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黒田製作所 工程管理支援システム『Grow』 工程を見える化・情報共有

全てが一品物の自動車用プラスチック金型は、工程管理の最難関と言われる。最新鋭のCAD/CAMシステム、多種多様な工作機械など豊富な設備に加え、それを操作する若き金型エンジニア、腕の立つ職人が不可欠で、さらなる生産性向上を目指すために、考え抜き辿り着いた先に誕生したのが成長という名の自社開発システム『Grow』。その開発した背景、特長を紹介する。

業界を取り巻く問題・課題

20人以下の事業所が80%という日本の金型業界は2008年のリーマンショック以降、規模縮小の一途を辿っている。少子高齢化に加え、多様化する働き方、若者の製造業離れ、時間外労働の規制など、様々な問題に対応しきれず業界全体が危機に直面している。

Grow開発までの背景と分業・業務シェアへの流れ

自動車用プラスチック金型の製造手法は元来、一品物であるがゆえに仕上職人が各型担当として管理、型の問題を判断・解決し玉成を進めてきた。若手も一緒に夜遅くまで残業し、仕事を覚え一流の金型職人を志してきた。

しかし、その手法は時代の流れと共に風潮から大きく外れ、金型製造は分業へと舵を切ってきた。分業化が進むと、加工情報など他工程への確認、ケアポイントについての伝達・意思疎通は急激に困難になり、製作型数や人数が増えてくると、ますます困難になる。

管理者用、作業者用、日報・集計/分析など一覧に
登録された予定と実績から大日程表を自動作成

そこで、当社は製造部の頭(司令塔)に製造管理課を立ち上げ、情報の整理と品質の管理、工程立案を担う役割を設けた。また、仕上職人全員に同じ紙帳票を用意し、1年以上かけて帳票改善を繰り返し、工程の棚卸を行いながら分業と業務シェアを進めてきた。

Growの開発とコンセプト

業務シェアを完遂した2021年末に『Grow』の本格構想に入り、23年6月1日に正式に稼働させた。以下は当時の開発コンセプトの一部を紹介する。

(1)全ての部署について全作業の予定・実績を網羅する。

(2)現状の仕組みより管理工数を確実に下げ、全社員にとって無くてはならないシステムを目指す。

(3)入力は常に分かりやすく、簡易的であること。

(4)部品情報及び他部門を含む全工程情報について容易に確認できる仕様にする(情報共有化)。その情報について誰かが情報を紐づけるのではなく、登録のみで全ての情報が自動で繋がる仕組みとする。

(5)システムで記録する工程・機械・人の作業実績に紐づいた日報システムを実装し、実績値から様々な集計をワンクリックで可能にする。

各部品の工程と予定、進捗状況が一目で分かる
関連する型全体や履歴を含む、部品の全情報を閲覧可能

Growの特長と今後の展望

新人の頃、上司に「理想の管理とは管理しなくても管理出来ている状態を作ること」と教えられた。毎日の工程管理に管理職が忙殺されていては理想の実現は難しい。Growはそうした理想の管理に近づけるシステムを目指している。以下はその特長を紹介する。

(1)Growは工程の見える化・情報共有ツール

Growでは管理職は工程の管理期間だけを決めて登録する。作業者は前工程の予実、型や部品など後工程が必要とする日程をシステム上で把握することで、自分の予定を自分で決められる柔軟な仕組みとなっている。一般的な工程管理システムにある予定工数を積み上げて自動で山崩しする機能は設定していない。

(2)現場管理の管理帳票を踏襲

今までCAMや機械を管理してきたエクセル帳票イメージを引き継ぎ、システム化することでスムーズな移行が可能。

(3)常に現場の意見を聞き改善・改良

パッケージソフトにはない最大の強み。

(4)AI搭載を夢見て

蓄積されていくデータの活用を考え、「人が判断しているところをAIに」を視野に入れている。

ITが進まない業界で、今我々にできる事

Growを開発して以降、様々な企業と対話する機会を得た。管理はExcelで、紙で、ホワイトボードで、紙からExcelへ転記する業務や、Excelデータから古いオフコンへ手入力する業務など、IT化が進んでいない。将来は心配だが、今は問題が起きておらず、また、どこから手を付けたら良いか判断できないという声も非常に多いと感じる。

Growは当社システムの一例で、相談頂ければ「まずは必要な一部分からシステム化を始めてみる」を一緒に考えていく。お手伝いすることで可能性が広がり、業界全体の明るい未来に繋がればと願っている。 

黒田製作所

  • 執筆者:専務取締役 安藤 進氏
  • 住所:岐阜県羽島郡岐南町伏屋9-138
  • 電話番号:058・247・2385

金型新聞 2025年1月10日

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