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豊田自動織機 NCシミュレーションの効果的な運用手法【金型テクノラボ】
近年、金型や部品加工における加工効率を向上する「NCプログラムの送り速度を最適制御するソフト」が注目されている。当社もCGTech社製「VERICUT Force」を導入。これを最大限活用するための効果的な運用手法について紹介する。
はじめに
金型の切削加工では、切削部位や状況によって負荷が変動する。このため、最適な送り速度は常に変化するが、CAMで出力するNCプログラムの送り速度は一定であることが多い。
CAMで送り速度を可変にするには、ツールパスを分割してツールパス毎に速度設定を変えることも可能だ。しかし、手間がかかるうえに細かな制御を行うには限界があり、現実的とは言えない。
そこで有効なのが「NCプログラム最適化ソフト」。切削負荷が高い場合は送りを下げ、低い場合は送りを上げるといった可変送り制御を自動で行う技術として近年注目されている。
作業全体の時間増が課題
NCプログラム最適化は加工時間短縮のための強力な手法。当社でも「VERICUT orce」を運用し始めた初年度で、加工時間を約15%短縮できた。
一方、CAMでNCプログラムを出力した後に解析と最適化処理を行う必要があり、NCプログラム作成のトータル時間は増加してしまう。そのため、処理時間不足により「加工現場に供給するすべてのNCプログラムを最適化できない」という課題があった。
NCシミュレーション最適化の補助ツールを開発し、作業の効率化と自動化によって課題を解決した。
設定ファイルを自動生成し作業時間を大幅短縮
従来は加工指示書(Excel)を見てライブラリから使用する刃具、ホルダを一本ずつ選択してツーリング設定ファイルを手動で作成していた。ツーリング1本当たりの設定時間は1分程度だが、数十本の刃具を使用する金型加工では一工程分のツールだけでも40~80分の時間がかかる。
加工指示書の情報とライブラリを紐づけて、ツーリング設定ファイルを自動生成させるマクロを作成。作業時間を数秒にまで短縮した。
ソフトを起動せず準備可能に
また、NCシミュレーションソフトのUIで各種設定(マシン、3Dモデル、座標系、NCプログラムなど)を行う必要もあった。作成したツールでは、専用ExcelフォーマットからNCシミュレーション設定ファイルを生成。これにより、シミュレーションソフトを立ち上げることなく準備作業ができるようになった。
二つのツール(図1)をユーザー側で開発できたのは、VERICUTの各種ファイルが可読性の高いテキストフォーマットで定義されていたためだ。その他の市販ソフトでも同様のアプローチでツール開発できる可能性がある。
バックグラウンド解析により自動で複数処理
NCプログラム最適化は干渉チェックシミュレーションだけの場合と比べて演算時間が長くなり、処理時間不足が課題であった。そこでVERICUTが「スクリプトコマンドによる解析処理機能」を備えていることに着目。
タスクスケジューラとPythonを活用して「複数のNCシミュレーション・最適化処理を無人で実行できる仕組み」を構築した(図2)。これまでは処理の度に開始操作が必要だったが、無人処理によって夜間時間を有効利用できるようになり、処理時間不足を解決できた。
今回紹介したツールは、現場の担当者が主体となりアプリケーションを作成する「市民開発」によるもの。このような取り組みが活発化してきたのは、社内DX推進活動の流れが各部門の担当者にまで波及してきたことが大きい。非IT人材がデジタルツールという武器を手に入れることで、業務改善・効率化の提案や実現スピードが大幅に向上できると考えている。
豊田自動織機
- 執筆者:コンプレッサ事業部アルミ技術部 金型技術室 辻井徹氏、森拓也氏
- 住所:愛知県大府市江端町1-1
- 電話番号:0562・48・9604
記者の目
近年、金型製造現場の人手不足が深刻化しており、生産性向上のニーズは高い。NCプログラム最適化ソフトを活用した加工効率改善は有効な手段の一つ。また、ソフトを導入して終わりではなく、最適な運用を行うことで、最大限の効果を発揮できる。今後も多様な運用手法が出てくることに期待したい(清)。
金型新聞 2024年1月10日
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