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工業統計から読む 日本の金型の競争力

 かつて世界一の生産額を誇り、“金型大国”と呼ばれていた日本の金型産業。ピーク時には、年間で2兆円近い金型を日本で生産していた。しかし2000年以降、自動車や電機といったセットメーカーの相次ぐ海外移転による国内需要の減少や、新興国を中心とした海外企業の台頭などによって、日本の金型生産額はピーク時の8割ほどの水準まで減少。09年には中国に生産額で追い越され、世界一の座を譲り渡すことになった。生産額だけでなく、事業所数や従業員数なども大幅に減少している。一方で、1社あたりの生産額は増加するなど、この20年で日本の金型産業の力は大きく変化している。ここでは、生産額や事業所数、従業員数のほか、1社あたりの生産額など、経済産業省の工業統計調査から日本の“金型力”をみていく。

18年生産1.4兆円

ピーク時8割弱の水準

 経済産業省の工業統計調査によると、2018年の金型生産額は前年比3.4%減の1兆4752億円となり、2010年以来8年ぶりに前年を下回った。ピークだった1998年の1兆8954億円に比べると、8割弱の水準まで減少している。

 特に顕著なのが、プラスチックやゴムなどの非金属用の型種。18年のプラスチック型の出荷額は前年比6.1%減の4326億円、ゴム・ガラス型は同2.6%減の442億円だった。20年前と比較すると、3~4割ほど減少している。

 最大の要因は、新興国の台頭だ。特に中国の成長が著しい。国際金型協会(ISTMA)の資料によると、16年の中国のプラスチック・ゴム型生産額は、121億ドルと日本の総生産額とほぼ同程度の規模だという。また、これまで輸入国だったタイやベトナムといった東南アジア諸国も急速に技術レベルを上げており、新興国との差はそれほど大きくなくなってきている。

 一方で、金属用の型種では、日本の優位性は依然として高い。18年のプレス型の出荷額は前年比0.4%増の5130億円、鍛造型は同8.1%増の510億円、鋳造・ダイカスト型は同4.9%増の1231億円だった。20年前と比較しても、非金属用に比べて減少幅は比較的小さく、鍛造型では26.5%増とむしろ増加している。

 ある金型メーカーは「金属の方が塑性変形の予測が難しく、金型づくりも高度な技術が要求されるからではないか」と分析する。

 金属に限らず、プラスチックでも自動車の軽量化などによって新素材の開発が進んでおり、要求される金型もこれまで以上に高度化するとみられる。こうした高度な需要に応えられる日本の金型メーカーの技術力は、今後も競争力の源泉になるはずだ。

金型新聞 2020年9月10日

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