生産現場を訪ねて三豊機工 鹿児島工場(南九州) 5台のAIV(Autonomous Intelligent Vehicle)が10棟の工場を跨いで縦横無尽に運行する金型工場。冷間圧造用金型を材料から製品まで一貫生産…
高濃度セルロースファイバー
パナソニック
材料と成形方法を確立 
新素材で成形したワーク

パナソニックマニファクチャリングイノベーション本部はセルロースファイバーを55%以上の高濃度で樹脂に混ぜ込む複合技術と、その成形技術を確立した。素材の軽量化やプラスチックの削減、木目調の自然な外観などの利点を生かし、アサヒビールと共同でビール用カップ(写真)も開発した。強度や色彩など素材の特性をさらに高め、パナソニックの家電製品などへの採用を広げる考えだ。
一般的にセルロースナノファイバーはパルプ繊維をほぐすのに水を使用し、再乾燥させるため多くの二酸化炭素を排出する。同社では水を使わず、溶けた樹脂内で繊維をほぐし、二酸化炭素の排出も少なくて済む「全乾式プロセス」を開発した。このプロセスで製造した素材は「セルロースファイバーは直径10~20μmのものが多く、一部にナノサイズのものも含むことが特長」(マニュファクチャリングソリューションセンターの大熊崇文課長)だ。
18年には、この素材を柄の部分に採用したクリーナも発売し、従来比で1割以上の軽量化に成功した。今回はこの時よりも高い55%以上の濃度で樹脂に混ぜ込む複合技術を開発した。高い濃度ながら、白色の材料の生成を可能にし、着色の自由度も増したという。「ここまで高い濃度のものはあまりない」(大熊氏)という。
合わせて、高濃度な素材を成形する加工技術も確立。「金型、成形ともに様々なノウハウが盛り込まれている」(成形技術開発センター峯英生課長代理)ため、詳細は明らかにできないが「流動性や金型の温度管理、ガス抜きなど様々な工夫を凝らしている」(峯氏)という。
アサヒビールとカップ開発
今夏には、この55%以上の高濃度なセルロースファイバーを使ったビール用カップをアサヒビールと共同で開発した。従来のポリプロピレン(PP)を使ったカップに比べ、大幅にプラスチックの使用量削減につながった。着色剤がなくても、自然な木目調の外観や、色合いをランダムに変えて成形もできるという。
今後について、峯氏は「素材の特性を高めるとともに、独特の色合いを出したり、色むらの再現性を高めたりしていく。まずは家電製品を中心にパナソニックの製品群に提供していくが、アサヒビールのようなパートナーとも手を組み、採用を拡げていきたい」としている。
金型しんぶん 2019年12月10日
関連記事
ヤマシタワークスはこのほど、薬品などの錠剤を錆びずに打錠できる「ハイブリッド打錠用杵」で、発明協会の「発明奨励賞」を受賞した。同賞は科学技術の発展と産業振興に貢献した製品や技術に贈られる賞。 受賞した製品は同社の鏡面磨き…
形彫放電は特定の高度な金型では不可欠な加工技術。最終工程に近いため、ミスができず、工程の負荷が高くなることある。加えて、電極消耗を考慮する必要があるため、加工条件の設定など、職人技術が求められることが多い。本特集では、こ…
高精度・超高速加工 サンエールは、世界初の3層亜鉛構造を採用し、高精度・超高速加工を実現する放電加工ワイヤ「SPW+ε(イプシロン)」を3月から発売する。 真鍮を芯線としε—γ—βの3層からなる非常に厚い高濃度亜鉛層を有…
成形効率や品質向上を提案 非鉄金属や銅などを扱う専門商社の白銅(東京都千代田区、03-6212-2811)が金型向け銅合金の拡販に注力している。昨年からマテリオン社(米)の銅合金「モールドマックスHH」を国内で唯一在庫…