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リーダーの条件Part3
いま活躍するリーダーの心得

 新型コロナで需要が減速し、自動車の電動化で産業構造が変わるかもしれない。先の見通しにくい混沌とする時代に、リーダーはどういったことを心掛け、自らの指針としているのか。時代をリードに考えを聞いた。

伊藤製作所 伊藤 澄夫社長

社員を大事にする 〜気配りの重要性〜

 昨年の年明けから新型コロナ猛威が振るい、いまだ終息の兆しがない。こんな時期こそ全社員が一枚岩になり、会社の存続をかけて努力しなければならない。海外出張ができないなど過去にはない深刻な事態となっている。大半の企業が新型コロナによる悪影響が企業をむしばんでいる。このような状況下幸い当社は大きな影響を受けることなく経営ができていることにすべての関係各位に感謝している。また、フィリピン事業所では昨年4〜5月の業績が半分以下となった。翌月には現地の社長(フィリピン人女性)はじめ、副社長、取締役が自らの給与カットを申し出てくれた。管理職は全員外国人だが、彼らからそのような申し出をする事例を海外で聞いたことがなく嬉しく思ったものだ。その後利益が期待できる状況となり10月に給与を戻すことができた。

 企業や国民にとって大変な事態となったこの時期に、国内外の事業所で、労使関係の良さが浮かび上がったことは当社には大変意義があった。当社の重要経営方針は「社員を大事にする」経営を心掛けてきた。大切な人の優先順位を挙げると、1番は社員、2番は地域の協力会社。この2つに代わりがないからだ。続いて金融機関や工作機械メーカーなど緊密な関係を維持している。このことが結果的に顧客から絶大な信頼がいただけると考えている。

 平成のバブル期で多くの企業が景気に酔いしれ、社長や営業部員は顧客や取引先などと頻繁に高級料理店に顔を出していた。しかし、我々製造業では現場で活躍する者が主役であるべきだ。この考えで月初めの朝礼の日に全社員が寿司を食べることにした。10年ごとに大きな景気の波が押し寄せてくるが、一度も中止すること無く、以来35年余り継続している。社員に対する定期的なプレゼントや、副利施設の建設、5〜6名のチームで毎年海外事業所への見学会、5年ごとに社員の家族へのお年玉、毎日退社時に全社員にパンの支給など盛りだくさんの心配りを継続している。

 このような行いが社員との絆を深め、いざという時の社員の頑張りに繋がっているのではないだろうか。

魚岸精機工業 魚岸 成光社長

挑戦し、驚きと感動を 〜革新マインドを忘れず〜

 経営者になって何がしたいのか。突き詰めると「社員の幸せな顔が見たい」ということに行き着きました。それを実現するには目指すべき方向や活動を明確にしなければいけません。そのために「常に価値あるチャレンジを通じて、社会に驚きと感動を提供し続ける」という中期ミッションを策定しました。

 今進めている事業は全てこのミッションに基づきます。例えば廉価版金型の開発もその一つ。小ロットで量産と同じ金型を低価格で作る挑戦をしていますが、驚きの価格で実現できそうです。

 心がけているのは、廉価版金型がまさにそうですが、「常識にとらわれず、人と違う視点で見ること」です。会長から学んだことの一つですね。当社が5軸機を導入したのは20年前。否定的な声もあったはずですが、「メリットが大きい」と即断したそうです。不透明な時代には、こうした人と異なる視点を持ち、頭を柔軟にしておく必要があると思います。

 そのためには「外部の方との接点を増やすこと」が重要だと思っています。私自身もそうですが、社員にも奨めていて、年に1度は展示会や、セミナーいくことを義務付けています。目で見て、音を聞いて、触って感じなければ分からないことがありますから。

 こうした積極的な活動や意識を持ってもらうように「イノベーションスピリット」というテーマも設定しました。イノベーションが必要なのは、金型業界に対する危機感でもあります。

 冷静に見て、10年後も金型は存在していると思いますが、金型を作って売るだけの今のモデルでは厳しくなる可能性が高い。だから、金型ノウハウを活かして、お客様の設計から量産までをサポートする「魚岸プロダクトデザインオファリング(UPDO)」という事業を5年前に立ち上げ、次の時代に備えています。

 冒頭のミッションは10年を区切りにしています。中期で10年は長いと思われるかもしれません。しかし、会長が30年以上経営したように、私も10年で代わるつもりはありません。だから、私にとって10年は中期なのです。今から次の20年、30年先のミッションを考え続けています。

エムエス製作所 迫田 邦裕社長

経営はサッカーの監督 〜プロが輝ける場を作る〜

 経営はサッカーの監督のようなものだと思うんです。監督は自らプレーできません。チームの方向性を示し、決め事を徹底していくのが仕事です。経営も同じ。私は技術者ではないし、金型も作れません。けれど、当社には金型のプロが多くいます。進むべき道を決め、彼らに最大限の力を発揮してもらう環境を作るのが役目だと思っています。

 私は心臓カテーテルの手術医と金型経営者を兼務していますが、医者と金型職人はよく似ていると感じます。医者も「背中を見て覚えろの世界」。効率的な施術順を考え、新技術を覚える。これは金型づくりとよく似ています。その努力を続けてきた金型技術者は凄い。「これを作りたい」と相談されれば、形にできるのですから。

 しかし、その凄さに気づいていない人が多い。だから、私のミッションは、金型に光を当て、プロであるみんなに輝いてもらう場を作ることです。そして仕事の楽しさを実感してもらう。楽しいと思えないと人も入ってきてくれません。

 そのためにできることは何か。まず、一般の方に「凄いね」と言われるものを作ることでした。削り出しのアイアンや、武豊騎手のあぶみ、パソコンの使用後にラップを張り替えることで院内でのコロナ感染を防ぐ装置などを作りました。

 これらを通じ、みんなが楽しんでくれたことも成果ですが、金型がコア技術だということも再確認できたことも大きかったですね。金型を熟知していれば、自ら作らなくても、パートナーと協業し、世の中に必要な製品
を提供することができる。だからこそ、今後も金型
技術の向上は欠かせません。

 今後は冷静にみて国内の金型需要は小さくなっていくと思います。金型の海外調達も増えていくでしょう。当社は海外の拠点があるので、海外の能力を高めることも私の役目だと思っています。

 社長になってから、心がけていることがあります。それは「任せる」ということ。月火は医者、水木金は経営者としての仕事をしていて、時間に限りがあるからでもあります。けれど、それ以上に経営者に、余裕がなければ仕組みを作ったり、考えたりする監督の仕事ができませんから。

金型新聞 2021年2月10日

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