金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

13

新聞購読のお申込み

この人に聞く
東京鋲螺工機 高味寿光社長

964年生まれ、京都府出身。89年京都大学法学部卒業後、住友金属工業入社。2001年同社退社後、カルチュア・コンビニエンス・クラブに入社、06年同社退社後、スタッフサービス・インベストメント入社、同年10月東京鋲螺工機社長に就任。

国際競争に負けない型づくり

 冷間鍛造金型メーカーの東京鋲螺工機(埼玉県新座市、048・478・5081)はこの10年間で、売上規模を倍増させた。リーマンショック後の急激な落ち込みから、超硬合金の直彫り加工技術の開発や顧客の拡大、海外進出などに取り組み、ここまで成長した。「今後も国際競争に負けない金型づくりを続けていく」と話す高味寿光社長に成長の要因や現在の取り組み、今後の方向性などを聞いた。

 新社屋になってから10年が経った。

 当時はリーマンショック後でどん底だった。主要顧客であった小ネジメーカーの生産量は激減し、今も廃業が続いている。そこから立て直し、80社程度だった顧客数も3倍近くまで増加した。その要因の一つが需要先の変化だ。かつては弱電関連が大半を占めていたが、現在は自動車関連がほとんど。

 2015年に開設したタイ工場の状況は。

 立ち上げから数年は厳しい時期が続いたが、地道な営業活動の結果、数社だった顧客は十数社まで広がった。技術面でも加工精度は5μmを実現し、生産能力は月産100個ほど。標準的な金型であれば、日本と遜色ないレベルで製造できるようになった。

 超硬合金の直彫り加工にも注力してきた。

 これも成長できた要因の一つだ。直彫り加工は電極製作や磨き工程を削減できるため、放電加工に比べ加工時間を大幅に短縮でき、生産性が向上する。現在の国内の生産能力は月1000~1500個と10年前の2倍になった。ただ、加工の割合は放電加工がまだ半分ほどを占めており、深物や複雑形状など加工範囲の拡大が直彫り加工の今後の課題だ。

 現在取り組んでいることは。

 自動化だ。今後、労働人口が減少し人材不足の深刻化が予測される中、少ない人員でいかに生産力を維持できるかが課題だと考えている。将来的には現在の半分の人員でも同じ生産量をキープできるような生産体制を構築したい。

 具体的には。

 直彫り加工による自動化に加え、放電加工の自動化も進める。タイ工場では電極やワークの自動交換システムへの投資を予定している。3年以内に本格的な運用を目指し、上手くいけば国内工場にも展開するつもりだ。

 冷間鍛造金型の未来は。

 自動車が電動化や軽量化しており、当社としてはチャンスだと捉えている。電動化で電動部品が増えれば、当社が得意な電気接点の金型の需要も拡大する。また、軽量化のためにボルトを小型化するため、5㎜以下の小径が得意な当社にとっては顧客の拡大が狙える。こうした需要拡大に備えるためにも生産性のさらなる向上は不可欠だ。

 今後の海外展開は。

 タイだけでなくその他のASEAN諸国、インドにも営業拠点を設ける考えだ。当社の強みである超硬合金の加工技術力と品質の高さで、今後も国際競争に負けない金型づくりを続けていく。

金型新聞 2019年4月10日

関連記事

【ひと】明工精機代表取締役・北原収さん リーマン後に加工メーカーを立ち上げた

リーマン後に加工メーカーを立ち上げた  「日本一の賃加工屋を目指す」。リーマンショック後の2009年、世界的な不況の真っただ中に部品加工メーカーから独立。ダイセットやモールドベースなどを手掛ける明工精機を設立した。金融機…

「計測、CAD/CAM、CAE技術生かし、DX化を推進」Hexagon先端技術開発室・立石源治室長【この人に聞く】

Hexagon(東京都千代田、03-6275-0870)は、計測やCAE、CAD/CAM技術を生かして製造プロセスのDX化を推進する「Smart Manufacturing(スマートマニュファクチャリング)ソリューション…

首藤公徳さん 金型組立で現代の名工に選ばれた【ひと】

三井ハイテック モータ金型技術部 モータ金型組立グループ 特任技師 首藤公徳さん(62) 電気自動車や家電に不可欠なモーター。そのコアは鉄の板を打ち抜き、作られる。精密で複雑な形状のコアはパンチやダイが絶妙なクリアランス…

サンワ金型 量試一貫のサポート体制構築【金型の底力】

シェアリングで新たなモノづくりを プレス金型やプラスチック金型などを手掛けるサンワ金型は同じく安城市内に新工場を建設し、11月に稼働する予定だ。同社はプレスやプラスチック金型で培った高硬度材加工や3次元形状加工を強みに、…

「新規事業に挑戦、やってみなければ分からない」藤井精工社長・藤井福吉氏

会社の未来を考え新規事業に挑戦やってみなければ分からない 金型メーカーに生産計画はありません。受注産業で顧客次第ですから。「来月どうしようか」。これを毎月のように繰り返しています。当社も創業から46年間、同じように事業を…

トピックス

関連サイト