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黒田精工 モータコア金型の生産強化【金型の底力】
2025年までに2.5倍に
黒田精工は昨年12月、モータコア金型などを手掛ける長野工場(長野県池田町)を拡張した。新たに設立した工場棟には300t大型高速プレス機や磁石の樹脂固着システムなどを導入。電気自動車(EV)市場の成長に伴い需要の増加が見込まれる電動車用モータコアの生産体制を強化し、2025年までに金型の生産能力を23年比2・5倍に引き上げる。
「金型事業の売上高は、この10年間で約3倍に拡大した」。そう話すのは金型事業部長を兼任する石井克則専務。2014年3月期に32億円だった金型事業の売上高は、23年3月期には97億円まで拡大。同社の売上高の4割以上を占めるようになった。

急成長の要因は世界的なEVシフトの加速。現在、世界の新車販売に占めるEVの比率は1割を超えていると言われており、欧米や中国などを中心に普及が進んでいる。既存の自動車メーカーだけでなくEV専業メーカーも台頭しEV市場は成長を続けている。
同社は金型内で電磁鋼板を接着積層し、効率の高いモータコアを製造できる独自技術を持つ。加えて、14年に世界的なラミネーションメーカー、ユーログループ(伊)と提携し、海外の販路を拡大。欧米や中国メーカーなどの海外企業で採用が進み、需要が増加した。

こうした需要拡大を背景に昨年12月、土地、建物及び附属設備、機械設備などを含め約16・5億円をかけて、長野工場を拡張した。新設された工場棟(第8工場)及び倉庫棟の面積は約2100㎡。新工場棟にはボルスター寸法の左右長さが3・7mの300t大型高速プレス機と、モータコアに磁石を挿入し樹脂により固着する工程「MAGPREX(マグプレックス)」ラインを設置した。
大型設備を導入したのは、同社が手掛ける電動車用モータコア金型が大型化しているからだ。背景にはモータコア形状の複雑化による金型の工数増加、金型の多列化などが挙げられる。大型高速プレス機の導入によって、既設のプレス機では対応できない大型金型を搭載した試作や量産が可能となった。また、今後はさらに大きな金型が必要になる可能性もあり、「さらなる大型高速プレスの増設も検討している」(石井専務)。

こうした金型の大型化に伴い、プレス機だけでなく、金型加工設備でも門型マシニングセンタやワイヤ放電加工機などの大型機を導入し、対応を進めている。今後は大型ジグボーラーの増設などを検討しているという。
一方、大型化対応だけでなく、金型の生産能力強化にも取り組んでいる。新工場棟及び倉庫棟の設立に伴い、工場レイアウトを大幅に見直し、金型加工機を増強する。こうした一連の設備投資によって、電動車用モータコア金型の生産能力を25年までに23年比で2・5倍に引き上げることを計画している。
今後、EV市場はさらに拡大することが見込まれる。35年には全新車販売台数の半数以上がEVになるという予測もある。メーカー各社の開発競争が激化する中、同社はモータコア及び金型の安定的かつ柔軟な供給体制をグローバルで構築し、「ハイエンド電動車用モータでシェアナンバーワンを目指す」(石井専務)。

会社の自己評価シート

会社概要
- 本社: 川崎市幸区堀川町580-16
- 電話: 044・555・3800
- 代表者: 黒田浩史社長
- 創立: 1949年
- 従業員: 988人(連結)
- 事業内容: 金型システム事業、駆動システム事業、機工・計測システム事業
金型新聞 2024年4月10日
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