金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

31

新聞購読のお申込み

日本製鉄 江尻室長に聞く 自動車用鋼板のトレンドや加工技術【特集:プレス加工最前線】

自動車業界の脱炭素化や、安全性向上に欠かせない高強度鋼板による軽量化。近年では980Mpa超のウルトラハイテン(超高張力鋼板)や、2・0GPa級のホットスタンプ材など高強度化が加速している。こうした鋼板の進化で、金型づくりもより難易度が高くなっている。日本製鉄の自動車鋼板商品技術室の江尻満室長に、材料メーカーから見た自動車用鋼板のトレンドや加工の難しさ、今後重要になる加工技術などを聞いた。

日本製鉄 自動車鋼板商品技術室 室長 江尻満氏

近年の自動車用鋼板のトレンドは。

自動車業界には、カーボンニュートラルと安全性向上の2つの大きなトレンドがある。それに欠かせないのが高強度化だ。鋼板を高強度化し、薄くした980~1470Mpa級のウルトラハイテンや、ホットスタンプ材の採用が増加している。

現状で実例はまだ少ないが、冷間プレスでは1470Mpaが採用され、それ以上の強度から2・0Gpaまではホットプレス材というのが我々の認識。軽量化には両方の材料が必要だが、それぞれに利点や課題がある。

利点や課題とは。

冷間プレスは生産性が高い。しかし、プレス荷重の限界と加工の難しさがある。一方、ホットスタンプは、生産性が低いが加工性は高い。加工性と強度は負の相関にあり、それを両立させていくこととが重要だ。日本製鉄では現在、1・5Gpaを超える冷間プレス材料の開発にも取り組んでいる。また、高強度化には材料以外の提案も重要になる。

具体的には。

「NSafe-AutoConcept(NSAC)」と題した、次世代自動車向けコンセプトを打ち出している。材料開発だけでなく、構造・機能設計、工法開発、性能評価までトータルで支援する。接合面を確保するための連続のフランジ形状を可能にする工法や、ホットスタンプ材を製造する工程で効率よく冷却する技術なども開発した。必要であれば部品の構造変更なども提案する。材料特性を理解する当社だからこそできる提案だと思う。

ウルトラハイテンで必要となる金型技術は。

スプリングバックを制御する金型設計はもちろん、材料が硬くなるので、摩耗や焼付きを抑制する金型材料や加工技術が求められる。また、絞りプレスはプレス荷重が高くなるし、どうしても割れやしわが発生しやすい。歪みを分散させた構造とそれを実現する金型の開発なども重要になる。

ほかには。

金型よりも材料側の問題だが、溶接性も重要だ。高強度材は炭素の含有率が高いので、溶接が難しくなる。また、プレス後に一定時間を経て破断が発生する「遅れ破壊」も課題だ。これは水素脆性によるものだが、解消するために、残留応力を少なくすること、つまりひずみを減らす形状の金型技術なども必要だろう。

金型新聞 2023年7月10日

関連記事

コアコンセプトテクノロジー CTO 田口紀成氏に聞く
〜DXがなぜ必要か〜

 あらゆる業界で叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)。各企業には、デジタル技術を使い、ビジネスモデルや組織、働き方など会社そのものの構造を大きく変えていくことが求められている。金型業界も例外ではない。次代…

「計測、CAD/CAM、CAE技術生かし、DX化を推進」Hexagon先端技術開発室・立石源治室長【この人に聞く】

Hexagon(東京都千代田、03-6275-0870)は、計測やCAE、CAD/CAM技術を生かして製造プロセスのDX化を推進する「Smart Manufacturing(スマートマニュファクチャリング)ソリューション…

【特集】リーダーの条件

 昨秋、日本金型工業会は6年ぶりに改訂した「令和時代の金型産業ビジョン」で、金型メーカーはこれまでのように単に言われたものを作るだけの「工場」から、顧客に価値提供する「企業」への変革が必要だと指摘した。これまで続けてきた…

【ひと】池上金型工業市場開発室・石川 雅也さん

プラモデル事業をプロデュースした 前職は旅行代理店の添乗員。ものづくりとは無縁の出身だが、持ち前のフットワークの軽さを生かし、近未来型お手伝いロボットのプラモデル「カデンナ」をプロデュースした。 プラモデル参入のきっかけ…

金型はワクワクする仕事 山中雅仁氏(日本金型工業会会長)【この人に聞く】

今年6月の日本金型工業会の総会で、3期6年会長を務めた小出悟氏(小出製作所社長)に代わり、新たに会長に就任した山中雅仁氏(ヤマナカゴーキン社長)。「金型づくりはもっとワクワクできる魅力的な仕事のはず。ワクワクするために儲…

トピックス

関連サイト