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黒田精工 黒田浩史社長「電動化の波捉え、 成長」

1958年生まれ、神奈川県出身。81年東京大学教養学部卒業後、新日本製鐵に入社。90年米スタンフォード大学経営修士修了、99年日本GE事業開発部長、2005年黒田精工取締役、07年専務、09年社長、現在に至る。
黒田精工(川崎市幸区、044・555・3800)は今年、創業100周年を迎えた。ゲージ製造から始まり、金型、研削盤、ボールねじへと事業を展開してきた同社。金型は戦後間もない1946年から製造を開始し、今に至る。近年は電動車(EV)のモータコア向け金型の需要が拡大し、この10年で金型システム事業の売上高は約3倍に成長した。2025年3月期で売上全体の4割以上を占めている。ここまで成長できた要因は何か。そして、この先の事業展開をどう描くのか。黒田浩史社長に聞いた。
モータコアは今後も成長分野
金型の製造を開始したきっかけは。
戦後、日本の製造業が壊滅的な被害を受け、それまで手掛けていたゲージの需要がなくなった。そうした中、ゲージ製造で培った精密技術を生かせる分野として目をつけたのが金型だった。当時は自転車やミシンの部品などさまざまな金型を製造していた。その後、モータの需要拡大を見越し、モータコアに特化させて今に至る。
この10年で売上は3倍に。この急速な成長の理由は。
自動車の電動化の波をうまく捉えることができたのが大きい。2005年に初めて量産車の車載用モータに採用され、近年では海外のEVメーカーでも採用が広がっている。この波を捉えることができたのは、電磁鋼鈑を接着剤で固着積層する独自技術「GlueFASTEC(グルーファステック)」があったから。約10年かけて開発したこの技術は従来工法に比べモータ効率が向上するため、一気に需要が拡大した。
その他には。
提携戦略だ。これまでにプレス加工メーカーの伊ユーログループや中国企業などと戦略的に提携を図ってきた。量産はパートナー企業に任せて、技術ライセンスや金型を販売するというビジネスモデルを構築したことが奏功した。国内も同様で、23年に伊藤丸紅鉄鋼と紅忠コイルセンター関東と合弁会社「丸紅ラミネーション(BKL)」を設立し、量産を行っている。
中国開拓、小型分野も注力
足元の課題は。
中国市場だ。世界のEV市場で中国メーカーがシェアを伸ばす中、いかにそのサプライチェーンに入っていくかが成長の鍵となる。そのために必要なのがスピードだ。日系メーカーの新車プロジェクトが約3年に対し、中国メーカーは半年ほど。このスピードに対応しないと検討にすら入れてもらえない。金型製作のリードタイムを短縮し、ようやく昨年頃からプロジェクトに参画できるようになった。今後もスピード感のある対応で中国市場を開拓していきたい。
設備投資は。
ここ数年はモータコアのマザーラインを構築するために、プレス機や、モータコアに磁石を挿入し樹脂により固着する独自技術「MAGPREX(マグプレックス)」の設備に投資してきた。現在は金型の製造設備に投資している。今年度中に金型の生産能力を23年比2・5倍に引き上げる計画だ。
今後の需要をどうみる。
モータコアは今後も成長分野として捉えている。自動車の電動化は変わらず進むだろう。また、それ以外の産業分野でもモータ需要は拡大していく。大型分野だけでなく、ロボットやドローンなどの小型高出力分野にも注力していきたい。そのためにも新しい積層技術の開発や新素材への対応に向けた研究を進めていく。
金型しんぶん2025年8月10日号
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