金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉…
-混沌の時代を切り拓く- 金型メーカーの連携
金型広がる協力の輪
金型メーカー同士や異業種、加工技術などを軸とした様々な形での連携や協業の重要性が高まっている。ユーザーの海外展開に伴うサポートや需要開拓、技術の複合化や高度化などによって、金型メーカー単独では顧客の要望に応えきれないことが増えているためだ。こうした要望に応えるため、金型メーカー同士で連携したり、異業種でネットワークを構築したり、業界団体を立ち上げたりするなど、様々な形で連携が進んでいる。
海外対応や技術の高度化
タッグ組み対応の幅広げる
埼玉県の金型メーカーなど異業種5社でつくるチーム入間のメンバー。今年で発足から11年目を迎えた

共同受注などの連携や協業はこれまでもあったが、その重要性が増している。人や設備など経営資本に限りのある金型メーカー単独では、対応しづらいことが増えていることが背景にある。
その一つが加速する市場のグローバル化だ。昨年の日系自動車メーカー8社の世界生産台数は2755万台。そのうち海外が1834万台なのだから、海外での金型需要はもとより、補修などの対応も増えるのは当然だ。
18年に業務提携した、プラスチック金型の伊勢金型工業と名古屋精密金型、ゴム型のエムエス製作所の3社もこの動きに対応する。相互の海外拠点を活用し、保守・メンテナンスで協力。グローバル化が進む顧客対応を最小投資で支援する。
海外の需要開拓も単独では難しい。企業間の連携ではないが、18年に発足した、金型メーカーも参画する「微細加工工業会」は、2月にアメリカで開かれる医療系の展示会に共同出展し、海外での需要開拓を目指す。
マルチマテリアル化に代表される技術の複合化や高度化への対応でも連携が重要になっている。アルミや樹脂、ハイテン材など複合的な知見が必要になることが多いからだ。ある鉄鋼メーカーの技術者は「どんなに優れた材料でも『使える』形にして初めて採用となる。他の材料や、接合、加工技術など、他分野の知見がより必要になっている」とし、加工メーカーと協業しているという。連携ではないが、三井化学による共和工業やアークのグループ化、東洋鋼鈑による富士テクニカ宮津の子会社化なども、素材から加工までといったこうした流れを反映しているのだろう。
樹脂や金属など複数の発注先をまとめたいという動きも増えている。管理コスト低減や品質の安定につながるからだ。
10年以上埼玉県の入間市周辺の加工受託集団「チーム入間」はまさにこの要求に対応する。プレス、プラスチック、ダイカストなどそれぞれ強みを持つ5社で、試作から量産を一括で請け負う提案をする。20年近い協業の歴史を持つ「京都試作ネット」も機械、金属、樹脂、ゴムなどの試作加工に特化したサービスを提供する。
日本金型工業会の学術顧問の横田悦二郎氏「金型は設備や人が制約条件になってしまうことが多い。日本の金型業界を一つの金型メーカーと捉えれば設備も人もそろっていてもっと色んな事ことができるはずだ」と連携の重要性を話している。
金型新聞 2020年2月10日
関連記事
自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、…
ギガキャストへの対応を進めているダイカスト金型メーカーの小出製作所。ギガだけに限らず、近年は左右対称の部品を一つの金型で成形する「セット取り」なども大型化を加速させているという。しかも「大型化しても精度は高く、生産性も高…
電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…
金型の品質高めトライ減らす 明星金属工業が手掛けるのは、ボンネットやドアなど自動車ボディー部品のプレス金型。トライ&エラーを重ねて品質を高めていくため完成までの時間が予測しにくい。受注は新車開発の時期に集中するな…