金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

29

新聞購読のお申込み

日本精機 AM造形部品の品質を保証【特集:尖った技術を使いこなせ】

Ⅹ線CT解析ソフトを活用

採用が増えている金属AMによる金型の入れ子部品。ただ、明確な品質保証データがないことが採用への大きな壁となることは多い。造形後のワークからだけでは内部の巣の有無や、密度などの数値データを把握するのが難しいためだ。

立上げから3年半で700個以上のAM入れ子の納入実績を持つ日本精機はHexagonのX線CTデータ解析ソフト「VGSTUDIO MAX」を活用し、客観的データに基いたワークの品質を保証している。

造形の内部構造の品質もデータで明らかにできる

同ソフトはX線CTのワーク解析で使われてきた技術。成形後の鋳物などをX線CTスキャンで撮像し、巣の有無、形状、密度などを解析する。

日本精機はこの技術をAM部品の品質保証に転用した。具体的には、造形中にリアルタイムで、高精度カメラで撮像した画像データを蓄積し、ワークをモデル化。そのモデルを基に巣や形状、密度などを計測する。それらのデータを品質保証として顧客に提出している。

日本精機が造形に成功した400㎜超の大型ワーク

その精度について、松原雅人常務は「解析したデータと実際のワークを検査したところ、差異はほぼゼロだった」という。また、「(現状、保証データを出している企業はないので)安心して使ってもらえる。割れが発生した際にそのデータをもとに顧客と品質に関する議論を進めている」と信頼性向上にも役立てている。

同社がAM造形に参入したのは4年近く前。当初から、AM入れ子を採用してもらうには、品質保証は絶対に欠かせない要素の一つだったという。「材料や部品はミルシートなどのデータが求められているのに、『AM入れ子のデータはありません』では採用が進むわけがない」(松原常務)。

現在はVGSTUDIO MAXを活用し、AM入れ子の品質を保証している同社だが、次に狙うのが品質保証の規格化だ。2025年度には岐阜大学らと共同で、AMに関するプロジェクトをスタートさせる計画で、そこでは品質保証に関する部会も設置する予定だ。

「現在はあくまで当社の規格。外部機関と連携することで、その規格をISOなどのように一般化させていく。そうすることで、AM入れ子をもっと当たり前に採用してもらえるようにしたい」(松原常務)。

会社概要

  • 本社:愛知県名古屋市守山区中志段味2799
  • 電話:052・736・0611
  • 代表者:辻村正稔社長
  • 創業:1920年
  • 従業員数:62人
  • 事業内容:ダイカスト金型の設計製作、金属AM部品製造など

金型新聞 2025年2月10日

関連記事

北川精機 金型や部品、安全・効率的に保管 【金型応援隊】

搬送装置などを手掛ける北川精機は金型保管や電極、部品の保管に効果的なストッカー「ソリッドストッカー」の提案を強化している。工場の高さに合わせて自由にレイアウトできるのが特長だ。 国内の工場は大きなスペースが確保しづらく、…

【検証】変わる金型基金 新たな船出<br>解散後、新制度に移行

【検証】変わる金型基金 新たな船出
解散後、新制度に移行

 今年11月をめどにいったん解散し、新制度への移行を進める日本金型工業厚生年金基金(上田勝弘会長)。なぜ制度移行なのか。加入者にどんな影響があるのか。基金の存在意義や、制度移行を連載企画で検証する。1回目は年金制度の仕組…

三菱自動車工業が取り組む金型磨きレス 手磨き以上の面粗さ、製造工数の削減を実現

三菱自動車工業は加工工法を改善し、金型磨きレスの実現に向けた取り組みを進めている。仕上げや組付けなど金型の品質を決める領域は人を介する必要があり、磨き工程もその一つ。磨きは人の感覚や細やかな動きを求められることが多く、熟…

MOLDINO ギガキャスト、燃料電池の金型向け切削工具を販売開始

大型化、難削化、微細化に対応 切削工具メーカーのMOLDINO(東京都墨田区、03・6890・5101)は2月17日、ギガキャストや燃料電池の金型加工に適した新製品を販売すると発表した。今年1~2月にかけて3製品を販売開…

レゾナック 大型外装部品に発泡成形技術を適用し、30%以上の軽量化を実現

レゾナック(東京都港区、髙橋秀仁社長CEO)は、独自の発泡成形技術を用いて、自動車の後部に配置されるバックドア用『アウターパネル』の試作品を開発した。現在同社が手掛ける外装発泡成形品では最大の大きさ。従来のソリッド成形品…

トピックス

関連サイト