内製能力向上でコスト削減 ダイカスト金型メーカーのサンユー技研工業(三重県津市、059・254・2200)は6月末、ブロー成形金型を手掛けるオーム技研工業(千葉県白井市、047・4914858)を買収した。買収額は非公開…
谷ダイ・モールド 精度追求のために新工場 【特集 攻める設備投資】
機上計測で戻りない加工
自動車のエアコンの吹き出し口の「レジスター」や、ミリ波レーダーを透過できるエンブレムなどのプラスチック金型を手掛ける谷ダイ・モールド。2023年に機械加工専用の第2工場を稼働させた。狙いは「工場が手狭になってきたことに加え、これまで以上に精度を追求する」(谷広将社長)ためだ。今後も「他社と同じ仕事をしても意味はない」とし、攻める投資を継続する考えだ。
同社の設立は1980年。設立当初から大手自動車部品メーカーの開発案件の金型を手掛けるなど高い技術力を武器に、ユーザーとの強い結びつきで成長してきた。中でも、近年増えているのが、冒頭のエンブレムの金型。構造部と意匠面などを組み合わせる特殊な「三色成形」で、金型としては難度が高い。成形品の板厚は±20μmレベルが必要で「金型もミクロンレベルの高い繰り返し精度が必要」(鈴木浩二技術部長)という。

その高い繰り返し精度を維持し、顧客の要望に応えるために「高精度な機械は当然だが、加工環境もこれまで以上に重要になる」(谷社長)と判断。22年に約1億6000万円を投じ、第二工場の建設に踏み切った。
こだわったのは安定した加工環境。基礎工事を徹底したほか、工場全体を±1℃の「恒温化」した。そのために断熱材を工場内に配置し、窓もない環境にした。その結果「バラつきが減り、±10μレベルは安定的に出せるようになっている。今後は安定的に±5μmを狙う」(鈴木部長)。
副次的な効果として、空調の節約にもなっている。「旧工場では、4台のエアコンで温度管理していたが、新工場では高い気密性により、実質1台で温度を安定化できている」という。

こうした加工精度にこだわるのは、顧客の要求はもとより、生産性の高さにもつながるからだ。「精度が出せれば組付けも楽になるし、何より加工の戻りがない」(鈴木部長)。その方策の一つとして、数年前から取り組んでいるのが機上計測だ。
安田工業のマシニングセンタなどが並ぶ新工場の加工機は全て機上計測仕様にしている。測定の狙い値より上回っていれば、その場で再加工し、後工程に不良を出さない仕組みを構築した。工程ごとの精度を高めた結果「入社3年目の技術者に加工を担当してもらったが、問題なく完成できた」という。
鈴木部長は以前、ある金型メーカーに言われたことがずっと頭にあるという。それは「調整で人の手を入れるのは金型を壊していることと同じ。完璧な加工ができていれば調整は必要ない」ということ。「道具と環境を整えることができればそれも可能だ」と話す。
この精度追求のための終わりはない。現在、顧客からの要求もあり、さらにもう一段上のリフレクターの金型への挑戦を検討している。条件は、磨きはナシで、機械加工のみで3μmの精度。仕上切削も超硬工具ではなく、PCD工具が必要になるレベルだ。
谷社長は「リフレクターの金型を手掛けるとなると機械も環境もこれまで以上の投資が必要になる。市場性なども見極めなければならない」と慎重な姿勢を示す。だが、「他社と同じことをしていても先はない」とし、さらなる投資も検討している。
会社概要
- 本社:愛知県岡崎市下青野町字喜昌島51
- 電話:0564・43・2188
- 代表者:谷広将社長
- 設立:1980年
- 従業員:11人
- 事業内容:射出成形金型の設計製作など。
金型新聞 2025年3月10日
関連記事
100年に一度の変革期と言われる自動車業界。それを語るときに欠かせないキーワードが「CASE」だ。「C=コネクテッド(つながる)」、「A=オートノマス(自動運転)」、「S=シェア(共有)」、「E=エレクトリック(電動化…
事業再構築補助金を活用 金型メーカーの新分野展開、業態転換が加速している。コロナ禍や、自動車の電動化などによって事業環境が大きく変化する金型業界。多くの金型メーカーが2021年からスタートした「事業再構築補助金」を活用し…
日本金属プレス工業協会(髙木龍一会長、高木製作所会長)は5月7日、会員企業の若手経営者などからなる「次世代会」を創設した。55歳以下の経営者や後継者が対象。工場見学会や交流会などを通じ、情報交換の場を広げ、業界の活性化を…
大型機組立工場新設の理由 牧野フライス製作所は昨年末、山梨県富士吉田市に大型加工機の組み立て工場を新設すると発表した。12年ぶりの新工場で、総額210億円を投資し、大型加工向けを強化する。2026年初めに本格稼働する予定…


