金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

03

新聞購読のお申込み

トヨタ自動車 モノづくりエンジニアリング部
鈴木 健文 部長に聞く

コロナショックを機に、金型に求められること

1991年トヨタ自動車入社。メカトロシステム部、97年生産調査部、2013年駆動・HVユニット生技部室長、17年メカトロシステム部部長、20年モノづくりエンジニアリング部部長。

 5月12日、コロナウイルス拡大の影響が読めない中で、トヨタ自動車の豊田章男社長は「頼りにされ、必要とされる会社を目指し、世界中の仲間とともに強くなる」とのコメントを発表した。同社のモノづくりの現場では、コロナ禍でも着実に、その言葉通りの改革を進めている。「試作、金型、設備など融合してもっといいモノづくりを進める」と話す、モノづくりエンジニアリング部の鈴木健文部長に、コロナ禍での取り組みや、今後の金型づくりで求められることなどを聞いた。

仲間とともに強くなる

コロナの今、取り組んでいることは。

 コロナだからではなく、我々は自動車をつくる会社から、多様な移動手段を提供するモビリティカンパニーに変わらなければいけない。そのためにもっと良い、もっと速いモノづくりを進める必要がある。

 その一環として、昨年5月にパワートレーンの試作、金型、設備、生産技術を統合したのが当部署で、現在各分野の技術の融合を進めているところだ。

 我々の役割には2つの軸があると考えている。一つは、エンジンやトランスミッションなど従来のモノづくりで生産技術を強化し、原価低減を進め、稼ぐ力を高める軸。もう一つは燃料電池車(FCV)や全固体電池など新たなモビリティ
で必要となる部品に貢献する軸。その2つを同時に進めなくてはならない。

事業領域が広い。

 そう。事業領域が広がる一方、人やモノなどの資源には限りがあるので、必要なリソーセスを捻出する必要がある。そうなると協力メーカーとの連携強化は不可欠だ。例えば、金型ではこれまで内製していた2番型を協力メーカーにお願いすることが増えると思う。その際には、工具や加工条件を盛り込んだ「金型のレシピ」を渡して、ノウハウを共有し、パートナーと共に強くなっていきたい。

社内的な取り組みは。

 一緒になった各分野の技術の融合を進めている。例えば、エンジンヘッドの試作では当たり前だった同時5軸加工を金型に使い始めた。それにより、従来よりも型表面の面粗度を上げることができた。また、生産性の向上も不可欠なので、現在2直の金型づくりを24時間体制にできないか、ロボット活用などで模索しているところだ。

 「多能工化」もキーワードだ。これまで鍛造や鋳造などそれぞれに専門性を持った人材を育ててきたが、専門分野以外にも強みを持ってもらい、新材料や新工法に対するモノづくりに備えている。

多品種少量、尖がった技術

自動車づくりが変わる中で、必要になる金型技術は。

 ひとつには、多品種少量に対応した金型技術が求められると思う。FCV、電気自動車(EV)などモビリティが多様化すると、今までのように大量の部品が必要なくなるからだ。少ない量を効率的につくることができる金型が求められる。

 もう一つは尖がった金型技術だろう。社内でも進めているが、FCVなどで必要になるセパレータの金型は、3μmレベルの高精度加工が必要になる。そうした精密な加工に秀でることも強みになると思う。

コロナの今、金型メーカーがすべきことは。

 我々も同じだが、「現場の改善力」は普遍的に必要だと思う。段取時間を短くするなどリードタイム短縮への絶え間ない工夫や、これまで以上の難しい加工へのチャレンジすることなどで現場は強くなっていく。こうした現場の改善力は、コロナのような今こそ必要になると思う。

金型新聞 2020年6月4日

関連記事

「大型レーザーや自動化に注力し、生産性向上、現場改善を提案する」 木元武一氏(ALPHA LASER JAPAN取締役COO)【この人に聞く】

独・アルファレーザー社は1994年に設立されたレーザーシステムメーカー。世界で初めて移動式レーザー溶接機を開発し、肉盛溶接現場に革新をもたらしてきた。近年では高出力モデルの開発や、3Dプリンタ事業などにも注力する。日本市…

牧野フライス製作所 執行役員 高山幸久営業本部長に聞く【特集:進む設備の大型化】

大型機組立工場新設の理由 牧野フライス製作所は昨年末、山梨県富士吉田市に大型加工機の組み立て工場を新設すると発表した。12年ぶりの新工場で、総額210億円を投資し、大型加工向けを強化する。2026年初めに本格稼働する予定…

元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…

東洋研磨材工業〜我ら金型応援隊〜

職人技術により近い研磨を  東洋研磨材工業(東京都港区、03-3453-2351)は、鏡面ショットマシン「SMAP」を手掛ける研磨材商社。商社ながら、創業者の「いかなるニーズにも応え得る商社でありたい」という思いから、設…

新春金型メーカー座談会
〜女性の活躍を考える〜

 製造業において、人手不足は深刻な問題となっている。困難な採用環境、熟練者の高齢化などに加え、働き方改革関連法の完全施行もあり、金型メーカー各社も対応に苦慮している。特に人手不足への対応は、生産性の向上はもとより、女性の…

トピックス

関連サイト