2020年11月26日(木)

–日本の金型の強さとは–
日本金型工業会 小出 悟会長(小出製作所)

天性の細やかさ
数値で語る力が必要

 1955年生まれ、静岡県出身。82年小出製作所入社、96年社長。82年に日本金型工業会中部支部の若手部会「イーグル会」入会。中部支部長や総務財務委員長を歴任。2017年に日本金型工業会会長就任。

 経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術へのニーズは強い。しかし、何もせずに今の地位は維持できない。今後も日本の金型が世界で求め続けられるには何が必要なのか。まず現在の立ち位置を知る必要がある。日本金型工業会の小出悟会長に日本の金型業界の強みと弱み、年内に公表する「新金型産業ビジョン」の方向性を聞いた。

日本の金型の強みは。

 型種や企業で異なるが、全体的に言えるのは仕上げや組付け能力だろう。ただ、工作機械の進化や測定技術の高度化などによって、機械で追い込める部分が増え、強みの領域は少なくなっている。当社のダイカスト型では以前は合わせに3日は掛かっていたが、今は(部品精度の向上などで)半日強で出来てしまう。それでも、仕上げや組付けは金型には不可欠だし、細やかな作業は日本人に向いていると思う。

他には。

 臨機応変な対応力だ。日本企業は総じて、顧客に無理難題をお願いされても、何とかやってしまおうとする力がある。日本人は顧客の要求に応えたいという気質が強いので、今後も対応力は強みとして残ると思う。

一方で弱みは。

 強みと表裏かもしれないが、顧客の要求に対し、収益を犠牲にして追求してしまう部分がある。対応力は強みだが、経営力というか数字に弱い。そこは改善すべきだ。

 数字は収益だけではない。暗黙知を形式知化し、数値で伝える力もそうだ。これまで日本はカンコツに頼り、経験を数値化してこなかった。熟練技能者が減っていく中で、新人技術者を数年で10年選手にしなければいけない時代になった。それにはIoT技術を活用し、暗黙知を形式知化し、数値で伝えることが必要だ。

形式知化は標準化につながり、世界中どこでも金型が作れる懸念がある。

 それは否定できない。しかし、新しい素材や技術が登場すれば、金型は変わるので、学ぶべきことや、必要なノウハウも変わる。むしろこれまでの経験を数値化し、それを基に研究すれば、新たな技術や知見が得られるかもしれない。我々はもっと前に進むべきだ。

6年ぶりに金型産業ビジョン改定します。

 大きな方向性としては政府が発表した中小企業施策で「中堅企業への成長を目指そう」と打ち出したように、金型業界もそうあるべきだと思う。それにはまず、単に金型を生産する工場から、顧客に価値を提供する金型企業に変わるべきだ。

そのためには。

 詳細はビジョンに譲るが、一つの戦術としてM&Aや連携が挙げられる。同業種で規模を拡大するだけでなく、他の型種や異業種と連携があってもいい。顧客から資本参加して頂くことがあってもいい。それぐらい劇的に変化し、顧客にとって必要な存在にならなくてはいけない。残念ながら我々はリーマンショックで変わり切れなかった。コロナ禍は我々に厳しい状況をもたらしているが、業界を変える最後の契機かもしれない。

金型新聞 2020年9月10日

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