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ケイ・エス・エム 金型技術生かし、医療やロボに参入【金型の底力】

徹底して顧客の声を聞く

高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづくり全体で顧客の声に応えることを追求してきた」(佐藤伊知郎常務)からだ。今後も祖業の金型を日本で作るために、顧客の声に耳を傾け続ける。

同社は佐藤常務の父、勝男氏が1995年に創業した。元金型技術者だった勝男氏の技術力で金型や成形事業で順調に拡大。佐藤常務が入社したのは、そんな拡大期にあった2003年。しかし、2年後の05年に勝男氏の急逝で事態は急変する。「全て社長任せだったため、父がいなくなったことで、不安に思う顧客や技術者を多く失った」。

医療機器に参入のきっかけとなったマウスピース

佐藤常務は急減した仕事を確保すべく奔走した。しかし現実は厳しい。それでも「何かないですか」と顧客を回り続けたところ、ある課題に気づく。メンテナンスで困る企業が多かったことだ。

「当時、海外調達を進めたユーザーは海外製の金型の補修に苦労していた。金型メーカーも補修を後回しにしていた」。そこに商機を見出し、「ユーザーや金型メーカーに『メンテの仕事をください』と依頼して回った」。

いみじくも補修は若手技術者を育てる契機にもなったという。「海外や他社の金型を直すことで、金型の構造を深く知ることができた」からだ。

自律走行型ロボットの販売も手掛ける

他社がやりたがらない補修を手掛けたことで、「競合の少ないところで戦う」という戦略にもつながっている。同社が強みとするのは200℃近い高温の難成形材用の射出用金型。高温でも5μmの精度で、カジリが出ない金型を製作できる。「手離れが悪く他社は手を出したがらない」ため、高温型は今では同社の特色にもなっている。

「第二創業」のような形で事業継承した佐藤常務だが、多角化を考え始めたのは15年頃。3Dプリンタの登場で「金型だけだと将来は厳しくなるかもしれない」と考え、新事業を模索し始めた。

佐藤 伊知郎常務

ここでもよりどころは「顧客の声」だ。福島県の21年の医療部品出荷額は255億円と日本一のため、医療機器にターゲットを設定。県内には医工連携を推進する団体が多いことから「徹底して顧客(医者)が欲しいもの」を調査した。「当社の強みは精度の良い金型を作れる金属加工とスピード。金型にこだわらず、ものづくり全体で何ができるかを考えた」。

その一つとして「内視鏡検査用飛沫防止用のマウスピース」(写真)を完成させ、参入を果たした。最近では術具なども幅広く手掛ける。医療機器分野について「ロットが小さいが、継続性が高いビジネス。いきなり高度な医療機器ではなく、簡単な『雑品』から入るのが肝だと思う」と話す。

この「雑品」を扱う流れで、飲食業向けにロボット販売も開始。ここでも顧客の声を聞き、市販の自律走行型ロボにユーザーが使いやすいように様々な樹脂部品を付加して販売している。

現在の売上構成は金型が50%、医療機器25%、ロボット関連25%程度。多角化は成功しているが「あくまで事業の幹は金型。今後も日本で金型を作り続ける」とし、これからも顧客の声に耳を傾ける考えだ。

会社の自己評価シート

医療機器参入やロボット販売などへの実績から「変化への対応力」は高いと自己評価。それらを支える「技術力」や「人材力」や「チーム力」も高い。一方で、「設備力」、「営業力」を相対的に低くみており、投資や営業強化が今後の課題と分析している。

会社概要

  • 本社: 福島県郡山市横塚2-301-1
  • 電話:024・942・1635
  • 代表者: 佐藤理恵氏
  • 創立: 1995年
  • 従業員: 17人
  • 事業内容: プラスチック金型の設計製造、医療機器設計製造、ロボット販売など。

金型新聞 2023年11月10日

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