金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

18

新聞購読のお申込み

キヤノン 順送プレス工程の生産性向上に貢献する非接触測長計【金型テクノラボ】

順送プレス工程では材料の搬送量管理にパイロットやミスフィード検出が使われているものの、搬送に関わる不具合がしばしば発生している。所望の搬送が実現できない場合、不良品の発生にとどまらず、金型破損につながる場合もある。本稿では非接触での搬送量モニタを可能にするセンサとして非接触測長計「PDシリーズ」を紹介する。

非接触で搬送量を測定

非接触測長計「PDシリーズ」は、非接触で測定対象物の搬送量(横方向の1次元の変位)を測定するセンサ(図1)。測定対象物表面の微小な構造を手掛かりに計測する。白色LEDで測定対象物表面を照明、反射光をラインセンサで読み取り、画像処理により変位情報を算出する。材料そのものを読み取るリニアエンコーダとしての役割を果たす。ただ、通常のリニアエンコーダとは異なり、スケール部品が不要なため、スケールレスエンコーダとして、これまでにない自由度での運用が可能となる。

また、ローラを接触させて変位を測定するメジャーリングロールに対しても、接触圧、接触に伴う摩耗の管理が不要となる他、測定対象物表面に傷を発生させないといった利点がある。

図1 非接触測長計「PDシリーズ」の構成と使用例

搬送モニタの実測例

図にコイルフィードの測定を行った結果を示した(図2)。搬送条件は100spm。左図は順送されるコイル材の変位量を示したもので、一定量で搬送される様子が測定できている。右図は搬送間の停止状態を拡大したもの。コイル材の搬送量が1ミクロンオーダーでモニタできていることが分かる。搬送量をモニタすることで、搬送誤差が所定の大きさを超えた場合にラインを止めるような対応が可能となる。

図2 コイルフィードの測定例

加速度に追従する測定方法

非接触測長計「PDシリーズ」の特徴は大きな加速度に対しても追従できること。「PDシリーズ」以外に非接触計測が可能な市販のセンサは、レーザードップラー速度計(LDV)が挙げられる。しかし、LDVは測定原理的に大きな加速度への追従に課題があり、加減速の大きい順送プレス工程への適用は困難だった。「PDシリーズ」は、LDVの課題を解決すべく測定方式から見直して開発された製品。高速な画像処理を実装することによって、高加速度への追従を可能とした。

「PDシリーズ」の出力レートは4kHzで、100Gまでの加速度に追従可能。前述のコイルフィードの測定例では10G以上の加速度が生じていたが、問題なく測定できた。

また、高速現象の可視化手段として、ハイスピードカメラが用いられる場合がある。ハイスピードカメラは1000fps以上のスピードで2次元情報が得られるという利点がある一方で、装置が高価。一方、「PDシリーズ」は1次元的な変位の測定に限られるものの、容易に4000fpsに相当するスピードでデータを取得することができる。そのため、高速現象の解析という用途にも活用することができる。

非接触測長計の展開

DX(デジタルトランスフォーメーション)が昨今騒がれているが、「PDシリーズ」を用いた順送プレスにおける材料搬送の見える化は、生産性の向上に大いに貢献できると考えている。搬送誤差の監視以外にも搬送量情報を蓄積することで、予防保全への活用、搬送量情報と製品品質を紐づけて品質の向上につなげることもできる。

また、プレス工程では、材料搬送以外にスライドの上下運動のモニタにも適用可能。例えば、下死点の異常検出やストローク量のモニタなどにより予防保全や品質向上に活用できる。「PDシリーズ」は、これまで困難だったプレス工程各部の動的な情報の可視化を容易にするツールとして、プレス加工現場の生産性向上に貢献する。

キヤノン

  • 執筆者:計測機器事業センター 魚住 崇之氏
  • 住所:東京都大田区下丸子3-30-2
  • 電話番号:03・3758・2111

記者の目

計測を生産ラインに組み込むにはスピードとコストが課題となる。いかに導入コストを抑え、要求精度を満たしながら生産ラインを滞らせないスピードでの計測を実現するか。「PDシリーズ」はこうした課題を解決する。プレス加工現場のDXを加速させる注目技術の一つだ(平)。

金型新聞 2024年2月10日

関連記事

日本精機 金型流路洗浄液と装置を開発

分解不要でスケール除去 ダイカスト金型メーカーの日本精機(名古屋市守山区、052・736・0611)は、冷却水管内部のスケールや錆を除去できる洗浄液と専用装置を開発した。6月のインターモールド名古屋で発表する。高い洗浄効…

イイダモールド 樹脂製梱包装置を開発

輸送コストを大幅削減  樹脂射出成形用金型などを手掛けるイイダモールド(茨城県筑西市、0296-22-7256)はこのほど、金型などの重量物を輸送する新しい梱包装置「ファストキャリー」を自社で開発し、発売した。木枠が不要…

冷間鍛造で新市場開拓
ニチダイ

電池ケースなど視野  冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは独自の鍛造技術を駆使して新たな市場の開拓に乗り出す。まずは、電気自動車などで脚光を浴びる電池ケースやバッテリー市場向けに鍛造技術を応用して、ケースの強度向上や生産…

自動で空間誤差を補正
三菱重工工作機械

金型クリアランス 調整が不要に  三菱重工工作機械が大形高精度加工機「MVR・Fx」に搭載できる「空間誤差補正システム」が注目を集めている。経年変化や環境温度変化で生じるXYZ位置の空間誤差を自動的に検知し校正するもので…

七宝金型工業 精密ジャッキ『EASYG(イージグ)』の第2弾を開発中

外段取りの効率性向上 ダイカスト金型を手掛ける七宝金型工業(愛知県津島市、0567・24・8787)は昨年発売した自社製品の精密ジャッキ『EASYG(イージグ)』の第2段を開発。従来品は工作機械のテーブル上でしか使用でき…

トピックス

関連サイト