EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…
デジタルとアナログ融合し、型づくりの構想力鍛える 八光技研【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】
技術者育成、生産性向上に貢献
開発試作プレス部品の金型、プレス、レーザー加工まで一貫して手掛ける八光技研。アナログとデジタルを融合させる解析ソフトの活用術で、育成や大幅な生産性向上に役立てている。
同社はレーザー加工技術者だった安井けんじ社長が「プレスや金型も知り、他社にできない加工がしたい」との想いから2007年、26歳の若さで創業。その念願通り、現在はZAS材による試作金型の製作に加え、1500tプレス機を所有し、1・47Gpaのウルトラハイテンの部品を受注するまで成長した。
同社が初めてJSOLのプレス解析ソフト「JSTAMP」を導入したのは15年。きっかけは「教育のため」だった。安井社長は自ら「『プレスバカ』になりたい」と話すほど金型やプレスの構造を突き詰めたいタイプ。ただ、社長が描く型構想や頭の中は可視化しづらく、「教えても理解されないことが多かった」(安井社長)。解析を導入することで、しわの発生原因などを数字で説明するために導入した。合わせて、コンピュータにも積極投資。コア数を増やし、並列での計算速度は早めるほか、解析ノウハウの蓄積を進めている。
その成果は大きく、論理的に伝えられるようになり、技術者の能力も向上。型構想時間の短縮や削り残しがゼロになったことで、従来比で6割程度生産性が向上した。
また、同社の解析の活用方法はアナログ(現物)とデジタルの融合が特長で、決して画面上だけで終わらせない。ポンチ絵を書き、粘土で構造物を作り、紙を押し当て、どんなしわや割れが発生するかを確認する(写真)。
画面だけだと「(金型から製品を見通す)構想設計力が育たない」ためだ。解析依存が高くなりがちだった時には「禁止令」も出したほど。そうするのは「ソフトや機械を使う単なるオペレーターではなく、本当の技術者になってほしい」からだ。
すでにプレスや金型、レーザー加工まで対応できるが、足元ではスポット溶接のロボットを導入し、組み立てにも挑んでいる。安井社長は「もっと色んなことに挑戦し、他社にできないことをしたい」と創業時と変わらず、モノづくりへの意欲は尽きない。
会社概要
- 本社:滋賀県東近江市川合町1
- 電話:0748・55・3181
- 代表者:安井けんじ社長
- 従業員数:12人
- 事業内容:試作金型、プレス加工、レーザー加工および各種鈑金
金型新聞 2023年5月10日
関連記事
髭のサンタクロース 誰しも12月24・25日をワクワクして過ごした子供時代の記憶があるだろう。それはクリスマスプレゼントがもらえる日だからだ。「子供たちにとって記憶に残る楽しい1日を体験してほしい」。そんな願いを込めて地…
4月19〜22日、東京ビッグサイト青海展示棟で開催された国内最大の金型加工技術展「インターモールド2019」。注目を集めたのは、自動化や3Dプリンティング、IoTやAIなどより進化した次世代の技術だ。かつては夢物語だっ…
型青会を金型発注の窓口に 新春座談会ー第1部ー金型メーカー4社が語る 新時代の経営戦略 1月号では昨年の景況や各社の取り組みなどを報告してもらった。本号では日本金型工業会西部支部の青年部である「型青会」にスポットをあて…
天性の細やかさ数値で語る力が必要 経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術…