金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

25

新聞購読のお申込み

IT、汎用機、資格の取得 技能者の育成、新時代
~匠の技 機械や工具で~

 最適な金型の構造を考えたり、納期短縮やコスト削減の手法を生み出したりできる技能者の育成がこれまで以上に重要になっている。従業員の減少や分業化で金型を総合的に理解する人が減っているためだ。金型づくりで差別化できる工程が金型構想や設計、組付け、仕上げなど人による部分がより大きくなっていることもある。こうした中、金型メーカー各社ではスマートフォン(スマホ)などのデジタルツールやシミュレーションソフトを活用したり、汎用機を使ったり、外部資格の取得を推奨したりするなどして、技能者の育成を図っている。

中核人材には指導力も

 「設計と組付け、仕上げを重点的に強化する」。ある金型メーカー社長はそう言い切る。「機械の進化やAIの登場で、組付けなど人でしかできない部分に価値が生まれる可能性が高い」からだ。別の金型メーカー社長も「設備も重要だが、型構造や生産技術を知り尽くす技能者の有無が競争力の源泉になる」と話すなど、技能者の育成はこれまで以上に重要になっている。

 とはいえ「体系的な教育は難しく、どうしても現場で教えるOJT(オンザジョブトレーニング)が主流になる」という声も多い。そんな中で、各社工夫を凝らしながら、技能者を育成している。

 近年はIT技術を活かすメーカーも多い。あるプラスチック金型メーカーではスマートフォンやカメラで磨き職人や熟練技能者の動作を撮影。「なぜここを磨いたのか」、「その際に気を付けること」などをメモにして添付し、遠隔の工場の人材育成や、マニュアル作成に役立てている。

 解析ソフトを育成に活かす企業も。あるプレス型メーカーでは、成形品とシミュレーション結果を比較し、「なぜ想定と異なる結果が出たのか」などを若い技術者に考えさせるそう。「熟練者は答えを知っているが、考えさせることが重要」と社長は言う。

 IT活用の一方、汎用機を使って技能者を育成するメーカーもある。その目的について、社長は「技能者に必要な音やにおいなど、違いを見つける能力は自らの手で加工しないと身につかない」という。汎用機のスキルはNC加工の技術を高めるのにも役立つ。汎用機を学んだばかり技術者は「汎用機は手順を考慮しないと加工できないこともある。今ならもっと効率よくNC機も使えると思う」と話す。社長も「機械性能を極限まで引き出すには機械の基礎を知ることが必要」という。

 大学などの外部機関を使う企業もある。自らも技術のMBA(経営学修士)と言われるMOT(技術経営修士)を持つ経営者は社員にも取得を薦めている。「技能を活かすマネジメント力もこれからは必要になる」との考えがあるからだ。

 昨年開始した日本金型工業会の「金型マスター認定制度」も同じ視点だ。同工業会の小出悟会長もマスター制度について「腕が良いだけでは良い人材とは言えなくなっている。中核を担う人材にはマーケティングやマネジメントといった能力が求められる」。

 いつの時代も人材育成の重要性は指摘されてきたが、小出会長はこう警鐘を鳴らす。「自動車業界など外部環境の変化に対応できても、人手不足によって内部から産業が瓦解しかねない」。技能者の育成は待ったなしだ。

金型新聞 平成30年(2018年)9月10日号

関連記事

金型メーカー座談会 若手経営者が語る<br>ー業界の魅力高めるためには 第三部ー

金型メーカー座談会 若手経営者が語る
ー業界の魅力高めるためには 第三部ー

人材育成の要諦 デジタルとアナログを融合 金型メーカー座談会 若手経営者が語るー業界の魅力高めるためには 第二部ー 最終回となる今回のテーマは「連携」と「人材育成」。戦略云々よりも、経営者同士の感性や考え方が合った連携の…

高精度、省人化ニーズが高まる国内市場で注力すること 田代勝氏(三菱電機 産業メカトロニクス事業部長)【この人に聞く】

三菱電機は50年以上に渡って、高精度、高性能な放電加工機を開発し、付加価値の高い金型づくりに貢献してきた。近年では省人化ニーズへの対応に注力する他、金属3Dプリンタを開発するなど技術領域を広げている。同社は今後、金型業界…

メキシコ視察ツアー 締め切り12月末<br>日通旅行

メキシコ視察ツアー 締め切り12月末
日通旅行

金型や車メーカー巡る  日通旅行(神戸市中央区)は2020年2月11日㈫~15日㈯の5日間、メキシコの金型や自動車・部品メーカーなどを視察するメキシコ視察旅行を企画、締め切りが今月末に迫っている。  メキシコは日本や米国…

リョービがギガキャストに参入

6000t級のダイカストマシン導入 リョービはこのほど、ダイカスト専業メーカーとしては日本で初めて、6000tクラスのダイカストマシンの導入し、「ギガキャスト」に参入すると発表した。2025年3月から試作サービスを開始す…

成形不良を出さない生産システムの確立
岐阜大学 王志剛副学長に聞く、スマート金型開発の行方

 岐阜大学が2018年に3カ年の研究開発である「スマート金型開発拠点事業」を始めた。労働人口減少時代を想定し、従来にはない高効率な生産システムの確立を目指し、金型を使った量産システムの不良率ゼロを目標に掲げる。同事業は文…

トピックス

AD

FARO スキャンしたらすぐに結果まで:工数低減を実現

金型のメンテナンス、修復、複製に3次元測定アームを活用 製品を製造するために欠かせない金型ですが、そのメンテナンスには多くの課題が存在します。金型は使用するうちに摩耗し、時... 続きを読む

関連サイト