コロナショックを機に、金型に求められること 5月12日、コロナウイルス拡大の影響が読めない中で、トヨタ自動車の豊田章男社長は「頼りにされ、必要とされる会社を目指し、世界中の仲間とともに強くなる」とのコメントを発表した。…
金型と成形でシナジー
近畿精工
世に無い成形品にトライ
3次元設計を早くから取り入れ、携帯電話の爆発的な普及で実績を伸ばし、医療機器など精密分野に参入―。プラスチック金型メーカーの近畿精工は、常に取り巻く環境の変化に危機感を抱き、挑戦を糧として成長してきた。製造業のグローバル化で日本の金型に逆風が吹く中、今新たに取り組むのが成形メーカーの経営統合によるシナジー戦略だ。
滋賀県長浜市の成形メーカー、カフィール。光学プラスチックレンズを手掛け、ナノ精度の超精密レンズを得意とする。同じ長浜の企業として懇意にしてきたが社長が急逝。経営を託され、2018年、カフィールをグループ化した。
カフィールとは、精密な医療機器の開発でその金型を手掛け、共に研究に取り組むなど密接な関係にあった。しかし畑澤康弘社長はグループ化で新たな発見があったという。金型と成形の技術交流によるシナジーだ。
成形の不具合を金型開発に
カフィールでは量産でときに不具合やトラブルが生じる。原因は成形か、それとも金型か。実践で得たデータを近畿精工にフィードバックし金型の改良、開発に活かす。
畑澤社長は「これまで実際の成形の現場の情報を知ることができなかった。極めて貴重なデータ。レンズ以外の金型開発にも大いに役立っている」。
一方、成形の生産管理や生産技術に金型で培った技術を活かす。振動や温度を測るIoTで品質や生産性の高い金型づくりに取り組んできた。このノウハウを応用し「成形のコスト管理や自動化を進めていきたい」(畑澤社長)。
挑戦を糧に成長
近畿精工は1951年、父の畑澤育雄氏が前身の繊維機械部品メーカーを創業し、今年で約70年の歴史を持つ。だが金型を始めたのは73年に近畿精工に改組した後。金型業界では後発だ。
「先行く企業に追いつこうと必死だった」(畑澤社長)。当時少なかった3D設計をいち早く導入。急激に需要が増えた携帯電話の金型で事業を伸ばした。
だが製造業の海外移転で金型の空洞化が加速。不安を抱くところに2007年、カフィールから医療機器の金型開発の依頼が舞い込む。マイクロニードルやマイクロ流路の金型で、この開発で精密分野へ進んでいく。
これ以降、様々な分野から依頼が舞い込む。自動車やガラス、医療、電機セラミックなどの金型を手掛け、受注が安定。業績は順風満帆とは言えないが、2社合計の売上高を、1・5倍にする計画をもくろむ。
現状に満足することなく、これからもさらなる高みを目指し、挑み続ける。「どの会社も手掛けていない成形品。次は、それを2社の力を融合させて実現したい。世の中で唯一無二の成形品をつくれる技術で逆風を切り拓いていきたい」。
- 住 所: 滋賀県長浜市西上坂町275
- 電 話: 0749-63-5301
- 代表者: 畑澤康弘社長
- 創 業: 1973年
- 従業員数: 33人
- (グループ全体67人)
- 事業内容: 精密プラスチック金型の設計製作
Q:人材育成で何に取り組んでいますか
A:会社の方針伝え、セクションで目標を
グループ全体で社員が60人を超え、一人ひとりを指導するのが難しくなっています。そこで最近は「会社の方針を伝えること」を心掛けています。何を目指し、そのために何に取り組んでいくのか。そのうえで加工や設計など各セクションで目標を掲げてもらう。会社が目指す「夢」を理解し、それぞれがするべきことに取り組んでもらっています。(畑澤康弘社長)
金型新聞 2020年4月10日
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