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トヨタ自動車 モノづくりエンジニアリング部
鈴木 健文 部長に聞く

コロナショックを機に、金型に求められること

1991年トヨタ自動車入社。メカトロシステム部、97年生産調査部、2013年駆動・HVユニット生技部室長、17年メカトロシステム部部長、20年モノづくりエンジニアリング部部長。

 5月12日、コロナウイルス拡大の影響が読めない中で、トヨタ自動車の豊田章男社長は「頼りにされ、必要とされる会社を目指し、世界中の仲間とともに強くなる」とのコメントを発表した。同社のモノづくりの現場では、コロナ禍でも着実に、その言葉通りの改革を進めている。「試作、金型、設備など融合してもっといいモノづくりを進める」と話す、モノづくりエンジニアリング部の鈴木健文部長に、コロナ禍での取り組みや、今後の金型づくりで求められることなどを聞いた。

仲間とともに強くなる

コロナの今、取り組んでいることは。

 コロナだからではなく、我々は自動車をつくる会社から、多様な移動手段を提供するモビリティカンパニーに変わらなければいけない。そのためにもっと良い、もっと速いモノづくりを進める必要がある。

 その一環として、昨年5月にパワートレーンの試作、金型、設備、生産技術を統合したのが当部署で、現在各分野の技術の融合を進めているところだ。

 我々の役割には2つの軸があると考えている。一つは、エンジンやトランスミッションなど従来のモノづくりで生産技術を強化し、原価低減を進め、稼ぐ力を高める軸。もう一つは燃料電池車(FCV)や全固体電池など新たなモビリティ
で必要となる部品に貢献する軸。その2つを同時に進めなくてはならない。

事業領域が広い。

 そう。事業領域が広がる一方、人やモノなどの資源には限りがあるので、必要なリソーセスを捻出する必要がある。そうなると協力メーカーとの連携強化は不可欠だ。例えば、金型ではこれまで内製していた2番型を協力メーカーにお願いすることが増えると思う。その際には、工具や加工条件を盛り込んだ「金型のレシピ」を渡して、ノウハウを共有し、パートナーと共に強くなっていきたい。

社内的な取り組みは。

 一緒になった各分野の技術の融合を進めている。例えば、エンジンヘッドの試作では当たり前だった同時5軸加工を金型に使い始めた。それにより、従来よりも型表面の面粗度を上げることができた。また、生産性の向上も不可欠なので、現在2直の金型づくりを24時間体制にできないか、ロボット活用などで模索しているところだ。

 「多能工化」もキーワードだ。これまで鍛造や鋳造などそれぞれに専門性を持った人材を育ててきたが、専門分野以外にも強みを持ってもらい、新材料や新工法に対するモノづくりに備えている。

多品種少量、尖がった技術

自動車づくりが変わる中で、必要になる金型技術は。

 ひとつには、多品種少量に対応した金型技術が求められると思う。FCV、電気自動車(EV)などモビリティが多様化すると、今までのように大量の部品が必要なくなるからだ。少ない量を効率的につくることができる金型が求められる。

 もう一つは尖がった金型技術だろう。社内でも進めているが、FCVなどで必要になるセパレータの金型は、3μmレベルの高精度加工が必要になる。そうした精密な加工に秀でることも強みになると思う。

コロナの今、金型メーカーがすべきことは。

 我々も同じだが、「現場の改善力」は普遍的に必要だと思う。段取時間を短くするなどリードタイム短縮への絶え間ない工夫や、これまで以上の難しい加工へのチャレンジすることなどで現場は強くなっていく。こうした現場の改善力は、コロナのような今こそ必要になると思う。

金型新聞 2020年6月4日

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