金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

31

新聞購読のお申込み

価格の引き上げ急務 業界を挙げた取引環境是正へ【特集:どうする値上げ】

金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉などの対応が急務となっている。

金型メーカーは価格交渉が課題に

金型メーカーの経営を圧迫

大同特殊鋼は工具鋼製品を4月契約分から5~15%値上げした。工具鋼を製造するための電炉生産に不可欠な電力などのエネルギーコストが高騰していることや、諸資材のコストが上昇したことなどを価格改定の理由として挙げている。プロテリアル(旧日立金属)も昨年4月に特殊鋼製品の値上げを実施。原材料価格に連動させた価格運用(価格スライド)の適用原材料を増やすなどの対応も行っている。

日刊工業新聞社によると、東京地区の工具鋼の相場は上昇傾向にあるという。5月の市中実勢価格は、炭素工具鋼で前月末比3万5000円高、特殊工具鋼は同2万円高、ダイス鋼は同3万円高と全て値上がりしている状況だ。

こうした材料費の高騰によって、各種金型部品の価格も上昇傾向にある。パンチ工業は昨年10月の注文分からカタログ品の価格を改定し、10~20%ほど値上げした。今年7月にも一部商品の価格を改定する。ミスミは7月3日注文分からパンチやダイ、ピンなどの一部商品を平均8%値上げするとしている。

また、工場の稼働に必要な電力料金の値上げも金型の製造コストに大きな影響を及ぼしている。国内大手電力会社は今年4月から、法人向け高圧・特別高圧の電力料金を相次いで値上げした。各社によって値上げ幅は異なるが、中部電力ミライズは8・6~9・4%ほど引き上げた。

ある金型メーカーでは、撤退が相次ぐ新電力会社から大手電力会社に切り替えたことで、電力料金が昨年比2倍以上に上昇したという。また、精密加工を得意とする別のメーカーでは、工場環境を一定に保つために空調設備を24時間稼働させており、同社の社長は「製造コストに大きく影響している」と話す。

エネルギーや原材料のコストは上昇基調が続いており、今後さらに金型メーカーの経営を圧迫する可能性もある。金型メーカーが適正な利益を確保し、事業を継続させていくためには、製造コスト上昇分を反映させた価格の引き上げなどが不可欠となる。金型メーカー各社の価格交渉力が問われるとともに、取引環境の是正など業界を挙げた取り組みも求められる。

金型新聞 2023年6月10日

関連記事

金型メーカーに「働き方改革」は実現できるのか

課題多き働き方改革 働き方改革関連法案の施行から4年。金型業界でも労働時間短縮や生産性の向上など、働き方改革は進んでいるのか。現状を調べるため、本紙ではアンケートを実施した。調査からは、改革には前向きに取り組んでいるもの…

かいわ 自社で商品生み出す道に

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

J-MAX 新工場建設や船活用でCO2削減【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

自動車の大型プレス用金型及び部品を製造するJ‐MAX。特に、ハイテン材・超ハイテン材用の金型で高い技術を有し強みを発揮している。「2030年度までに、CO2排出量を2013年度比半減、50年度にはカーボンニュートラル実現…

加工全体をCAE解析、開発リードタイムを短縮[プレス加工技術最前線]

自動車の電動化や軽量化ニーズの高まり、短納期化、熟練作業者の減少など、プレス加工を取り巻く環境は大きく変化している。プレス加工メーカーへの要求も高度化しており、これまで以上に技術革新を進め、変化するニーズに対応することが…

〜特集〜 金型づくりをスマート化する

生産現場を訪ねて三豊機工 鹿児島工場(南九州)  5台のAIV(Autonomous  Intelligent  Vehicle)が10棟の工場を跨いで縦横無尽に運行する金型工場。冷間圧造用金型を材料から製品まで一貫生産…

トピックス

関連サイト