金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

26

新聞購読のお申込み

日本精機 AM造形部品の品質を保証【特集:尖った技術を使いこなせ】

Ⅹ線CT解析ソフトを活用

採用が増えている金属AMによる金型の入れ子部品。ただ、明確な品質保証データがないことが採用への大きな壁となることは多い。造形後のワークからだけでは内部の巣の有無や、密度などの数値データを把握するのが難しいためだ。

立上げから3年半で700個以上のAM入れ子の納入実績を持つ日本精機はHexagonのX線CTデータ解析ソフト「VGSTUDIO MAX」を活用し、客観的データに基いたワークの品質を保証している。

造形の内部構造の品質もデータで明らかにできる

同ソフトはX線CTのワーク解析で使われてきた技術。成形後の鋳物などをX線CTスキャンで撮像し、巣の有無、形状、密度などを解析する。

日本精機はこの技術をAM部品の品質保証に転用した。具体的には、造形中にリアルタイムで、高精度カメラで撮像した画像データを蓄積し、ワークをモデル化。そのモデルを基に巣や形状、密度などを計測する。それらのデータを品質保証として顧客に提出している。

日本精機が造形に成功した400㎜超の大型ワーク

その精度について、松原雅人常務は「解析したデータと実際のワークを検査したところ、差異はほぼゼロだった」という。また、「(現状、保証データを出している企業はないので)安心して使ってもらえる。割れが発生した際にそのデータをもとに顧客と品質に関する議論を進めている」と信頼性向上にも役立てている。

同社がAM造形に参入したのは4年近く前。当初から、AM入れ子を採用してもらうには、品質保証は絶対に欠かせない要素の一つだったという。「材料や部品はミルシートなどのデータが求められているのに、『AM入れ子のデータはありません』では採用が進むわけがない」(松原常務)。

現在はVGSTUDIO MAXを活用し、AM入れ子の品質を保証している同社だが、次に狙うのが品質保証の規格化だ。2025年度には岐阜大学らと共同で、AMに関するプロジェクトをスタートさせる計画で、そこでは品質保証に関する部会も設置する予定だ。

「現在はあくまで当社の規格。外部機関と連携することで、その規格をISOなどのように一般化させていく。そうすることで、AM入れ子をもっと当たり前に採用してもらえるようにしたい」(松原常務)。

会社概要

  • 本社:愛知県名古屋市守山区中志段味2799
  • 電話:052・736・0611
  • 代表者:辻村正稔社長
  • 創業:1920年
  • 従業員数:62人
  • 事業内容:ダイカスト金型の設計製作、金属AM部品製造など

金型新聞 2025年2月10日

関連記事

新栄ホールディングス 金型、プレス加工メーカーをグループ化【特集:連携・M&Aで乗り越える】

金型、プレス加工メーカー3社を傘下に置く新栄ホールディングス(東京都中央区、中村新一社長)。金属プレス加工メーカーの新栄工業(千葉市花見川区)がM&A(合併・買収)で取得したアポロ工業(埼玉県吉川市)と飯能精密工…

年間500型以上を生産する工場長が実践する現場のスケジュール管理、最適化術【特集:工場長の条件】

時には経営者、時には教え諭す教育者—。工場長には多様な役割が必要だ。こうしたマルチタスクをこなすために、どのようなことを意識しながら、責務を果たしているのか。現役工場長に、工場長としての哲学を聞いた。 工程管理の見える化…

-混沌の時代を切り拓く- 金型メーカーの連携

金型広がる協力の輪  金型メーカー同士や異業種、加工技術などを軸とした様々な形での連携や協業の重要性が高まっている。ユーザーの海外展開に伴うサポートや需要開拓、技術の複合化や高度化などによって、金型メーカー単独では顧客の…

低廉化金型を開発 魚岸成光氏(魚岸精機工業社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…

金型メーカー座談会
経営者5人が語る、どうなる2015年

活路を創造、混沌に挑む  日本の金型業界にも少しずつ明るさが戻ってきた。とはいえ、受注水準はいまだリーマンショック前の8割程度だ。そんななか、日本金型工業会は「新金型産業ビジョン」を策定した。そこでは、金型業界の向かうべ…

トピックス

関連サイト