2021年3月5日(金)

金型テクノラボ
熊本精研工業「金型製作の現場が生んだ、カメラによる機上測定」

 ワークの形状を測定するため加工機から取り外し、再び同じ状態に戻すのは極めて難しい。しかしその課題を解決する技術の一つとして近年、注目されているのが機上測定だ。今回の金型テクノラボは、金型メーカーが測定時間の短縮や加工ミス軽減のために独自開発した、カメラを用いる高精度な機上測定の技術を紹介する。

マシニング加工機で使用しているNK-2000。放電加工機や平面研削加工機でも使用可能

製品開発のきっかけは社内ニーズ

 金型や金型部品・精密加工部品を製作している当社は、加工品を加工機上で計測するカメラシステム「NK-2000」を開発し2016年10月に発売した。発売開始から3年で100台を超える販売実績となり、加工機メーカーのオプション製品としての採用実績も増えている。

 この製品開発のきっかけは、社内の形彫り放電加工機で加工機上での測定機(加工機に加工品をチャッキングした状態で測定するための機器)として使用している単眼鏡(顕微鏡方式)の計測精度が悪く、加工機上でμmオーダーの精度で計測が可能な測定器があれば加工ミスによるロスの軽減や機外での計測の時間が短縮できるという社内ニーズであった。

 そこで、当初は単眼鏡にカメラを取り付け、タブレットパソコンを駆使し1μmの計測ラインを表示するものを製作した。現場での計測結果は単眼鏡をはるかに上回る精度での計測ができた。

専用のレンズを開発

 その社内実績により得られたノウハウを生かし、単眼鏡ではなくカメラに専用のレンズを開発し、商品としての企画開発を行い発売に踏み切った。発売当初から様々な加工機での使用ができるように、加工機への取付の治具の対応(HSK・EROWA・3R・マグネットベース回転治具等)を行った。その結果、NK-2000は様々な加工機(形彫り放電・ワイヤー放電・マシニング・平面研削・旋盤)で使用されるようになった。

登録座標を演算に活用

機上測定機NK-2000の撮像部。自動ワーク心出し・自動加工・自動検査などにも用途が拡大している

 NK-2000のソフト開発においては、簡易に計測箇所の詳細を確認するため、スマートフォンのように撮像画面を指でピンチアウトすることで通常100倍の画像から1600倍にデジタルズームアップし、1μm/画素の画像が容易に確認できるようにした。計測メニューは顕微鏡計測にある計測項目と高さ計測や高さ方向のR計測もできるようにした。

 また、加工測定でよくある加工原点からの多数点のピッチ計測や、加工ワーク外形中心から他の加工部中心のピッチ計測など、相関位置を出すための計測に必要な座標を登録し、その登録座標を演算に活用できるようにした。

 その計測結果はCSVデータでの出力ができ、Excel上で加工時の測定データシートが作成可能である。加工機の機械座標の取り込みができることから、その座標上にCAD図(DXFデータ)を貼り付け、加工面とCAD図との差分が取得できる機能を搭載した。

ワーク心出しの時間を大幅短縮

 昨年、量産で高精度加工を行っているユーザーから加工の完全自動化の要望があり、加工機メーカーとのタイアップによりカメラを加工機内に常設し、加工前のワーク心出しと加工後のワーク計測を自動で行う完全自動の加工機の開発も行い、特にワーク心出しに多大な時間を費やしていたユーザーから加工時間短縮と、加工者のレベルによるばらつきの無い加工精度向上の実績が得られた。

 ある加工機メーカーではNK-2000のCAD差分計測機能を活用し、加工後に加工品のCAD(2次元データ)上をカメラがトレースし加工面との差分を測定し補正加工を行う加工機の開発も行っている。

ワークとツールの位置関係や形状認識できるシステムも

 NK-2000の対応用途は多様化し、加工後の加工ワークを計測対象とするのではなく、加工ツールやバイトの摩耗量の計測に用いるユーザーも現れている。

 この用途をヒントに砥石などの回転ツールの形状の認識とツール先端位置座標の割出しが可能なカメラシステムの構想を行い、加工機内でのワークとツールの位置関係と形状を高精度で認識し、段取りを含めたすべての加工工程において、より正確さと効率が向上する計測システムの開発にも着手する予定である。

詳しくはこちらから

執筆者

株式会社熊本精研工業
企画開発部 部長
越智 英二氏(Ochi  Eiji)
福岡県糸島市東2033‐3
TEL:092-334-7531

記者の目

 金型の品質向上や製作時間短縮において、測定の高精度化や人為的ミスの削減は大きな課題。加工機にセッティングしたまま測る機上測定は、その課題を解決へと導く。カメラによる非接触式やタッチセンサを用いる接触式など様々なものがあり、課題にマッチする技術を活用することがカギとなりそうだ。(中)

金型新聞 2021年1月10日

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