独自のボタンダイ開発 プレス金型メーカーのハルツ(横浜市金沢区、045-783-8601)はこのほど、抜き加工のカス上がりを防ぐボタンダイを開発した。ダイの内径にボールプランジャーや凸材を埋め込み、抜きカスが上がるのを…
KMC 金型加工現場のDXソリューション【金型テクノラボ】
円安などで空前の利益を上げる自動車メーカー。一方でその好機を捉えられない金型産業。いったい何が原因なのか。今一度足元を見据えて、国内金型産業の反転攻勢へ舵を切る最後のチャンスだ。人手不足、熟練技術者の退職など、今こそ過去の成功体験を捨て、顧客が進めるデジタル製造を金型産業も導入しないと生き残れない。

デジタル化・情報連携が急務
自動車産業がEVやギガキャストなどによる大変革に挑む中、自動車メーカーやティア1、2は国際競争に勝つため、金型や設備などのセンシング、金型管理・メンテナンス・トライ情報や検査のデジタル化、DX人材育成などへの投資を加速させている。サプライヤーに対してもデジタル化・情報連携を求めており、デジタル化が急務となっている。
検査不正の防止、品質規格への対応
国際規格「ISO9001」や「IATF16949」、ドイツ自動車工業会(VDA)規格などの品質規格はますます強化され、手書き検査表では対応できなくなっている。検査不正の防止につながる検査記録のデジタル化は受注側、発注側双方の品質管理、信頼性に対して重要だ。金型出荷時のトライ記録や金型寸法測定などのデジタル化対応は必須になっている。
当社のデジタル検査システム「測定電子カルテ」を使用すれば、デジタルマイクロメーターや3次元測定機などから顧客が求める検査表を簡単に作成でき、手書き検査表からエクセル入力、検査表からマクロによる統計管理などの作業が不要となる。信頼性が担保され、金型受注率の向上、社内工数削減につながる。
金型の差し戻しや修正を無くす
プレス金型ではトライ時の良品条件証明のために歪センサによる金型歪測定や面圧センシングに取り組む動きが広がっている。一方、樹脂金型では「サーモモニタリン」による金型の表面温度測定システムや温湿度センサ、熱電対センサによる材料湿度、環境温度などをトライ時の良品条件を金型出荷時に添付するようになっている。こうした取り組みの目的は顧客との差を測り、差し戻しや金型修正を無くすためだ。
当社の金型管理システム「金型IoT」を用いることで、デジタル化による受注側、発注側双方の無駄な作業を無くすことが可能な他、金型保全でもデータを有効に活用することができる。
工具管理の無駄を削減
金型加工現場では作業だけでなく、工具管理などでも属人的な要素が存在する。“マイ工具・治具”“マイ加工条件”といった言葉もあるほどだ。当社のコンサル事例では、棚卸しによって1000本(数百万円)単位の不要工具が見つかったこともある。また、その現場では工具や治具探しに作業者の業務の多くを費やしていた。
当社の「QR工具管理システム」は工具/棚にQRコードを取り付けることで、所在管理から新品、使用時間、再研磨、廃棄まで一貫した工具管理が可能。無駄な工具・治具を購入することがなくなり、治工具の購入費用を2分の1程度まで削減できた事例もある。こうした治工具の購入費用を削減することで、金型の原価低減につなげることができる。
設計業務の支援、共有化
熟練設計者の高齢化が進む中、設計技術者不足を課題とする金型メーカーは少なくない。その多くはノウハウの伝承や教育の仕組みが整備されていないことに起因する。若手人材の確保、定着を図るにはこうした仕組みの整備が欠かせない。当社が提供する「ナレッジ電承システム」はノウハウを標準化し、ネットワーク環境で設計業務の支援や共有化を可能にする。次世代の金型設計者育成ツールとして活用することができる。
すでに大手メーカーでも採用が進んでいる。ある事例では現場との情報共有がスムーズになり、手戻りが68%削減されたという。労働人口の減少が進む中、デジタルで現場の守りを固め、企業文化の変革に挑戦しなければ、現場には加工設備だけ残ることになるだろう。
KMC
- 執筆者:代表取締役社長 佐藤 声喜氏
- 住所:川崎市高津区坂戸3-2-1
- 電話番号:044・322・0400
記者の目
デジタル技術は企業変革力を飛躍的に増幅させるものとなるのは間違いない。一方で、こうした技術の導入による新しい方法を企業文化に定着させるには、相応の時間を要する。事業環境が加速度的に変化している中、金型メーカーはいち早く取り組むことが重要となる(平)。
金型新聞 2024年3月10日
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