金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

08

新聞購読のお申込み

寿原テクノス ガス抜きや冷却技術開発【特集:ダイカスト最前線】

ガス抜きや冷却技術開発

エンジンやステアリング部品など鋳造800~1250tクラス(最大2500tまで)を得意とするダイカスト金型メーカーの寿原テクノスはダイカストの課題を解決する新たな金型技術を次々に発表し、ダイカスト製品の高品質化やサイクルタイム改善に貢献。

まずはダイカストの製品内部に発生する「ガス巣(気泡)」の課題に対し、金型内で発生したガスを効率的に抜くために、工具鋼SKD61と熱伝導率の高いベリリウム銅を活用した『ハイブリッドチルベント』を開発した。両者の特性を十分に活かし、溶湯(アルミ)の入り口側にSKD61を用いることで耐久性を確保しつつ、入口側以外のベント部分に熱伝導率の高いベリリウム銅を活用することでコストを抑制し、広い隙間(1・1㎜)で高いガス抜き効果を実現。「熱膨張率の異なる2つの素材を使用するため、トライ&エラーを繰り返し、最適なクリアランスを求めた」と技術開発室の目黒雅裕室長。採用したユーザーでは20万ショットを超える実績や不良率の低減に貢献し、引き合いも好調のようだ。

大型化などダイカストの課題を解決

さらに、ダイカスト金型の冷却を効率化する『吸引冷却金型』を発表。従来、ポンプで冷却水を金型へ圧送する方法から真空冷却装置で金型内を負圧にし、注入した水を出口方向から吸引することで金型全体への冷却効果を可能にした。

負圧の利点は従来の圧送だと金型に接する水管部分で澱みができ、境膜が厚くなると冷却性能が悪化する可能性があるが、負圧では境膜を薄くでき、水量を減らしても冷却性能を高め、品質の高いダイカスト製品が作れる。

冷却を効率化する吸引冷却金型のモデル

これを実現させるために金型内に冷却入子という冷却回路となる構造体を設ける2層構造を考案。両者の隙間に冷却水が通る仕組みで、複雑な冷却回路も単純化でき、より製品部の近くを面で冷却することで製品の高品質化やサイクルタイム短縮を実現できるほか、低圧鋳造や機械のダウンサイズ化にもつながる。目黒室長は「サイクルタイムで30%短縮した事例もあり、スケール清掃などメンテナンスも容易」と技術への自信を見せる。

昨今、ダイカスト市場は自動車の軽量化ニーズでメガ・ギガキャストなど技術開発が進んでいる。伊藤壽社長は「金型の役割は顧客の困り事解決。今後もダイカストの『巣』への対応や要素技術など開発を続け、大型化するダイカストの課題解決を提案したい」と語る。将来的な需要増加も見据え、大型工作機械など設備投資も行う予定だ。

会社概要

  • 住所:愛知県稲沢市陸田町上東之川2425‐18
  • 電話:0587・32・1110
  • 代表者:伊藤 壽社長
  • 設立:1964年
  • 従業員:121人
  • 事業内容:ダイカスト金型製造/セラミック加工

金型しんぶん2025年9月10日号

関連記事

聖徳ゼロテック 本社に金型の新工場

恒温で精密金型を追求 9月にも本格稼働 電子部品などのプレス金型を手掛ける聖徳ゼロテック(佐賀県佐賀市、0952-29-6828)は、本社敷地内に金型工場を新設する。室内を恒温に保ち、EV向け部品などの精密金型製作に適し…

ものレボ TProjectと提携し「TULIP」の販売代理店に

製造現場の業務支援・改善プラットフォーム「TULIP」を販売するT Project(東京都江東区)と中小製造業のデジタル化を推進する工程管理SaaS「ものレボ」を提供するものレボ(京都市中京区)は業務提携し、ものレボが「…

【特集:2023年金型加工技術5大ニュース】5.デジタル技術

シミュレーション、AIで効率化 デジタル変革(DX)の実現は近年の金型製造現場における最大の関心事の一つ。労働人口が減少する中で生産性を向上させるためには、人工知能(AI)やシミュレーションなどのデジタル技術を活用するこ…

【特集】ダイカスト金型<br>アルミ使用量増加 構造部品など採用進む

【特集】ダイカスト金型
アルミ使用量増加 構造部品など採用進む

 北米のアルミニウム協会などの調査によると、自動車の1台当たりのアルミ使用量は軽量化のために増えていくという。プレスや押し出しもあり、アルミ=ダイカストと限らないが、アルミの動向はダイカスト型にとって影響は少なくない。で…

低廉化金型を開発 魚岸成光氏(魚岸精機工業社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…

トピックス

AD

FARO スキャンしたらすぐに結果まで:工数低減を実現

金型のメンテナンス、修復、複製に3次元測定アームを活用 製品を製造するために欠かせない金型ですが、そのメンテナンスには多くの課題が存在します。金型は使用するうちに摩耗し、時... 続きを読む

関連サイト