金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

30

新聞購読のお申込み

新しい価値の金型を
キヤノンモールド 斎藤憲久社長に聞く

 キヤノンモールドが発足したのが2007年。前身のイガリモールドとキヤノンの金型部門で伝承されてきた技能や最新技術など互いの得意分野の融合を図ってきた。「新しい価値を生み出す金型メーカーを目指したい」と語る、昨年4月に同社の社長に就いた斎藤憲久氏に、現状や目指すべき方向などを聞いた。

友部と阿見の長所を融合
(旧イガリモールドの匠の技能)×(旧内制部門の自動化など先端技術)

 1980年キヤノン入社、01年生産技術研究所 機械加工研究部長、07年生産設計技術センター 生産設計部品技術部長、11年生産設計技術センター所長、16年成形技術開発センター所長、生産技術本部副本部長、18年キヤノンモールド代表取締役社長。

発足から12年、就任から1年経過しました。まず概要を教えてください。

 茨城県に2つの事業所があり、友部事業所が旧イガリモールドで、医療機器、自動車部品から日用品まで幅広いプラスチック金型を製造している。また、阿見事業所がキヤノンの旧内製部門であり、主に事務機やカメラの精密部品など高精度なプラスチック金型を手掛けている。それぞれの長所の融合を今後も加速させる。

それぞれの長所とは?

 友部は旧イガリモールドの文化を色濃く受け継いでおり、金型を一つひとつ丁寧に人の手でつくり上げるというこだわりが強い。キヤノンには優れた技能者を「名匠」とする認定制度があり、全国で30人ほどのうち当社には8人の名匠がいる。うち2人は国が定める「現代の名工」に選ばれ、「黄綬褒章」も受章した。匠の技をしっかり継承するため、人材育成の「道場」を友部に設けている。
一方、阿見はキヤノンの自動化や3D一貫システムなどの先端技術を取り入れており、生産技術力が高い。

匠の技能と、最新技術の融合を進めるのですね?

 そうだ。ただ、根底にあるのは、金型は品質が全てということ。金型品質はどこにも負けない自信がある。そしてその品質を生み出す技術力を持ってお客様に「信頼と安心」を届ける。これが当社の基本方針。それを強化するために、今後も友部と阿見の長所を融合していく。そして、お客様からの難しい課題にも果敢に挑戦し、新しい価値を生み出す「金型メーカー」を目指す。

新しい価値とは?

 新しい技術に挑戦し、高付加価値の金型を提供すること。例えば、20年以上前から取り組んでいるダイスライドインジェクション金型を進化させ、型内組立の領域を拡大できれば後工程の作業をさらに省力化できる。そうなると金型は単なる成形品を作るだけの道具でなくなる。こうした技術に取り組み新しい金型の価値を生み出していきたい。

今後の方向性は?

 高付加価値化の一方、コストダウンにも挑戦しなければいけない。自動化を含め徹底した原価低減を進めていく。また、グローバル対応も必要だ。キヤノンのネットワークを活用し、海外展開にも着手していく。さらなる金型事業拡大に向け、現在、友部にある6カ所の工場を集約・刷新し、新工場を建設する計画を進めている。

金型しんぶん 2019年6月7日

関連記事

鋳造に独自の新工法
マツダ

特集 次世代車で変わる駆動部品の金型鋳造に独自の新工法  次世代自動車の技術は電動化に限らない。注目されるのがエンジンの進化だ。燃費性能を追求する新型エンジン「スカイアクティブ」。多くの自動車メーカーが電動化に力を入れる…

【金型応援隊】ミサト技研 熟練した技術と知見による磨き

高品質な鏡面磨き ミサト技研はプラスチック金型やダイカスト金型、機械部品などの鏡面磨きを手掛けている。「納期に遅れず、顧客が希望する品質に応えることができる」(牧野聖司社長)と強調するように、熟練した技術と知見による高品…

久野金属工業 取締役副社長 久野 功雄氏 〜鳥瞰蟻瞰〜

我が社しか実現できないモノを 少し高くても選んで頂けるそれがブランド力         従来のお客様と金型メーカーには阿吽の呼吸のようにお互いを必要とする関係があり、スムーズに仕事を進める上で大切です。ですが、…

「金型業界で働く女性の声や悩みにも耳を傾けて」名古屋精密金型営業部部長・渡邊祐子氏

インターモールド大阪では4月20日、女性雇用のメリットや現場の男女共同参画などを討論する特別イベントが開かれる。労働人口減少により製造業は女性の活躍が課題で、金型業界も働き方改革など取組みが始まっている。日本金型工業会で…

横田悦二郎氏

【プレス型特集】強みを維持し続けるには…
日本金型工業会 学術顧問 横田 悦二郎氏に聞く
プレス金型の強みと未来

ゼロベースで知恵絞る 得意な分野で連携を 顧客の生産技術をサポート  日本金型工業会の学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は、日本のプレス金型の強みを「他の型種に比べ、技術の蓄積が生かせる部分が大きい」と…

トピックス

関連サイト