新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…
金型にも「情報管理」の波
「技術等情報の管理認証制度」設立
IoT化やグローバル化などによって、情報流出のリスクが高まる昨今、製造業には技術などの情報の適切な管理が求められている。金型業界も例外ではなく、「顧客情報がしっかり管理、保護できているかが企業の評価につながる」(打田製作所の打田尚道社長)。情報管理体制の構築は不可欠な要素になりつつある。日本金型工業会では、政府が昨年9月に設立した「技術等情報の管理に係る認証制度」の認証機関として認証業務を行うための動きを進めている。ここでは、同制度の特徴や利点などのほか、すでに情報管理への取り組みを進めている打田製作所(東京都江東区)の事例を紹介する。
国の認証機関チェック
「技術等情報の管理に係る認証制度」は、企業が持つ技術などの情報を国が示した認証基準に沿って管理できているかを認証する制度。「技術等情報」には図面や顧客情報、製造工程情報、金型などが含まれている。認証業務は国が認定した機関によって行われる。

「幅広い企業が活用できるように制度には柔軟性を持たせた」(経済産業省製造産業局の府川秀樹氏)。認証基準は管理者の専任や教育、情報の取り扱い、セキュリティ、保管場所など200~300項目に及ぶが、データや紙、製品など情報の種類や業界などによって項目を選択できる。
認証は2段階から選択可能。一つは自己宣言型。チェックシートに基づいて自己チェックを行い、監査の知見を有する者などにより適切に監査が行われていると認められれば認証を受けることができる。もう一つは認証機関が現地で調査し、基準を満せば認証を受けることができるというもの。「段階的に進められるため、自分たちの身の丈にあったところから始められる」(府川氏)。
企業は同制度を活用することで、情報管理の手法や体制を確立しやすくなる。加えて、顧客への信頼感の獲得や、「守るべき技術、情報がある企業」という証明にもつながる。今後、認証企業のホームページへの掲載やロゴマークの策定などを検討しており、認証企業が同制度の効果をより享受できる施策を展開していく予定だ。
制度活用の動き
金型業界では、いち早く活用に向けて動き始めている。日本金型工業会は6月7日の通常総会で、同制度の認証機関として認証業務を実施することを議案にあげる。すでにワーキンググループを組織し、前述の200~300項目の中から業界に合った管理項目を定めて準備を進めている。ワーキンググループのあるメンバーは、「この制度をきっかけに金型業界でも情報管理の意識が高まるだろう」。
金型しんぶん 2019年6月7日
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