若者の興味を引け 金型はものづくりの喜びがある広く知られる業界へ 若手を育てることは、金型メーカーにとって技術の伝承はもちろん、業界の活性化という点でも大切なことです。量産のものづくりがある限り、マザーツールである金型…
マツダが金型を作る理由【特集:自動車メーカーの金型づくり】
魂動デザインなど独自の哲学で「走る歓び」を追求するクルマづくりに取り組むマツダ。金型はそれを実現するための極めて重要なマザーツールだ。なぜ社内で金型を作り続けるのか。金型づくりを進化させるため取り組むこと、これから目指すことは。金型製作を担う技術本部ツーリング製作部の横山郁夫部長に聞いた。
金型は魂動デザインのキーパーツ

1987年マツダ入社。2018年車体技術部マネージャー、20年ツーリング製作部長。
ツーリング製作部で作っているのはどのような金型ですか。
クルマの技術開発で重要な部品の金型です。サイドフレームアウター、フロントフェンダー、ボンネット、ピラー、バンパー。これらはクルマのデザインや安全性、走り心地などに大きく関わる。新車開発におけるカギとなる部品です。これらのプレス部品の金型(内製金型の90%)やプラスチック部品の金型(約10%)を手掛けています。
作り続ける理由は。
マツダのクルマづくりのデザイン哲学「魂動デザイン」を実現するためのキーパーツだからです。魂動デザインには生き物が持つ動きの美しさと生命感が込められており、連続した面の陰影や光の変化で生命感を表現しています。キャラクターラインを強調する従来のデザインに比べ、面の流れを重視するデザインを塑性加工で再現するのは難しい。しかもそのデザインは進化し続ける。だから金型は社内で開発し作り続けるのです。
魂動デザインはマツダの代名詞。ただ、なぜそんな独特なデザインを打ち出したのですか。
マツダが生き残るためです。年間生産台数が約113万台で世界の自動車市場のシェアはわずか2%程度。そんなスモールプレイヤーが生き残るには他社にはない独自の魅力が必要。そこで打ち出したのが「走る歓び」を追求するクルマづくりであり、そのコアコンピタンスと位置付けたのが魂動デザイン(2010年に発表)だったのです。
従来と一線を画すデザイン。金型づくりは大変だったのではないですか。
魂動デザインは哲学なので具体的なカタチをイメージしにくく、共有しにくい。それが初めのハードルでした。そこで挑戦したのが、チーターが駆け巡る躍動的な美しさを表現したオブジェの再現でした。魂動デザインを具現化したものであり、これを御神体と呼び、金型製作における課題を共有し技術を高めていきました。
いま金型づくりで取り組んでいることは。
マツダはクルマづくりにおいてビジネス効率(=車の機能+意味的価値〈開発や生産の背景〉÷コスト+CO2)の向上に取り組んでいます。いわば最も効率の良い方法で価値のあるクルマを作るということ。それを金型に具体的に落とし込んで考えると、魂動デザインを再現する金型を最も効率の良い方法でつくるということです。
そこで取り組んでいるのが、「職人技の量産化」(Mass Craftsmanship)。魂動デザインの金型をつくるには熟練技能者が持つ「削る」「磨く」「塑性変形を調整する」などの技が必要。しかし職人が持つ技とともに生産効率の向上が重要です。そこで職人技を見える化、定量化しだれでもできるようにしたのです。
それは具体的には。
例えば切削加工。従来は走査線を往復して加工していましたが、これをデザイン面に沿って加工する方法を新たに導入しました。そのモデルとしたのがクレイモデラーの動き。クレイモデラーは面に沿って粘土を削り滑らかな曲面をつくっていく。その動きをヒントに加工パスを変えたところ工具への負荷が減り、面精度も高まりました。
グラインダーによる金型の研削は、モーションキャプチャーを活用し技能伝承を効率化しています。熟練技能者が複数のマーカーをつけたボディースーツを着て、研削の身体の動きを計測。初級者は「見える化」したその動きを真似する。訓練を重ねることでほぼ全ての技能者のレベルが上がっています。
今後の課題、目指すことは何ですか。
ひとつは次代を担う人材を育てること。ビジネス効率を高めつつ魂動デザインを再現するためには自らの仕事だけでなく、金型づくりを俯瞰して前後の工程を理解し複数の能力を持つ人材が必要です。マルチタレントを育てなければなりません。
そして常に最新の技術の開発や活用にチャレンジすることです。品質や生産効率が高まる金型の新技術開発や、加工や解析、定量化などの最新技術の活用に取り組む。人材を育てながら新技術に挑戦する。この両輪を高めることが成長につながると感じています。
金型新聞 2023年8月10日
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