金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

17

新聞購読のお申込み

この人に聞く
東京鋲螺工機 高味寿光社長

964年生まれ、京都府出身。89年京都大学法学部卒業後、住友金属工業入社。2001年同社退社後、カルチュア・コンビニエンス・クラブに入社、06年同社退社後、スタッフサービス・インベストメント入社、同年10月東京鋲螺工機社長に就任。

国際競争に負けない型づくり

 冷間鍛造金型メーカーの東京鋲螺工機(埼玉県新座市、048・478・5081)はこの10年間で、売上規模を倍増させた。リーマンショック後の急激な落ち込みから、超硬合金の直彫り加工技術の開発や顧客の拡大、海外進出などに取り組み、ここまで成長した。「今後も国際競争に負けない金型づくりを続けていく」と話す高味寿光社長に成長の要因や現在の取り組み、今後の方向性などを聞いた。

 新社屋になってから10年が経った。

 当時はリーマンショック後でどん底だった。主要顧客であった小ネジメーカーの生産量は激減し、今も廃業が続いている。そこから立て直し、80社程度だった顧客数も3倍近くまで増加した。その要因の一つが需要先の変化だ。かつては弱電関連が大半を占めていたが、現在は自動車関連がほとんど。

 2015年に開設したタイ工場の状況は。

 立ち上げから数年は厳しい時期が続いたが、地道な営業活動の結果、数社だった顧客は十数社まで広がった。技術面でも加工精度は5μmを実現し、生産能力は月産100個ほど。標準的な金型であれば、日本と遜色ないレベルで製造できるようになった。

 超硬合金の直彫り加工にも注力してきた。

 これも成長できた要因の一つだ。直彫り加工は電極製作や磨き工程を削減できるため、放電加工に比べ加工時間を大幅に短縮でき、生産性が向上する。現在の国内の生産能力は月1000~1500個と10年前の2倍になった。ただ、加工の割合は放電加工がまだ半分ほどを占めており、深物や複雑形状など加工範囲の拡大が直彫り加工の今後の課題だ。

 現在取り組んでいることは。

 自動化だ。今後、労働人口が減少し人材不足の深刻化が予測される中、少ない人員でいかに生産力を維持できるかが課題だと考えている。将来的には現在の半分の人員でも同じ生産量をキープできるような生産体制を構築したい。

 具体的には。

 直彫り加工による自動化に加え、放電加工の自動化も進める。タイ工場では電極やワークの自動交換システムへの投資を予定している。3年以内に本格的な運用を目指し、上手くいけば国内工場にも展開するつもりだ。

 冷間鍛造金型の未来は。

 自動車が電動化や軽量化しており、当社としてはチャンスだと捉えている。電動化で電動部品が増えれば、当社が得意な電気接点の金型の需要も拡大する。また、軽量化のためにボルトを小型化するため、5㎜以下の小径が得意な当社にとっては顧客の拡大が狙える。こうした需要拡大に備えるためにも生産性のさらなる向上は不可欠だ。

 今後の海外展開は。

 タイだけでなくその他のASEAN諸国、インドにも営業拠点を設ける考えだ。当社の強みである超硬合金の加工技術力と品質の高さで、今後も国際競争に負けない金型づくりを続けていく。

金型新聞 2019年4月10日

関連記事

テラスレーザー 業務 広報チーム・稲葉  えいさん
女性技術者の魅力を発信する

レーザー溶接・金型補修機器メーカーのテラスレーザー(静岡県駿河区)に入社したのは2年前。企業の販路開拓支援などに携わっていた前職時代、製造業とも多く関わる中で「世の中は製造業がなければ成立しないということを肌で感じ、自分…

【鳥瞰蟻瞰】ニットー ・藤澤秀行社長 一般の人に広く知ってもらうこと必要

自社の強みを発信 広く知ってもらうことが、会社の成長につながる 「自動車や電機メーカーなどの企業(法人)がお客さんなのだから、自分たちの仕事を一般の人に知ってもらう必要はない」。私もこの会社に入社した当時はそう思っていま…

ササヤマ 笹山勝社長に聞く コア業務に専念できる環境に【特集 攻める設備投資】

自動車のシートや骨格部品などのプレス金型を手掛けるササヤマは金型の競争力を高めるため、金型づくりのDXとベトナム子会社のデータ製作力の強化に取り組む。デジタル技術で金型づくりを効率化し、ベトナム子会社を同社グループのデー…

元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…

粉末冶金・プラ型メーカーを買収 F&Cホールディングス 藤巻秀平社長【この人に聞く】

プラットフォーマー目指す 鋼材商社の藤巻鋼材を中核とするF&Cホールディングス(名古屋市東区、052・972・611)は今年4月、粉末冶金や樹脂金型を手掛ける山崎TECH(大阪府枚方市)を買収した。さまざまな加工メーカー…

トピックス

関連サイト