金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

10

新聞購読のお申込み

日本金型工業会 会長 小出 悟氏 (小出製作所社長)
〜鳥瞰蟻瞰〜

金型は量産の道具

理解するマスターが必要
人材発掘が経営者の仕事

 「金型は量産のための道具である」と長年言い続けています。金型というものの本質がそこにあると思うからです。お客様は金型が欲しいわけじゃない。金型を使って効率的に作った部品を求めているわけですから。

 こうした考えに至ったのは、僕が根っからの技術者じゃないからだと思います。大学卒業後、愛知県のプラスチック型メーカーで組付けなどを担当しました。わずか3年。「金型はこんな理屈でできているんだ」と分かった程度です。その後、小出製作所に入ってからは、基本ずっと営業畑。だから、技術に固執することなく、金型を客観視できると感じています。

 冒頭の考えは今後より重要になると思っています。金型に求められていることが高度化しているからです。というのも、昔はお客様に言われた通りの金型を作るだけでよかった。だから、早く削るとか、精度を出すことに執着してきたし、仕事をもらう上で、それらは重要なスキルでした。今はそれだけではダメです。「新素材を成形するのにどんな型が必要か」、「この型でどれだけ生産性が上がるのか」などと問われることが増えています。

 つまり「金型は量産の道具」という理解を深め、金型技術だけでなく、量産までマネジメントできる人材が求められているわけです。当工業会が4年前に始めた「金型マスター認定制度」はまさにそうした人づくりと目指しています。

 マスターに望む人物像ですか。言うならば、一人で海外に渡って、営業し、トラブルを解決できて、会社に利益をもたらすような人でしょうか。それをするには、金型技術だけでなく、営業スキルや生産管理まであらゆることを身に着けなくてはいけない。

 世の中の変化が激しいので、マスターが習得すべきことは増えています。その一つがIoTやAIでしょう。ロボットや自動化技術が進化する中で、これらのスキルは避けて通れません。だから、今後はマスターの教育プランに、IoTやAIのプログラムを入れていこうと考えています。

 ただ、IoTやAIは金型と同じく、あくまで道具です。だから、技術だけでなく、本質を理解する必要がある。IoTやAIを使って何をするのか。金型でどう生かし、どういう成果を出すのか。マスターには自分なりの考えを持って新しいことに挑戦して欲しいですね。

 マスターのような人材の育成には時間はかかります。だからマスター制度は継続が大事だと思っています。そして、10年後に会社や業界を支えていける人材になって欲しい。人材不足を嘆く声は多い。けれど、各社にマスターになれる人材は必ずいるはずです。経営者はこうした人材を発掘し、育成することも重要な仕事だと思います。

金型新聞 2020年5月14日

関連記事

伊藤製作所がテクニカルセンタを設立した理由【金型の底力】

順送り金型やプレス加工を手掛ける伊藤製作所は本社近くにテクニカルセンタを設立し、金型部門を集約することで、本社工場などにプレス機械を増設し、需要が高まっているプレス部品の増産体制を整える。さらに、CAEや3D形状測定機、…

企業と学生つなぎ交流の場をつくる 鳥飼祐介氏(経済産業省企画調整係長)【鳥瞰蟻瞰】

素形材産業の人手不足は、業界共通の課題です。製造業全体の平均から見ても、求人倍率が高い傾向にあります。中途採用や外国人労働者に頼り、人手を確保している企業が多い。 しかし、人手を確保できれば誰でも良いわけではありません。…

【新社長に聞く】シー・アイ・エム総合研究所  富田 英史社長「現場と経営つなぐ司令塔に 」

とみた・ひでし1999年慶応義塾大卒。システム会社での開発経験を始め、日本ヒューレットパッカードや日本オラクルでコンサルティング部門の部門長を歴任。直近では政府系ファンド出資のランドデータバンクの立ち上げに専務執行役員と…

この人に聞く
東京鋲螺工機 高味寿光社長

国際競争に負けない型づくり  冷間鍛造金型メーカーの東京鋲螺工機(埼玉県新座市、048・478・5081)はこの10年間で、売上規模を倍増させた。リーマンショック後の急激な落ち込みから、超硬合金の直彫り加工技術の開発や顧…

金型の異常をAIで検知するカメラシステム【金型応援隊】

AI・ロボット開発のベンチャー企業a‐roboは2023年2月、プラスチック成形中の異常を検知し、成形機を制御するカメラシステム「GROW‐V」を発売した。 カメラの画像情報をもとにAIが金型の異常を検知する。既存のシス…

トピックス

関連サイト