金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

05

新聞購読のお申込み

特別インタビュー 進恵技研 佐藤 倫幸社長
特集 僕らの展示会

先を予測し恐れず投資

 1967年生まれ、栃木県出身。87年にプレス加工メーカーを経営する父親が設立した金型補修を手掛ける会社に入社し、進恵技研を創業した。2005年に社長に就任し、現在に至る。

 自動車のボディやフレーム向けプレス金型を手掛ける進恵技研(栃木県足利市、0284-73-2135)は、ハイテン材(高張力鋼板)用の金型を得意とし、年間約600型を生産する。創業1987年という後発の金型メーカーでありながら、ここまで成長できたのは、積極的な設備投資があったからだ。「金型メーカーの経営は、株式や為替といった投資事業に似ている」と話す佐藤倫幸社長に、設備投資の重要性や今後の方向性、設備メーカーに望むことなどを聞いた。

自動化、高精度化に注力

金型メーカーにおける設備投資の重要性とは。

 金型メーカーの経営は、株式や為替といった投資事業に近いかもしれない。先を予測して、必要な設備や技術にいかに投資できるか。当社の場合は、それがハイテン材だった。99年に自動車メーカーからの要望で、ハイテン材に対応するために、1億2000万円かけて量産用のメカニカルプレス(1000t)を導入した。当時の売上高は4~5億円だったが、怖がらずに投資したことで、いち早くハイテン材に取り組むことができ、当社の強みとなった。

なぜそこまで大きな投資に踏み切れたのか。

 ハイテン材用の金型は莫大な投資が必要なため、当時の金型メーカーの多くがやりたがらなかった。そこにチャンスがあると思った。他社のやらないことができれば、強みになる。そう考えて投資に踏み切った。

2015年にも大規模な設備投資を行った。

 取り組み始めた当初のハイテン材は、400~600MPaほどだったが、ハイテン化が進み、800~1200MPaといった超ハイテン材にも対応しなければいけなくなった。そこで、新工場を建設し、より加圧力の高いメカプレス機(1500t・2000t)、加工能力の高い門型マシニングセンタなどを約15億円かけて導入した。

今年、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に採択された。どんな投資を予定しているのか。

 大きなテーマは自動化や無人化。オートワークチェンジャー(AWC)といった自動化システムの導入を検討している。また、自動化を進めるためには、機械加工の精度を高め、人が仕上げる工程を減らさなければならない。温度管理に取り組み、加工精度を追求する。熱変位対策が取られた加工機の導入や恒温工場の建設を考えている。

なぜ自動化か。

 人手不足に加えて、「働き方改革」による労働時間の短縮で、これまでのような人に頼った金型づくりが難しくなる。今、自動化に取り組まなければ、今後国内で金型をつくることができなくなるかもしれない。

リゾートホテルのような入り口、綺麗な建屋や事務所の内装などにもこだわりを感じる。

 金型産業は「きつい」「汚い」「危険」という「3K」のイメージがあり、若い人が集まりにくい。良い人材を確保するためには、こうしたイメージを覆し、働きやすい環境を作ることが大切。よく「そんなところにお金をかけても、稼がないから無駄だ」と言われるが、そうではない。企業にとって最も大事なのは人であり、良い人材を集めるための投資や取り組みは最終的な利益へとつながると考えている。

今年8月には「未来投資会議」(※)のヒアリング会合に出席した。

 金型メーカーの現状や課題などを政府に訴えた。設備や人材の育成には膨大な資金や時間がかかり、個社の力だけでは限界がある。特に今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外とのやり取りが困難となり、サプライチェーン崩壊の危機を感じた。今後国内にものづくりを残すことの必要性が明らかになった。政府には補助金などの施策を通じて国内の製造業への支援を続けてほしいと要請した。

※政府が2016年に設置した国や地方の成長戦略を議論する会議。首相を議長とし、議員は関係閣僚や企業の代表者らが務める。今年10月に廃止され、「成長戦略会議」として引き継がれた。

生産設備メーカーに望むことは。

 もっとユーザー目線に立った構造の機械を作ってほしい。例えば、掃除がしやすい、切粉が集めやすい、加工室への接近性が良いとか。掃除しやすくなれば、それだけで段取り時間が短縮でき、生産性向上につながる。

金型新聞 2020年11月20日

関連記事

日本発条がササヤマと資本提携する理由【ササヤマ challenge!Next50】

自動車のシートなどを手掛ける日本発条は2015年、ササヤマと資本提携した。日本発条にとって技術連携のパートナーであるササヤマはどんな存在なのか。魅力、期待すること、今後取り組みたいことは。シート生産部の岡井広行氏と安田雅…

冨士ダイス、生産性向上へ自動化を推進 輪竹生産本部長「2030年までに30~40%省人化」

超硬合金の素材や金型などを手掛ける冨士ダイス(東京都大田区、春田善和社長)が自動化・省人化に注力している。同社は2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画(中計)で「生産性向上・業務効率化」を掲げ、今期だけで…

キヤノンモールド 技能育伝推進課長 植武 春彦さん(56) 〜ひと〜

育成のプロ、名匠塾の塾長  社内の技術者に研削や切削など加工の基礎を教える「名匠塾」の塾長。塾生は10年間で全社員の3分の1に当たる168人。同社のものづくりを支える育成のプロだ。  入社時は「おシャカ製造機」と言われる…

KMC 社長 佐藤 声喜氏
〜鳥瞰蟻瞰〜

IOTの狙いはスピード 現場の正しい情報捉え、瞬時に改善することが重要  金型メーカーが今より儲けるためには、受注を増やすか、製造原価を下げるかの2つ。では、どうやってそれを実現するか。私は「スピード」だと考えています。…

リョービ、新田真部長インタビュー 解析駆使し開発期間短縮【特集:ダイカスト最前線】

金属3D積層で水管自在 リョービはダイカスト金型の開発で、ダイカストプロセス解析技術の向上や、金属3D積層埋め子(入れ子)の活用を進めている。金型の設計・製作期間を短縮し、またギガキャストなど次代の製品の金型を開発にも活…

トピックス

関連サイト