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AI活用や形状認識による設計支援 塩田聖一氏(C&Gシステムズ 社長)【この人に聞く】

金型向けのCAD/CAMから生産管理システムまでを手掛けるC&Gシステムズ。2021年に「研究開発部門」を設けるなどソフトウェアの開発体制を強化している。そこではAI(人工知能)の活用や、形状認識による設計支援などの研究を進めている。こうしたデジタル技術について「人の能力を最大限に引き出す『思考支援ツール』として開発し、近く様々な製品に実装させる」と話す、塩田聖一社長に研究開発の方向性や今後の取り組みなどを聞いた。

C&Gシステムズ社長 塩田 聖一 (しおた・せいいち)氏
1982年コンピュータエンジニアリング(現C&Gシステムズ)入社。93年同社取締役、2007年C&Gシステムズ取締役、12年3月社長、福岡県出身65歳。

研究開発体制を強化し、「思考支援」ツール開発

21年に「研究開発部門」を立ち上げました。

北九州市内に設置し、専任の若手技術者を中心に5名体制でスタートした。現在はスペースを拡張し、九州工業大学と共同研究するなど開発を加速している。特長はこれまでの製品開発とは全くの別部隊としていること。AIの活用や形状認識機能の強化などをテーマに研究を進めている。

その狙いは。

AIを始めデジタル技術を活用して、技術者が設計を考えたり、決定したりするための「思考支援ツール」を提供するのが狙いだ。CAD/CAMは本来、職人の技術支援や継承ツールだったはず。しかし、CAD/CAMに長けた人が「職人化」することで、ノウハウが属人化している。それはスキルの差だけでなく、金型をどう作るかという「思考プロセス」が職人によって異なるからだ。職人に蓄積されたノウハウや思考プロセスなどの属人的資産を、デジタルで企業資産に置き換えることが最大の目的だ。

具体的には。

ほんの一例だが、ある技術者が初めての金型を設計する場合。他の技術者が作った類似形状だけでなく、思考プロセスまでを踏まえ「こうすればいいのでは」というサジェスションするイメージが近い。それを選ぶか、違う設計や加工を選択するかは技術者次第。こうした機能を提供するには、形状認識技術の高度化やAIの活用が欠かせない。

職人は不要になるか。

デジタル技術が進んでも、職人の技能は重要で代わりは効かない。AIに学習させるためのノウハウは職人でなければ作れないからだ。例えば、小物で精密な加工が要求されるプロセスの100事例と、大物で高効率な加工が重視される100事例では、AIのアウトプットは全く異なる。要求される品質の加工を安定的にできる企業は強い。そのノウハウを個人ではなく企業資産にしていくことが重要だ。

製品への実装は。

まずは、AIによる類似形状検索を実装する。その後、プレス金型のレイアウト設計や加工の工程設計を支援するAI開発を進める。「思考支援」という考え方は一製品にとどまらない。数年内には、生産管理などあらゆる製品に適応させたい。

金型新聞 2023年7月10日

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