスタンスで提案したいと思っています。

目指すべきイメージは「正しい金型の発注マニュアル」的なもので、次のようなことを盛り込みたいと考えています。一つは過度な寸法精度の提示の是正です。会員企業からは「不要と思われるほどの精度の提示を求められることがある」という話をよく聞きます。これの是正を促すことは金型メーカーが大変だからということだけではありません。「過度な」品質はコストアップや長い納期にもつながり、ユーザーにとってもマイナスになります。

他にも、図面提出の問題は継続して提示する予定です。「図面は渡したくない」ことが基本です。金型図面はノウハウの塊で、時には金型以上の価値があるからです。もし図面を売らなくてはならない場合「金型本体と同等か、それ以上の費用」を頂けるケースをお伝えしたいと思います。

回収についても言及する予定で、三分割の前金制度を訴えていきたいと思います。世界の取引では、契約時、着手時、納品時にそれぞれ3分の1の支払いが主流です。造船や建築など「一品モノ」の世界も同様の取引が普通です。これを金型でも一般化できるようにしていきたいと思います。

SDGsやカーボンニュートラル、サイバーセキュリティーなど昨今のトレンドを見ていると、個社や一業界だけで取り組むのが難しい問題ばかりです。ユーザーもそれを認識し始めていると思います。ガイドラインの改定が製造業全体がイコールパートナーなって、サプライチェーンを強化する契機になればいいと考えています。

個人的にはユーザーの意識の変化も感じています。発注者側(特にコミュニケーション能力に長けた担当者)から「一方通行的な取引は今の世の中では通用しない」、「フェアトレードな意識でコミュニケーション方法を変えないとものづくりが上手く回らない」という声も聞こえています。

新たなガイドラインによって、さらにこうした意識の変化をユーザー業界に促していきたいと思っています。また、自動車や電機などユーザー業界に広く周知することで、先に述べた施策を実行してもらえるよう働きかけていきます。

※特集のトップページはこちらから

金型新聞 2022年1月10日

関連記事

精密、高精度 ニーズに応える型材・部品特集

 超精密、高精度、短納期、長寿命化—。こうした高度化する金型へのニーズに対応するには、あらゆる加工技術や素材技術が必要だ。中でも、鏡面性が得られるのか、離型性が高いのか、長寿命化が図れるのかなど、金型の本質的な機能に直結…

リーダーの条件Part3
いま活躍するリーダーの心得

 新型コロナで需要が減速し、自動車の電動化で産業構造が変わるかもしれない。先の見通しにくい混沌とする時代に、リーダーはどういったことを心掛け、自らの指針としているのか。時代をリードに考えを聞いた。 伊藤製作所 伊藤 澄夫…

2年に1度の専門展「2022日本ダイカスト展示会」開幕 見どころをピックアップ

ダイカスト関連技術が一堂に会する「2022日本ダイカスト会議・展示会(j-dec2022)」が11月10日から12日までの3日間、パシフィコ横浜(横浜市西区)で開催される。主催は日本ダイカスト協会。展示会にはダイカストマ…

前澤金型と福井県工業技術センターは金属AMを活用してどんな金型を開発したのか

金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…

金型メーカー座談会
経営者5人が語る、どうなる2015年

活路を創造、混沌に挑む  日本の金型業界にも少しずつ明るさが戻ってきた。とはいえ、受注水準はいまだリーマンショック前の8割程度だ。そんななか、日本金型工業会は「新金型産業ビジョン」を策定した。そこでは、金型業界の向かうべ…

関連サイト